14話 森の便利屋さん
「クロイセン様、ファラデア様スローロル様は、何故この様な森に?」
「我々は、森の調査に来ていたんだ。あの空をお覚えておいでか」
「はい。あれより、ずっと逃げております」
「我々もそうなのだ。街への道に、モンスターが数多くいた為、帰還を断念して今日に至る」
「正解だと思うっすよ。あのまま帰ってたら、俺ら死んでましたもん」
「俺もそう思うな。クロイセン様の判断のお陰で、死なずに済んだ」
「ガルア。様は止せと言っているだろ。テネセのようで良いと」
「いえ、しかし、侯爵家の方にそのような……」
「私は家の格で騎士になった、軟弱共とは違う」
「……分かりました」
う〜ん。貴族も大変なんだな〜。本当に転生したのがモンスターで良かったよ。
高貴な生まれ的に、仕方ないんだろうけど、クロイセン様、ナチュラルに上から「止せ」って命令してるし。
「まあ、立派な方ですのね!」
「い、いえ。そのような……」
「いいえ、素敵ですわ!」
お嬢様達、男への追撃が上手だな。クロイセン様「止して欲しいな」みたいな感じだけど、顔赤いじゃん。クロイセン様厳格そうな人だから、異性に褒められ慣れてなさそうなところもいいな。
チャラいテネセ様なんかは、女性に褒められ慣れてるだろうから、効果は薄いだろうし、ガルア様は表情が分かりづらい。その点、この場で地位も高く、感情が分かりやすいクロイセン様は、標的として完璧だな。
後、前世の俺は警戒心が強い奴だったんだな、という事に気付いたのが、今の遣り取りでの収穫。
それと、植物になったせいで、現在一人称は「俺」だけど、男だったのか確信が持てなくなってきた。母数的に、男の方が一人称「俺」が多いから、多分男だと思う。
もう、生まれ変わってるんだし、元が何でもいいか。思い出しちゃって、滅茶苦茶悲惨な死に方とかしてても、嫌だしな。
「では、よろしくお願いしますわ」
あー……やっちゃった。思考に沈んでる間に、話進んでるよ。
どうも、騎士ボーイズ様達は、俺らと一緒に行動するらしい。人間の数からして、一緒に行動させてもらうのは俺らの方か?
オラ、騎士見習い共喜べよ。美少女二人と行動出来るんだぜ。良かったな!今なら、カッコイイ兄貴と、不気味な目玉モンスターも着いてくる!お得!ってバカ。
めっちゃ喋りたい。独り言(無言)ばっかで馬鹿みたい。次、進化するなら、願わくば口を付けて欲しい。
「バンネス嬢とアーベンス嬢は、大分お疲れのご様子。このまま川で休みませんか」
「そうだな。無理な強行軍程碌なことは無いし、護るべき女性に無理をさせては、騎士の名折れだ」
クロイセン様かっくいいー!テュペルの兄貴には、及ばないけどな!
「では、私は水を運んで来ます」
「騎士様に、そのような事させられませんわ」
まあ、ここで一番身分の低いアルネアお嬢様は、行かせて良いものか、悩みどころだよな。
「いえ、騎士見習いは、意外と雑用が多いのですよ」
「まあ、そうですの?知りませんでしたわ」
うふふ。あはは。って、お見合いか!
お嬢様を虐めてた、バカ子爵でも無い限り、ここで一番ちっこくて細いお嬢様に、水を汲んで来いとは言わないか。言ったら張り倒すけど。だって、俺モンスターだし?人間のルールとか知らんざき。
「ですが、モノリは水を汲んで来られますので、モノリにさせますわ」
「ほう。珍しい植物系モンスターも、居たものだな」
「ええ、とっても賢いんですのよ」
いいよ!もっと、もっと褒めて!褒められて触手伸びるタイプの生物だから!そんな気色悪い生物、確実に、世界中探しても、俺だけだと思うけどね。
最終的に、食べ物から水まで、全部やらされた。やだ、植物遣い荒すぎ!これで、報酬は水と日光だけで良いんだから、俺ってば理想の社畜。しかも、水自分で地面から吸い上げるし。実質無料。
「このモノリーフが沢山いれば、植物系モンスターで、補給部隊を編成してもいいかもな」
「無理っすよ」
なんだと、このチャラいテネセ。略してチャラセめ。植物系モンスター舐めんなよ。
「やはりそうか」
えっ、納得しちゃうのガルア様!信じてたのに!
「幾ら賢くても、モノリーフじゃ、他のモンスターに襲われたら、一溜りもなっすよ」
正論!やっぱ、死にたくないから、チャラセ改めテネセ様を支持するぞ。全くなんて事考えるんだ、この無表情ガルアめ。
……俺凄いクズじゃね?手の平クルックルよ。
そんな事ないよ!
お、お前は触手くん!
だって、触手には手の平ないもん!
