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139話 退屈を極めし者

「……さ、寒い」


 誰が言ったか分からないが、その言葉はヴァントス山脈を登り始めた我々の全てを、一言で表現している完璧な台詞だと言える。


 人の侵入を拒む雪深き連峰は、当然雪が踏み固められてるでもなく歩きづらい。


 いつもなら俺が皆を持ち上げて運ぶ訳だが、山に入ってから「アイスウィスプ」に遭遇する為、自力で歩いてもらっている。


 アイスウィスプに遭遇しては退治しているのだが、減る気配はなく、そこらじゅうから無限に出てくる。


 最下級精霊であるアイスウィスプは、自我も無く存在自体があやふやな為、俺の感知レベルでも見つけづらく、皆に目視で見つけてもらっている状態だ。


 熱感知で見えなくも無いが、全てが真っ青な中に微妙に透明っぽいような揺らぎの空間のようなものが存在しており、そこを攻撃するとおそらくアイスウィスプに当たる。とか、そんなレベルの為殆ど使えない。


 しかも俺の物理攻撃が効いてるのか、サッパリ分からない。

 攻撃すると揺らぎっぽいのが掻き消えるので、効いてるような気がする……というような状況で、打開策が無い。俺には火の系統の魔法も無いしお手上げ状態だ。


 特に攻撃もしてこない無害なクラゲみたいな存在を、何故近付く度に倒しているかと言うと、最下級でも氷の精霊だけあって、近付かれると寒いのだ。


 タダでさえ寒いのに、更に体感温度が下がるとか死活問題だ。攻撃してこないが、近付くだけで攻撃されてるのと変わらないので、倒すしか無い。一番迷惑なタイプのそれ。


 火の系統の魔法は、うちではアレクとアリアしか使えない。そしてアレクが現状居ないので、アリア一人に攻撃を任せてる状態だ。


 目視は目の良いエルフのアルテミスと、人間より感覚の鋭い獣人であるルンフォードがやってくれている。


 ……俺とアルネアお嬢様はする事が無い。正しく言えば出来ることがない。


 いや、厳密に言うとアルネアお嬢様は従魔術師なのだから、お嬢様に使役されてる俺が働いてる時点で役目を果たしている。

 俺が転生というか、強烈な自我を持つ植物系モンスターである事がややこしくしている気がするが、俺の仕事量とアルネアお嬢様の活躍はイコールだ。


 これで回復魔法も使えるってんだから、アルネアお嬢様は世界的に見てもかなり強い従魔術師だと言える。従魔術師の強さは従魔の強さとイコールだからAランクモンスターである俺を使役している時点で、従魔術師の中では世界最強かもしれん。


 まあ、俺がアルネアお嬢様はすごいんだぞ!後ついでに俺も!と、現在主張したところで、俺の言葉を唯一理解出来るアルテミスが索敵で忙しいので、な〜んの意味も無いのだが……。


 何もすることが無い以上、自画自賛は欠かせない。自我を保つのに大事である。一面白と揺らぎの世界では他のことを考えてないと気が狂いそうだ。


 荷物運びとして超絶ウルトラ優秀である。最早荷物運びの神、馬車馬の権化と言っても過言では無い(過言)。


 ただひたすらアルネアお嬢様が寒さで倒れないかを心配しつつ歩いていると、山の中腹に差し掛かった辺りだろうか?


