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134話 ヴァントス山脈前方の砂漠にて

 アリア達の爺さんの屋敷から、かなりの距離を移動した。


 そしてアレクの為に霊薬を採りに来た俺達を待ち受けていたのは……。


 広大な砂漠だった。


 まさか目の前に砂漠が広がってるとは夢にも思わなかった。


 砂漠の向こう側に雪かかる連峰が伺えるとは……。


 そういえば、積雪のある山からカナートという井戸が云々みたいな話を、旅行好きのやつに聞いた事があったな。


 感知の範囲を全方向ではなく、砂漠の方に向けると雪山が少し見える。感知の使い方も随分と慣れてきたもんだ。これで更に索敵範囲も広がったな。


 もっと色々試していけば《上位感知Lv.8》のレベルもそのうち上がるだろう。中々上がらずに頭打ち感があったから、上がるといいな。


 砂漠の向こう側の山々は、元の世界のヒマラヤ山脈を連想させる。

 世界最高峰のエベレストと同等か、それ以上の七、八千メートル級の山々が連なっている様は壮観の一言。


 ヴァントス山脈の頂きや尾根は地上からは見え無い程に高い。


 頂きは雲の上にある。


「まさか雪山の装備を持って、砂漠を歩くとは思わなかったわ」

「私も……です」

「そう、です……わ、ね」


 歩いてるのは俺だけどな〜とかいう野暮なツッコミはいいとして、砂漠の気温て暑い時昼は60度ぐらいまで上がるんだっけか?


 その暑さを証明するように、深森という直射日光を浴びる機会の少ないエルフのアルテミスと、全身が毛に覆われている獣人のルンフォードは、砂漠に入る前から暑さにやられていた。


「二人ともさっきから、水袋傾けてばかりだけど本当に大丈夫なの?」

「そうね。無理しない方がいいんじゃないかしら?」


 深い木々を通してしか日光を浴びない、肌の青白いアルテミスには、遮蔽物の無い砂漠地帯の日光は殺人級だと思う。マジで。


 ルンフォードに至っては、あんなに大好きな斧を握る元気も無いらしい。ダランと座って、犬が体温調節するように舌を出している。ぐでーっとしてるルンフォードはレアだ。だらしないルンフォードは元の世界で需要高そう。


 火山ではどうしてたっけ?耐火装備と魔法の腕輪があったから、平気だったのだろうか?


 見た目が人間に近いだけに、体温調節をしてるというよりも、熱中症に見える。


 二人のために多くの触手を編んで日よけを作ってはいるのだが……まさに焼け石に水と言った感じだ。


 俺自身も植物系モンスターになって、初めてサボテンの針が葉だという理由を身体で理解している。体内の水分が持ってかれてるのが体感で分かる。


 Aランクモンスターのフィジカルが無ければ、とっくに枯れてたと思う。マジすごいAランクモンスター。本当の事を言うと、耐性スキルの《ソフィアの加護》が、仕事してると思われる。


 異世界ではどんな風に表現するんだろう?まあ、殆ど翻訳されて、元の世界と同じになる気しかしないけど。


 アルテミスの気を紛らわせる為にも、ちょいと小粋な雑談でもしますかね。


『なぁ、エルフでは徒労とか無意味な事をいう、ことわざみたいなのってあるのか?』

『……なんですか急に。暑いのであまり無駄な力を使わせないでいただけると助かるのですが』

『スマン』


 怒られてしまった。


『そうですね』


 私は使いませんが……という前置きの後に教えてくれた。


『暇してる相手によく使われてるのが「やあ、今日も神王樹の葉虫狩りかい?」っていうのですね。ことわざと言うよりは、単なる嫌味ですが。神聖なものですから、そう悪い虫が着いたりしないので、余計に暇でいいよな!ってのが伝わってきますよね。正直使う人はあまり好きになれません』

『はえ〜』

『暑いのでもう切りますね』


 一方的に切られてしまった。


 あ、そうか。噴霧が有るんだから、軽く霧をかけてやればいいかもしれん。


 軽く霧を吹くと一瞬で蒸発し、身体の熱を持って行ってくれたようだった。

 上位感知を持つ俺には、体温が下がったのは一目瞭然。心做しか、ルンフォードもアルテミスも表情が穏やかになった。


 しかし、トラブルというのは常に後追いで、喋る元気も無い二人とは別に、喋る元気のある二人からクレームが入る。


「そんなのが有るならもっと早くやりなさいよ!」

「そうよ!ずっと暑かったんだから」


 はいはい。


 サーセンした。


 どんなにクレームが重なっても、体内の水分は限られてるので、あまり頻繁には使えないけどな。


「ねぇ、アリア?この砂漠に休憩地点とかないのかしら」

「人間はどこにでも居るものだけど……どうかしら?水があれば人が居るとは思うけれど」


 居るとは思うし、水もあるはずだ。元の世界でもそうだったしな。


 砂の下にチラホラ生き物が見えるから、少なくとも水はあるだろう。生き物が棲息している以上水が無い事は無いはずだ。恐らくな。


「異世界の砂漠のモンスターは生きるのに水も酸素も必要ありません!」「空気中の魔力を、体内で水と酸素に変換するように進化したんです!」と言われてしまえば、俺には反論のしようも無いが。


 ……そうだ、思い出した!


