109話 対峙ハイエルフ
仮面ラ〇ダーカライドに退けられた俺は、エルフの里を目指して走っていく。
AランクとBランクでここまで差があるのは、おかしくねーか!?それとも、俺のトラウマが相手を必要以上に強く見せてるだけなのか?
案外ちゃんと戦えば、勝てはせずとも、善戦ぐらいはできたかもしれない。というか、レベル的に進化目前の俺は、イレギュラーがあればAランク相手でも倒せたはず。必要以上に怯え過ぎたかもしれない。
例によって、進化しますか?という表示が先程の戦闘で表示されたので、エルフの里に逃げ込んで進化したい。
そりゃ、あんだけ倒して血吸えばレベル上がるわな。
エルフの里案内無しで入れる気がしないんだけど……。
あ、名案があるわ。名案でもないんでもないけど、こんな言葉がある。
「常識に囚われてはいけないのですね」
触手を駆使して木に登り、あらゆる障害を無視して、光を目指して直進する。
最初からこうしてれば良かった。
そうだよ。俺人間じゃないんだから、道を通る必要はねぇ。人間の残滓に囚われ過ぎてる。
なーんで道を探さなきゃいけないとか思ってたんだろう?必要性皆無だよな。荷物も無いし、連れもいないんだから、直進でいいんだよ。
戦って思考がスッキリしたのか、道を無視する方法を思い浮かんで良かった。こういうのを怪我の功名と言うのだろうか?なんか違う。何が違うって怪我が物理な事だよな。失敗じゃなくてダメージ。
直進する事何十分か。
レベルが上限になった影響で《隠形》のスキルレベルも上がっているのだろう。誰も気付かれることなく、エルフの里に着く事ができた。
一難去ってまた一難。
《隠形》解けたら、里の中心にモンスター出現!ってなるよな。どーしよ。パッキャマラドでも歌えばいい?クラリネットとか吹いた事すらないけどね。
「あら、モノリじゃない。どうやって……まあ、別にそこはいいわね」
アルネアお嬢様!?っと一瞬驚いたが、良く考えたら主に見えない従魔とか不便この上ないよな。見えて当然。
「あら、良く一人で来れたわね」
「何だこのモンスターは!?」
アルネアお嬢様以外に声を掛けられたからか、姿が見えるようになったようだ。
辺り一帯は騒然としだす。
辺り騒然、こりゃ当然!
韻を踏むってこれでいいのかな。取り敢えず俺にラップの才能は無さそうだな。前世はラッパーでは無い様だ。
アルネアお嬢様が声を張る。
「皆様、驚かせてしまってすみませんでした。私の従魔です。どうか武器をお納めください!」
「植物系モンスターの従魔とは珍しいですね」
あ、アルテミス!
「ん?もしかして、アリシャ?同じモンスターで……魔力も同じ?本当にアリシャなの!?」
『本当にアリシャなのですか?』
お、この魔法。
『そ〜ですよ〜』
俺どんな口調で話してたっけ?普段話す機会が無さ過ぎて、分からん。俺が喋ってるのに、全く知らん人が喋ってる気がする。不気味。
「アリシャって、まさかレルレゲントのこと?……あんた一体幾つ名前あるのよ」
「モノリ、レルレゲント、ウィウィ、アリシャ、すごい数だね」
「ウィウィは人気ものですのね?」
いや、ルンフォード。そういう事じゃないだろ。そういう事なのか?てか、アルネアお嬢様探すのに、どんだけ長い距離旅してたんだよ。母をたずねて三千里でも、もう少し総距離近いんじゃないの?
森王強過ぎでしょ。どんだけ吹っ飛ばされたんだよ。よく生きてたな俺。
……まあ、真相はここの支配者であるモンスターさんが教えてくれるだろう。多分な。
そら来た。
神王樹からエルフがぞろぞろ出てくる。
「アルテミス。ハイエルフ様方がお呼びだ。そこの植物系モンスターを連れて来い」
「はい。すぐに参上させていただきます。……アリシャを連れて行っても?」
「何故モノリだけ?」
すまん。そろそろ名前を統一してくれ。
ナマエ ソロエルロ
「呼び方を統一して欲しいみたいだね」
「まあ、混乱するわよね」
「どうしようかしら?」
「いや、名前は後にしてくれないか。その、早く連れて行きたいのだが」
アルテミスこんな口調だったっけ?普通に考えて、対外用の口調が普段と同じなわけないよな。今は軍人としての硬い喋り方なんだろう。人間相手だしな。
「あぁ、そうだね。取り敢えず、行ってもらってから呼び方は相談しようか」
「そうね」
割と物分りがいいのは、このパーティのいいところだよな。
神王樹内部。
―謁見の間―
「例の植物系モンスターをお連れしました」
アルテミスが跪いて喋る。
「よく連れてきました。では、下がりなさい。皆もです」
中に居る兵達がざわざわしだす。
「ソフィア様だけ、モンスターと残すなど!?」
「黙りなさい。ソフィア様のお言葉ですよ」
「……失礼致しました」
ソフィア以外の人間が謁見の間から出ていき、一人と一体になる。いや、こいつはモンスター。二体が正しいか?
