21話 人間の街
「ねぇ、アレク。燃やしちゃダメかしら?」
「ダメだよアリア」
森の外に着いてく間中、ずっと燃やされそうだった。
もうこのやり取りずっとやってるよ。
アリア怖過ぎんだろ。限り無く欲望に忠実だな。最早俺よりアリア嬢のがモンスターなんじゃないか?子供って怖い。
アレクが居なかったら燃やされてたな。アレク坊ちゃん様様だぜ。
パパンとママンに聞こえないように悪戯の相談とか、可愛い顔をしてるけど悪魔だな。
延々と歩いて行くと、街に着いたようだ。あんなに苦労したのにあっさり着くなんて。
アルネアお嬢様達と一緒にいた街───────便宜上『最初の街』としよう───────とは、違うようだ。
まず、森から歩いた距離が大分違う。
貴族四人と門番達、その他大勢の人間を含め、熱感知に引っかかりすぎて鬱陶しい。街って、人がこんなに密集してたんだな。
俺が街に近付いた途端、門の内側から兵隊さんがぞろぞろと出てきた。そして、貴族達を連れて行ってしまった。
貴族の割に時間が掛かってるな。どうしたんだろう?早く門番の槍から解放して欲しいんだけど。
無い耳を澄ませると、建物中の話し声が聞こえてくる。
「ですから、檻に入れなければ危険です!」
「そうです。テイムされてない以上、街の中へ入れるのは許可出来ません!」
「私が問題ないと言っている!」
「万が一街で暴れだしたら、大変な事になります!」
どうも、話は平行線のようだ。
俺は別に檻の中で一時的に囚われの君をしててもいいんだけどな。
「しかし、スティンガープラントなんて、森の外で初めて見たよ」
「棘に毒が有るから、テイムして連れ歩く奴は居ないからな。人に刺さりでもしたら大事だし」
俺を取り囲んでる人達は呑気に話している。俺が滅茶苦茶大人しく、身動ぎ一つしないからだけど。
「しかし、貴族様も、よくこんな危険植物系モンスター連れてきたよな」
「植物系モンスターって、大雑把な命令しかできないんだろ?」
「魔力で強制的に言うこと聞かせてるだけだからな」
「頭部が無いモンスターでも、使役出来るんだから、魔法ってすげぇよな」
「本当にな。それより、コイツ全く動かないけど、本当に生きてるのか?」
「やめろやめろ。棘に刺されたら大変だぞ」
「槍で小突くぐらいいいだろ」
槍で小突かれたら、流石に反撃してもいいよな?
……ダメだ。反撃なんかしたら、討伐されてしまう。
「ばっかお前、テイムされてない野放しのモンスターだぞ。しかも、そこそこ強い。お前1人がやられる分にはいいけど、巻き添えはごめんだぜ」
「おいおい。薄情だなお前」
「当たり前だろ。無駄死にじゃねぇか。そんな事より、森の浅い所でスティンガープラント出てくるなんて、今までじゃ有り得なかった」
「魔王のせいで滅茶苦茶だぜ。誰か、倒してくれねぇかな」
「そういえば、海の向こうじゃ、勇者を募集してるらしいぜ?」
「はぁ?俺は勇者が産まれたって聞いたけど」
「どっちもガセだろ」
「だな」
アッハッハッハッハッ!って、いや、もっと詳しくその話聴きたいんだけど!
勇者が産まれたって事は、異世界の成人が十五歳だとしても、後十五年は魔王の脅威に晒されっぱなしって事なのか!?