 カナートとかいうのは地下水路と井戸の事だ!あの時もうちょっとちゃんと話を聞いときゃ良かった。なんで砂漠にオアシスが有るんだろうな?みたいな話をしてた記憶がある。


 砂漠でも山の上には雪降るんだ〜みたいな会話してたわ!懐かしっ!


 そうだ、そうだ。


 って事は、かなり遠くにヴァントス山脈が見えるから街や休めるような場所なんかは、麓の方まで行かないと無いと思う。


 地下に水が有るって事は、このアホ程長い触手なら地下水脈まで届くと思うから、こまめに吸っていけば死ぬ事は無さそうだ。良かった。


 砂漠では四人中二人が全く使い物にならないので、戦闘経験は積めないだろうから、モンスターは極力回避していこうか。


 そう思った矢先に、地下から急に熱反応が湧く。


 だ〜か〜ら〜!

 俺は元人間なの!地上を警戒してる時に、地下にまで意識は割けないの!奇襲やめろ!


 何だこの反応のデカさ!


 異世界だからって法則とか物理とか無視し過ぎなんじゃないの?普通の森でもその巨体はおかしいのに、なんてデカさだよ。


 俺らデカいモンスターに縁でもあるの?


 砂漠とか水も食べるものも少ない地域でどうやってその巨体維持してんだよ!説得力がねーんだよ!

 ゲームか!出直して来やがれ!人が真面目に砂漠について考えてりゃぁよぉ!


 空気読めモンスター!


「サンドワームね」


 アリアがモンスターの名前を気だるそうに言う。


 ゲームか!いい加減いしろ!

 どんだけ砂にミミズの固定概念有るんだよ。毎度毎度砂漠地帯に棲息させられるミミズさんの気持ちも考えろよ!


 と、俺が心の中で喚いたところで、目の前に居るもんは居るんだからしょうがない。


「すみません。砂漠に棲息するモンスターに関しては何も知りません」


 大丈夫。エルフに砂漠の情報期待してる奴は居ないと思うよ。


「獣人も平原や丘など、広く戦いやすいところを好むので、私もあまり詳しくは……」


 そんなモフモフで、実は暑いところを好むんですと言われても困る。信じないし。


「お父様が武者修行に出てた頃の話にも、砂漠は殆ど出てきませんでしたわ」


 殆どって事は一度ぐらいは行ってみたのか……好戦的過ぎるのも考えもんだな。


「アリア、こいつがどれくらい強いか知ってる?」

「さぁ、取り敢えず生き物なら燃えるんじゃない?」


 イメージ的に砂漠のモンスター火耐性と土耐性、雷耐性あたり備えてそうだけどな。砂嵐とかもよく起こるだろうから、風耐性ありそうだな?


 耐性だけ見れば無茶苦茶強そう。


 というか、デカいは強い。学んだ。


 幸先が悪ぃったらないな……。

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 名前:ヴァイス 性別:不明


 種族:デンスフォッグ(不明)


 Lv1/10


 HP1021/1021

 MP1001/1001


 状態:通常


 常時発動:《共通言語理解》《影無し》《音無し》《隠匿》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.8》《魔王の導き》


 任意発動:《薬草生成Lv.10》《植物成長速度Lv.10》《水汲みLv.10》《吸血・吸精》《猛毒Lv.8》《噴霧Lv.10》《全情報強制開示》《感知乱反射LV.3》《濃霧拡大Lv.4》《痺れの香Lv.2》《眠りの香Lv.2》《毒霧Lv.2》


 獲得耐性:《上位斬・打・刺突耐性Lv.1》《上位魔法耐性Lv.1》《邪法耐性Lv.10》《心耐性Lv.1》《ソフィアの加護》


 魔法:《土魔法Lv.10》《水魔法Lv.10》《氷魔法Lv.8》《魔導Lv.1》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 読書家 急成長 奪われしもの 魔王の誓約 エルフの盟友 斧の精霊(?) 罠師 魔導師 鑑定師 魔性植物 光を集めしもの 最上位モンスター

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