147話 小国宣戦布告ー緊急招集ー
俺は不眠不休で全力で王都に向かっていた。
この世界に来てから寝た事とか無いけどな!!!
誰に向けるともないドヤ顔を天に向けて存分に発揮する。表情とか無いけど。植物だしなぁ……うん。
や、ほら走ってる間中暇じゃん?
特に俺はアルテミスの魔法が無いと話せないから、いつもはアルテミスが寝てる間は暇でモンスターが弱い地域とか警戒しやすいところでは魔法の温存が必要無いから、たまにアルテミスが話しかけてくれるんだけど、今はとにかく暇。
変顔(?)とかして遊んだり、荷物とアルネアお嬢様達に割いてない触手であやとりしたりして、遊んでるんだけど、誰も気付かないじゃん?
小国からの宣戦布告とはいえ一大事だし、皆それぞれ自分の領地や戦争の備え、敵対国家の戦闘力の話し合いなんかを終始繰り返してるせいで、いつもより俺の変な行動に気付かない訳よ。
ただでさえ暇なのに、この世界暇潰しアイテムとか一切無いから、いや一切無いは嘘だな。モンスターが暇を潰せるアイテムがマジでない。そりゃ当然なんだけど、モンスターの娯楽品作ってる奴居たら気狂ってるもんな。
モンスターっつったら現代で言えば害獣や害虫だろ?蚊の玩具開発する奴おる?おらんな。
という訳でもうね、この通り独り言が延々と永遠に出てくる。
ひまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
……馬鹿かな俺。
アレクの意識が戻ってからは、とにかく忙しかった。
アレクの意識ははっきりしているのに、体の調子がおかしかったからだ。
アレクは勇者になってからずっと鍛えてるとはいえ、筋肉量はそこそこで、今まで使っていた魔法の方が得意だし、年相応の力の域を出ないぐらいの腕力しかなかった。
そのアレクが力加減を間違え、扉を吹き飛ばしたのである。
応接間で待ってる俺らに元気な姿を見せたかったのだろう。それと今の様子を見る限り、起き抜けのアレクをアリアがあんまりしつこく心配するもんだから、ちょっと元気な様子を見せたかったのかもしれない。
応接間の扉を本人的にはちょっと元気に見えるぐらいの勢いで開けただけらしい。
あの時のアレクの顔は二度と見る機会は無いと思う。なんというか親に置いていかれた思ってる、迷子の小さな子どもみたいな顔だ。
まあ、年齢的にはあの顔が普通というか素顔なんだろう。いきなり国家レベルの大役を押し付けられた少年は、いつも気を張ってたんだなと思わせる表情だった。
アリアの時もそうだったが、どうにも俺は子どもの心の機微に疎いらしい。まあ、前世でも自分に子どもは居なかったしなぁ……多分。
思い出せないから居ないだろうという安直な結論だけど。そもそも子どもが居るような年齢だったんかなぁ?最近は特に、前世の事を思い出す機会が殆ど無いし、植物系モンスターのこの体も(体は大分前からだけど)すっかり馴染んでしまって、違和感を感じないくなってきている。
いや、そんな事はどうでも良くて、とにかくもっと子ども達に気を配ろうという話。特に真面目な貴族の子どもなんてのは、俺には想像もできないようなストレスが多そうだもんな。
今まではアルネアお嬢様だけを気にかけて来たけど、Aランクモンスターに進化してからは、心の余裕?強者の余裕みたいなのが出てきたと思う。
もしくは、単純に俺が強くなり過ぎて最早従魔契約が切れかかってるのか、その両方かは分からないけど、アルネアお嬢様以外を真剣に気にかけても良いと思うようになってきた。
これぐらいの時代の貴族の子どもと、俺が知ってる現代の子どもを比較して意味が有るとは思えないけど、ちょっと環境が変わるだけで子どもは大人よりストレスを感じるだろうし、ケアは大事。
アリアがアレクの元に帰る直前で寄り道させる程追い詰められていたことに全く気付かなかったもんな。アレは一人の大人として割と凄い反省してる。
それはそれとして、なんて言うかあの威力は明らかに人間の膂力から繰り出されたもんじゃ無いわな。
アレクを俺の感知でよく見ると、かなり薄い、本当に《上位感知Lv.8》でも、かなりじっくり見ないと気付けないぐらい薄い膜がアレクの体を覆っていた。
そしてそれに気付いた直後に掛けた《全情報強制開示》は当然の如く弾かれた。
みなまで言うな。アレクの前後の状況から考えても、これは覚醒かなんかだろう。覚醒勇者の力が馴染み切っていないが恐らく正解。
つまり、アレクがずっと目を覚まさなかったのは、強過ぎる龍の力をなるべく安全に体に馴染ませる為の地龍側からの処置だと思われる。