それとも、もう産まれてて、国が探してるだけなのか。
結構重要だろ。
それを自分達がモンスターの棲息地域から遠いからって、呑気なもんだな。
あ、ママン達出て来た。
「家の御用達商人が、貴方を買うと決まったわ」
売り飛ばされるんかい!って、思ったけど、売られた方が都合がいいな。もし、屋敷で飼われるなんて事になったら、アルネアお嬢様を探しに行けない。
あっぶねー。思い付きで行動する癖直さないと、そのうち痛い目みるぞ。
今のところ、ダイスが良い目を出してくれてるからなんとかなってるけど、一歩間違えれば即討伐コースだって事を、肝に銘じておかないとな。
「ふふふ!これで私と一緒ね!」
一体何を言ってるんだアリア嬢は。
「アリアはね。私のお爺様のところで、商売を学ぶのよ」
なんで?貴族のお嬢様なのに?っていうか、ママンは貴族出身じゃ無くて、豪商の出なのな。
海千山千の貴族達を相手にする前に、やり手商人の商売を身近で見せて学ばせよう的な魂胆なのかもな。
「それで、悪いのだけど、檻の中に入ってくれないかしら?」
売れるまで檻生活か。まあ、水と光さえあれば、困らないけどさ。
やっとの事で森を出たと思ったら、今度は檻の中か。俺のモンスター生活波瀾万丈だな。俺が主人公なら、小説になるレベル。
いや、ならないけど。植物系モンスター主人公に据える奇特な奴は居ない。見た目格好良くないしな。
「こっそりね、テイムについて調べたの。誰も見てない時にテイムして、私の下僕にしてあげるわ!」
アリア嬢が、俺の後ろに隠れながら耳打ちしてきた。(耳無いけど)
本当に子供は碌でもない事しか考えないな。テイムって、魔力量で強制的に服従させる感じなんだろうか?適性があれば、魔力量でゴリ押しできる感じなんだろうな。
テイマーの学校まである事を考えると、アレクが言ってたようにアリアは勇者型なんだろう。才能だけで、全ての壁を取り払うタイプ。
都合が良い。アリアにテイムされたフリをして、強くなろう。ずっと檻の中じゃ、レベル上がらないしな。
しかし、嘘でも勝手に商品をテイムしたなんて事になったら、大目玉だろ。おじいちゃんが、孫にダダ甘な事を祈ろう。
アリアを見てて思い出したんだが、熱感知以外に、視界がチラついてるのはなんだろうか?
アリア達と戦った後から、熱感知じゃない何かが働いてる気がする。
念の為に、ステータス確認しておくか。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:スティンガープラント(ヴドァ)
Lv1/30
HP82/82
MP53/53
状態:普通
常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.2》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.2》《魔力感知Lv.1》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.1》《植物成長速度Lv.1》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《血液吸収》《毒Lv.3》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.4》《斬撃耐性Lv.3》《打撃耐性Lv.2》《刺突耐性Lv.2》《火耐性Lv.1》《風耐性Lv.1》
魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘
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このチラついてるのは魔力感知か!
魔力を感じるには、魔法を何発か受けなきゃいけなかったのか。なるほどなぁ……。
良く考えたら、物理系としか戦って無いもんな。
しかし《魔導の心得Lv.0》って、ゼロかよ。多分これのレベルが上がると、念願の土魔法が使えるようになる。
アルネアお嬢様に会う前に、最強の魔法使いになってやる!いや、魔法植物か。
今更だけど、植物系モンスターって、耐性生えやすいんだな。森王の時も思ったけど、耐性獲得しやすいのが、植物系モンスターの特性なんだろうな。
憶測だが、獣人とかだと、筋力や肉体能力上昇系が上がりやすそうだ。
受けるのは、触手部分でも大丈夫みたいだから、敵の攻撃は積極的に受けにいこう。別にマゾじゃないよ。
後は、如何にアリア嬢を騙すかだけど、テイムって叫んだ後言う事全部聞いてれば、勝手にテイムしたと思い込むだろう。
アリア嬢は、覚えたてのテイム知識をお披露目したくて仕方無いはずだし、初テイムは俺にする気満々みたいだから、簡単に騙せそうだ。
幼い子供を騙す悪徳植物にジョブチェンジ!
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名前:モノリ 性別:不明
種族:スティンガープラント(ヴドァ)
Lv1/30
HP82/82
MP53/53
状態:普通
常時発動:《共通言語理解》《擬態Lv.2》《触手Lv.10》《触手棘》《熱感知Lv.2》《魔力感知Lv.1》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.1》《植物成長速度Lv.1》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《血液吸収》《毒Lv.3》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.4》《斬撃耐性Lv.3》《打撃耐性Lv.2》《刺突耐性Lv.2》《火耐性Lv.1》《風耐性Lv.1》
魔法:《土魔法Lv.0》《魔導の心得Lv.0》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘
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