ふぅ。
『おい、ソフィア様よ。魔法なんか使わずとも話せるんだろ?』
『………………世界の真実を知ったのですね。仔よ』
やっぱりな。
『俺の名推理を披露しても?』
『……』
黙りかよ。
『……幾つか聞きたいことがある』
『……』
『あんたモンスターか?いや、もしかして神とか呼ばれる類のものか?』
『そうであるとも言えますし、そうでないとも言えます』
独特な神託っぽい言い回しで煙に巻くつもりか?
『あなたは特殊で特別でした』
『それはどういう……』
『産まれる前に意志を持ったのです。私が管理してるステータスというものは、全てのモンスターに産まれた時に自動で付与されます。しかし、あなたは卵の状態でステータスが付与されました』
ステータスの管理者。やっぱ神様だったか。何が半神ソフィアだよ。マジモンの神様じゃないか。
……ステータスの付与って、自動でされるんだな。パソコンとか詳しくないけど、この世界どんなプログラム走ってんだよ。
『あんたが俺を、この世界に連れて来たのか?』
『……存在とは、精神世界から最も近い精神体を依代とし、肉体に宿ります』
何を言ってんだ!?
精神世界とか分からんけど、精神体ってのは肉体を捨て去ったものがなれる状態の事だろ?なのに精神体が肉体に宿るって、どういうことだよ!
『生命の誕生は、死によって産まれるのです』
えーっと、つまりどういうことだってばよ。
『あなたの知る概念で言えば、輪廻転生でしょうか』
何となく分かった。
死ぬと、精神世界とやらに取り込まれて、最も近い精神体が産まれた世界に転生させられる。
んで、輪廻転生だから六道だろ。前世の俺は徳が低い生き方をしてたんだろう。犯罪を起こさないまでも、自堕落な生活をしてたのは、容易に想像できるしな。
故に人間以外に転生したと。そういう事か。
『なるほど。それじゃぁ、最初から目を付けられてた訳だ』
『はい。最初から加護を与えていました』
『だから、森王に吹っ飛ばされたのに生きてたのか』
『献上品にはうってつけでしたので』
『誰に献上するんだ?まあ、予想はついてるけど。魔王を悪だとしたら、あんたは邪神ってところだろ』
『善悪の定義は、その存在のあり方によって変わりますが、その仮定ならば、そう呼ばれるべき存在でしょう』
まどろっこしい言い方しやがって。
『じゃあ、ここでおかしな事が一つある。あんたが魔王の側にいるってなら、何故魔王を倒す存在を集めさせた?』
『…………行けば分かる事です』
『種明かしをされて、大人しく魔王のところにノコノコ出ていくとでも?俺は、アルネアお嬢様さえ無事ならそれでいい。勇者のパーティなんて抜けさせてもらうさ!』
『それは不可能なのです。あなたは既に祝福を授かっています。どのような道を往くとも、必ず魔王様の元へ辿り着くでしょう』
祝福?……あっ!
そういや、俺は既に魔王に縛られてるのか。誓約。誓ね、何だよ誓って。
『まだ、聞きたいことが山ほどある!魔王ってなんなんだ!ワイバーンはどうして人間側なんだ!』
『……』
『答えろソフィア!』
『……』
どうやら、もう話す気は無いらしい。俺が逃げれないから種明かしをしたのか、性格悪過ぎだぜ。
さしずめ、光を集め切ったご褒美ってところだろうな。クソが。
光って一体なんで光なんだとか、まだまだ聞きたいことがあったのによ。
仕方ない。この場は大人しく退こう。森王の一撃を防ぐ加護を一方的に遠くから他人に施せるような存在相手に、今の俺じゃどうにもならん。
悔しい。
どうしてこうも、逃げてばかりなんだ。本当にこんなんで、アルネアお嬢様を守れるのか?
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名前:モノリ 性別:不明
種族:ラークスフォッグ(霧の湖)
Lv66/70
HP337/739
MP3/644
状態:魔力残量低下
常時発動:《共通言語理解》《隠形Lv.7》《触手Lv.10》《触手棘》《上位感知Lv.6》
任意発動:《調べる》《薬草生成Lv.10》《植物成長速度Lv.10》《植物鑑定》《水汲みLv.10》《血液吸収》《猛毒Lv.4》《噴霧Lv.8》《情報開示Lv.9》《指し示す光》
獲得耐性:《恐怖耐性Lv.10》《斬撃耐性Lv.9》《打撃耐性Lv.9》《刺突耐性Lv.10》《火耐性Lv.5》《風耐性Lv.5》《水耐性Lv.10》《土耐性Lv.8》《雷耐性Lv.5》《氷耐性Lv.10》《邪法耐性Lv.9》《不快耐性Lv.5》
魔法:《土魔法Lv.6》《水魔法Lv.8》《氷魔法Lv.6》《魔導の心得Lv.6》《魔力の奔流Lv.6》
称号:意思ある卵 従魔 絞殺好き 逃走者 雑用係 危険な棘 馬車馬 耐性植物 読書家 急成長 近親種殺し 魔法使い 看破せしもの 上位種殺し(氷) 奪われしもの 凶性植物 狼の天敵 上位モンスター 魔王の誓約 エルフの盟友 殺戮者 看破の達人 導かれしもの 光を集めるもの 斧の精霊(?) 罠師 害鳥駆除 鳥類の天敵 虐殺者 怨敵を討つ者 復讐者 亜龍の天敵 天敵殺し
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