そっちだったかー。知ってた。だって、触手くん俺だもん。
そうだ。触手くん(俺)はおいといて、ステータスでも確認しとくか。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:モノリーフ(リーフィリア)
Lv.7/10
HP12/61
MP27/27
状態:普通
能力:《共通言語理解》《調べる》《触手Lv.9》《薬草生成Lv.1》《植物成長速度Lv.1》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《擬態Lv.1》《恐怖耐性Lv.2》
魔法:《土魔法Lv.0》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係
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かなり上がってるな。グリンボア強敵だったからね。でも、トドメさしたのは、兄貴だよな?討伐補助でも、経験値入るのか。
それもそうか。魔法使いが、トドメをさしたからって、壁役が仕事してない訳じゃないもんな。
《触手Lv.9》か。触手も進化したりするんだろうか?《凄い触手Lv.1》みたいな?どうでもいいけど、ネーミングセンス皆無だな。
問題は称号。いや、気にしてないよ?別に良いんだけどさ、称号さん少し黙ってて。
雑用係って、まんまか!やめろ!真実が一番人を傷付けるんだよ。泣くぞ。
俺が一人で、ステータスを見ながら一喜一憂していると、お嬢様がこっちに来た。
何事?
「ねぇ、モノリ。あの騎士様達の分まで、木に吊るしたヤツ作れる?」
あの簡易ハンモック?数は作れると思うけど、鎧三人分も支える強度は無いと思うよ。レベルが九まで上昇した触手で、グリンボア一体、持ち上がらなかったんだし。
できないよって、手の平を叩いて返しとく。
「そう。できるみたいよ!」
えんあ?なんぞ?……考え事しながらだったから、左右逆だった。叩く方間違えた。
ヤケクソだ!やるか。落ちたら死ぬけど、俺のせいじゃ無いよね?
駄目だ。そんな事したら、アルネアお嬢様に怒られてしまう。流石にそれは本意じゃないので、取り敢えず一つだけ作って、触手で乗ってみて〜と、やる。
「一つだけ?」
「グリンボアを持ち上げられなかったから、不安なんじゃないの?」
流石フェネ姐さん!俺の主より分かってるぅ!やっぱり、兄貴の主なだけはあるわ。
「そうね。クロイセン様達は金属鎧ですし、モノリの触手が、耐えられないかも知れないわね」
そうそう。そういう事。
「えっと、モノリが本当に持ち上げられるか分からないので、ガルア様鎧姿のまま、乗ってみてただけますか?」
「分かりました」
これぐらいの本数で、強度足りるかな。ガルア様一番図体がデッカイから、ガルア様がこの本数で乗れれば、全員いけるな。触手も多分足りる。
「少し怖いな」
「ガルア。軟弱な事を言うな」
「……はい」
はぁぁぁぁ!よいしょー!
おっ、いける。もう少し上までやって、大丈夫なら、触手ハンモックで、全員寝れるぞ。
そう思った矢先、触手が大きく軋んだかと思うと、大きな千切れる音と共に、ガルア様が空に放り出される。
ほぉあぁぁ!?!?
残った使える触手を総動員し、何とか空中でキャッチできた。
あ、危ねぇ……。打首になるところだった。首無いけど。
「ふむ。やはり、鎧は重いか」
重いよ馬鹿野郎!
「アーベンス嬢。これって、千切れても大丈夫なんすか?」
「大丈夫なのモノリ?」
大丈夫よ。この触手自在に操れる割に、痛覚無いから。すぐ生えてくるみたいだし。
「大丈夫のようです」
「それは良かった」
俺と、落ちたかけたガルア様は、全然良くないけどな!
「……そうですわ。クロイセン様達は、調査に来られたのですよね?なら、探しに来るのではないかしら?」
「期待を折るようで申し訳ないが、正規の騎士は、街のモンスター達で手一杯だろう」
「クロイセンさん。それこそ、期待を持たせるような言い方は、やめましょうよ。あの数じゃ、街も騎士も、残ってなんかないっすよ」
「テネセ!」
「残っていても、住民を逃す為に、別の街まで後退しながら軍が動いてるはずですから、無理でしょうな。我々を探しに来るには、街を破壊したモンスターの中を、突っ切って来なければならない」
「ガルア!」
「軍で対処できるなら、街は破壊されてないっすから、助けを待つのは、最も現実的では無いと思うっす」
「ぐっ……!」
お嬢様を虐めてた、駄目子爵とは違って、教育が行き届いてやがる。次期領主達だもんな。当然といえば当然か。自分の代で、お取り潰しなんて事になったら、子々孫々、末代まで恥だもんな。
クロイセン様は、正騎士に、強い憧れがある様だ。
ん?フェネ姐さんも、苦虫を噛み潰したような顔してるな。まさかな。
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名前:モノリ 性別:不明
種族:モノリーフ(リーフィリア)
Lv.7/10
HP12/61
MP27/27
状態:普通
能力:《共通言語理解》《調べる》《触手Lv.9》《薬草生成Lv.1》《植物成長速度Lv.1》《植物鑑定》《水汲みLv.3》《擬態Lv.1》《恐怖耐性Lv.2》
魔法:《土魔法Lv.0》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係
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