 声が聞こえてくるようになった。


「ふふふっ!ダレ、だ、レ。ヒト。ヒトだわ!」

「ヒトヒ、ト!」


 う〜んこれはアレですねぇ。

 妖精が悪戯好きなのは異世界でも変わらないらしい……元の世界に妖精は居ねぇや。


 どうやら元の世界における妖精は悪戯好きという説はあっているようだ。そしてこの寒さの原因が精霊である可能性が高くなった。


「生まれたばかりの氷精ね。姿は見えないけど耳元かしら?」

「うっ、耳元はやめて欲しいですね」


 エルフは耳弱そうだもんな〜。


「しかしおかしいですね、生まれたばかりの精霊は警戒心が強く話しかけてきたりしないのですが……」

「精霊が興奮してるってこと?」

「そうですね」


 皆が精霊の状況を分析していると、さっきまで姿を見せずにうろついてた氷精霊が、突然攻撃してきた。


「クエ!クラえ!」


 咄嗟に全員を触手で庇う。


 無限にも思える触手は、瞬く間に皆を守るシェルターになる。


 低レベルの魔法だったので、触手にも殆どダメージは無かったが、殆どであってゼロでは無い。それが一番の問題だ。


 上位の魔法耐性を持つ俺には、最下級に近い氷魔法など効かない。


 人が分厚い数センチの鉄板を殴ったところで、鉄板に変化は無いだろう。


 上位のモンスターにダメージを与えたいのなら、それにも資格が居るのだ。


 それが覆された。寒さというか環境によって強化されてるのかもな。


「あっぶないわねぇ!何すんのよ!」

「キャキャキャは!」

「ハキキ!ヒキキ!」

「怒っても意味ないですよ」

「はぁ、そうよね。生まれたばかりの低位精霊だもの」

「精霊がひとつの場所に大量に居るとは……絶対に上位の管理者がいるはずです」


 問答無用で攻撃(悪戯)してくる妖精共を回避しながら、そいつを探さなきゃならないって事か?


 アイスウィスプみたいに倒してった方がって思ったが、コイツら隠れてやがるから見つけ出すのは面倒だ。


 アイスウィスプよりはハッキリと存在しているので分かりやすいが、それは相手が姿を見せる気でいたり、話しかけてくる場合のみ。


 相手が隠れる気でいる場合は、周りの気温も相まって何処にいるんだか分かりづらい。不意打ちを避けるのは困難かも……。


 何処から攻撃が来るか分からない状況で歩き回るのは危険だな。


 解決策を考えていると、アルテミスから精霊について説明された。


 アリアが倒そうとした為だ。


「なんで攻撃しちゃダメなのよ?」

「精霊は勝手ですから、向こうから攻撃してきて撃退したとして、自分の仲間を攻撃した人間とは話し合おうと思わないはずです!攻撃してはいけません!」

「自衛でも反撃できないの!?」

「精霊は人間じゃありません。人間の理は通じません」


 精霊厄介だな。向こうが攻撃してきたから反撃しました!ってのが通じないのか。


「それだけでなく、何かひとつ気に入らなければ、さっさと姿を消してしまいます」


 そういえば、水の精霊は好き嫌いが激しいって聞いたな。一番最初に。


 氷の精霊は水の精霊の上位種?だろうから、もっと面倒な性格をしてるに違いない。


 め、面倒だ。

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 名前:ヴァイス 性別:不明


 種族:デンスフォッグ(不明)


 Lv1/10


 HP1021/1021

 MP1001/1001


 状態:通常


 常時発動:《共通言語理解》《影無し》《音無し》《隠匿》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.8》《魔王の導き》


 任意発動:《薬草生成Lv.10》《植物成長速度Lv.10》《水汲みLv.10》《吸血・吸精》《猛毒Lv.8》《噴霧Lv.10》《全情報強制開示》《感知乱反射LV.3》《濃霧拡大Lv.4》《痺れの香Lv.2》《眠りの香Lv.2》《毒霧Lv.2》


 獲得耐性:《上位斬・打・刺突耐性Lv.1》《上位魔法耐性Lv.1》《邪法耐性Lv.10》《心耐性Lv.1》《ソフィアの加護》


 魔法:《土魔法Lv.10》《水魔法Lv.10》《氷魔法Lv.8》《魔導Lv.1》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 読書家 急成長 奪われしもの 魔王の誓約 エルフの盟友 斧の精霊(?) 罠師 魔導師 鑑定師 魔性植物 光を集めしもの 最上位モンスター

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