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117話 俺が聞くより連れてった方が早いよな

 人間の情報なら詳しいらしいし、聞いとくか。


 ヘンキョウハク ジョウホウ ヨコセ


「辺境伯?三人居るがどれだ?」


 そうか。一人とは限らないよな。


 新しく獲得したスキルを試したい一心で情報収集を請負ったけど、今更冷静なって気付いた。

 モンスターの身だとできることが極端に少ない。会話もままならないし。


 オレ オマエ コロサナイ ヌスマナイ ツイテ コイ


「何?まあ、何かを取ったようには見えんが、俺を呼び出すためにわざわざ荒らしたってことか?」


 ソウダ


 全然そんな事ないし、盗む気満々だったけど、俺の冷静的天才的閃により、最良とは言わないまでもマシな結果に辿り着いたのだぁ!


 オマエ チカラ タメス タ


「狙いは最初から俺だったわけか……モンスターが辺境伯の情報を必要とは思えん。まさか生きてるうちに特殊個体にお目にかかれるとわな。誰のモンスターだ?」


 ツイテクル ワカル


「分かった分かった。ただ、アンタの飼い主には壊した扉と荒らした事務所の修理代を払ってもらおうか」


 盗賊ギルドのイケメンギルド長はしっかりしてるな。まあ、アルネアお嬢様に払う金なんか無いので、リーダーであるアレクが払うんじゃないかな。知らんけど。


 何とか説得(?)して、盗賊ギルドのトップを連れた俺は……そうだ。そういえば、王様のメダルを使ったんだから宿屋じゃなくて屋敷に泊まってくるか。


 どうしよう。宿屋まで連れてきちゃったんだけど、マジでどうしよう?


 なぁ、イケメン。どうしたらいいと思う?


「おい、ここにお前の主人がいるのか?」


 居ないよ?忘れてただけだけど。


「おい、固まるな。何か書け」


 う〜ん。素直に居ないって言ったら「ナンデヤネン!」って言われるだろうな。関西弁にはならんと思うけどさぁ。


「あら?ヴァイス。終わったのですか?」


 おぉ、そのエルフ耳はアルテミスじゃないか。なんでこんなところに?


『すみません。話すには魔法が必要でしたね。その方は?』

『盗賊ギルドのギルド長』

『連れて来た意味が全く分からないのですが……』

『大丈夫だ。俺もよく分からん』

『まあ、いいです。宿には皆居ますので呼んできましょうか?』

『頼む』


「おい、エルフのアンタが、この植物系モンスターの主人なのか?」

「そうであるとも、違うとも言えますね。正確には私のパーティメンバーの従魔です」

「?なら、アンタの従魔じゃないんだろ?」


 ああ、そういうね。


「部屋に案内しますよ」

「エルフにしちゃ、えらく友好的だな」

「私以外のメンバーはエルフではありませんので」

「そりゃ珍しい。じゃあ、案内してくれ」


 なんでコイツら貴族の屋敷に泊まらなかったんだ?王様のメダル使ったんだよな?まあ、会って聞きゃいいか。


「アルテミスさんが人間を連れてくるとは思わなかったわ。何?男?」


 ニヤニヤしながら、アルネアお嬢様が碌でもない事を口にする。


「つまらない冗談ですね。アルネアさん」

「ごめんなさい。退屈だったうえに、意外だったものだから、つい」

「ふふっ次は怒りますよ?」


 ん?なんか仲良いな?なんでだろ。もっと怒ると思ったんだが。意外だ。


「人間三人に、エルフに獣人にモンスターとは、随分と珍しいパーティだな?ん?珍しい髪色の双子って事は……まさか勇者か!?」

「あまり知れ渡っては居ないはずですが、よくご存知でしたね」

「で、アンタ誰よ」

「ここじゃ盗賊ギルドのリューサン・モートルで通ってるな」


 十中八九偽名だろう。盗賊ギルドのギルド長が本名で堂々とやっててもやだけど。


「では、リューサンでいいかしら?」

「なんでも構わん。好きに呼べ。取り敢えず、お前らの従魔の損害を請求させてもらおう」

「何したのよレ……ヴァイス。まあ、なんでもいいわ。お爺様の魔法商章印を押した書類を上げるから好きな額を書くといいわ」

「流石は世界一の大富豪の孫だな」

「……貴方ヴァイスの事も知ってて来たんじゃないのかしら?」

「さぁ?どうだかね。で、アンタがコイツに」

「ヴァイスよ」

「失礼……ヴァイスに俺を連れてこさせたのか?」

「連れて来いとは言ってないわね。街での情報収集を任せただけよ」

「いやいや、モンスターがどうやって情報収集するんだよ……」

「街に入った初日に、盗賊ギルドの長をここに連れて来ただけで、充分高い能力が有ると思うけど?」


 街に入る前とかに考えていた通りに全くならないな。予定は未定というが、噛み締めてるわぁ……。


 もっとこう異世界転生って思い通りになるもんじゃないの?立てた計画とか殆ど思い通りにいった記憶ねぇよ。まあ、天才軍師でも何でもない、ただの一般人が考えた、百人が百人思い付くような作戦が上手くいくわけねぇか。