アレクは一般的に見ればただの小さな子どもだからな。世界を揺るがす魔王を打ち倒す力を一度に注ぐには負担が大き過ぎたんだろう。
これなら辻褄が合うというか、自然だと思う。地龍がアレクの意識を持ってった理由がよく分からんかったが、安全性の確保の為で有ればしっくりくる。
世界を創り出すようなバケモンの事だから、この予測とは全く関係無い可能性も幾らでも有るが、流石にそこまでは分からん。何か隠された真実があるかも知れないし、何となくかもしれない。それこそ化物の考える事など分かるはずがない。
それからは、宣戦布告のせいでアレクの快気祝いが潰れ、一刻も早くアレクのリハビリ(強過ぎる力を調整するのもリハビリって言うんか?)をせざるを得なくなった。
全力を出した、龍の力を纏うアレクがあれ程強いとは、夢にも思わなかった。スー〇サイヤ人かよ……もしくはダ〇の大冒険ドラゴニックオーラ。
今までは当然俺にはアレクの物理攻撃は一切通らなかった。というか、Aランクモンスターの触手は例え一本でも相当実力の大人のヴァンガードが数人がかりで、ようやく切れるようなもんだ。当然アレクに傷つけられるはずもない。
そのはずが剣の一振と共に、剣と触手と修練場の地面が吹き飛んだ。
うん。命の危機を感じたね。
マジで。パないっすわ。アレクパイセン流石っすわ。いや、俺マジ感動したんで舎弟にしてください。って感じだったわ。
その後は、アリアと魔力量を比べたんだが、量も魔法の威力も段違いだった。言う必要があるとは思えないけど、もう一度修練場の地面が吹っ飛んだ。
良かったよ俺安易に受けて見ようか?とか、安請け合いしないで。消し炭にされるところだったもん。アレクさんマジ半端ない。
その直後当然というか、必然というか、馴染み切ってない龍の力を人間の体で無尽蔵に使える訳もなく、剣の一振と魔法一発でアレクは気絶したけどな。
連発はできないらしい。されても困るが。焦土作戦かよ。
この時は直ぐに目を覚ましてほんとに良かった。ほんの十秒ぐらいだが、今度はマジで目を覚まさないんじゃないかと、皆パニックになってたからな。
あの時の修練場の十秒は空気重過ぎて、五百時間ぐらい経ったかと思ったからな。流石に五百時間は盛ったけど、あの空気俺が人間なら吐いてたね。
国家緊急招集が発令され、直ぐにでも出なければならなかったが、俺達はアレクが完全に体の感覚を取り戻すまでゆっくりしていたので、今は尋常じゃなく急いでいる。
どれぐらい急いでいるかというと、独り言でうおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!とか言っちゃうぐらいには急いでる。
漫画なら足がクルクルしてるやつ。
もしかして、ジェネレーションギャップで伝わらなくて死ぬタイプのやつか?おじさん抹殺事件か?
……考えるのはよそう。心が死ぬ。
「ヴァイス!もっと急ぐのよ!」
いや、これ以上は無理。つーか待て。アルネアお嬢様?俺馬車乗り継ぐ何十倍も速いよ?そんなに急がんくて良くない?
ダメ?あーダメ。そっすか。急ぎまーす。
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名前:ヴァイス 性別:不明
種族:デンスフォッグ(不明)
Lv1/10
HP1021/1021
MP1001/1001
状態:通常
常時発動:《共通言語理解》《影無し》《音無し》《隠匿》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.8》《魔王の導き》
任意発動:《薬草生成Lv.10》《植物成長速度Lv.10》《水汲みLv.10》《吸血・吸精》《猛毒Lv.8》《噴霧Lv.10》《全情報強制開示》《感知乱反射LV.3》《濃霧拡大Lv.4》《痺れの香Lv.2》《眠りの香Lv.2》《毒霧Lv.2》
獲得耐性:《上位斬・打・刺突耐性Lv.1》《上位魔法耐性Lv.2》《邪法耐性Lv.10》《心耐性Lv.1》《ソフィアの加護》
魔法:《土魔法Lv.10》《水魔法Lv.10》《氷魔法Lv.8》《魔導Lv.1》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 読書家 急成長 奪われしもの 魔王の誓約 エルフの盟友 斧の精霊(?) 罠師 魔導師 鑑定師 魔性植物 光を集めしもの 最上位モンスター 最上位精霊(氷)の付与
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