「アルテミスさん。なんで連れてきたか聞いて」

「はい」


 俺の判断は正しかったはず……。


『……というわけなんだ』

『懸命な判断でしたね』

『だろう?』

『何勝ち誇ってるんですか。荒らす前に気付きましょうよ』

『しょうがないだろ。テンション上がっちゃったんだよ』

『……』


 目線が冷たい。


 その後、俺らの都合をまとめてリューサンに伝える。


「そうかい。つまり、この盗賊ギルド長様に勇者パーティの使いっ走りになれという事か。まあ、ある意味保証はされてるわな」


 せやな。


「ディム・ヘンリー・ホルン辺境伯の情報と、ついでにドワーフの情報を集めてんのか。取り敢えず、手元にある情報はこれだけだな。しっかし、アレだな。ハイエルフがドワーフの存在を居ると言ったのか。御伽噺が現実になるとわな……長生きしてみるもんだな」

「アンタいくつよ?」

「さぁ?俺が知りてぇぐらいだが、まあ、分からなくても仕事に関係ねぇし、困った事は一度もねぇなぁ」

「そんなものかしら?」

「そんなもんだよ。平民なんて、働けさえすりゃ何歳でも問題ねぇよ」

「そういうものなのね。貴族も言ってしまえば結婚さえできれば実年齢なんてどうでもいいけどね」

「そうなのか?貴族は10代で皆結婚するもんだと思ってたぜ」

「あら、うちの親戚の兄は、50歳離れたおば様に愛人として連れてかれたらしいわよ」

「歳食った男貴族が、若い女を攫う。みたいな話は意外と聞くんだがな?」

「男だって女だって、若い方がいいに決まってるじゃない」

「平民で良かったぜ……」


 そういうもんかねぇ……。


 って、話脱線してねぇか?


「それで、王都と行き来したり、ドワーフや周辺国や北の貴族の情報を、一定の頻度で渡しに来て欲しいのですけど、ダメですかね?」

「あぁ、いいぜ。それにしても、貴族で天から勇者に選ばれたなんて言うから、どんな高慢きち野郎が勇者なのかと思ったが、随分と腰が低いんだな。貴族ってのは頭ごなしに命令するもんで、まさかお願いされるだなんて夢にも思わなかった」

「ははっ、僕だって自分の領地では、そこそこイメージ通りの貴族っぽく振舞ってますよ。様にはなってないですけど」

「引き受けてくれてありがとうございます」

「丁寧な言葉はやめてくれ。周りに馬鹿しか居ねぇもんだから痒くなる。そっちの嬢ちゃん2人みたいにとまでは言わないが、もっと気楽に接してくれ。俺が言うのもアレがだ、そっちの2人は馴れ馴れしいというか、可愛げがねぇと言うか……」

「うっさいわね燃やすわよ」

「ヴァイス。縛り上げて吊るしなさい?」


 アルネアお嬢様とアリアに可愛げを求めちゃダメだろ。アレクが一番可愛げがあるまである。


 こうして、勇者パーティは使いっ走りを手に入れた!


 ゲームならテーテーテーテッテレー!とか、音楽が流れるところ。


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 名前:ヴァイス 性別:不明


 種族:デンスフォッグ(不明)


 Lv1/10


 HP1021/1021

 MP1001/1001


 状態:通常


 常時発動:《共通言語理解》《影無し》《音無し》《隠匿》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.8》《魔王の導き》


 任意発動:《薬草生成Lv.10》《植物成長速度Lv.10》《水汲みLv.10》《吸血・吸精》《猛毒Lv.8》《噴霧Lv.10》《全情報強制開示》《感知乱反射LV.3》《濃霧拡大Lv.4》《痺れの香Lv.2》《眠りの香Lv.2》《毒霧Lv.2》


 獲得耐性:《上位斬・打・刺突耐性Lv.1》《上位魔法耐性Lv.1》《邪法耐性Lv.10》《心耐性Lv.1》《ソフィアの加護》


 魔法:《土魔法Lv.10》《水魔法Lv.10》《氷魔法Lv.8》《魔導Lv.1》


 称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 読書家 急成長 奪われしもの 魔王の誓約 エルフの盟友 斧の精霊(?) 罠師 魔導師 鑑定師 魔性植物 光を集めしもの 最上位モンスター

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