小説家になろうの「歴史〔文芸〕」ジャンルが私が考える歴史小説のイメージとだいぶ違うので歴史小説を再定義してみた
小説家になろうのアカウントを取得している人は、大きく分けて2種類にカテゴライズできる。
一つは、小説を書きたい作家。
もう一つは、小説を読みたい読者。
書くシステムと読むシステム、両方利用している人も多いだろう。
現行システムでは、膨大な作品の中から好みの作品を探すために、ランキングやジャンル分類を利用する仕組みになっている。
筆者の好みがマイナージャンルだからだろうか。あることで違和感を感じた。
小説家になろうの「歴史〔文芸〕」ジャンルが、私が考える歴史小説のイメージとだいぶ違うのだ。
違和感の正体を探るため、「歴史小説」を再定義してみた。
手っ取り早くWikipediaを探ってみた。項目「歴史小説」から引用する。
・一般的に歴史小説と時代小説はほぼ同じ意味に用いられているが、文学上はかなり明確な区別がある。
さっそく違和感の正体がわかった。
小説家になろうのジャンル分類では、すべて「歴史〔文芸〕」で一括りにされているのだ。
次に、「歴史小説」と「時代小説」の違いについて引用する。
・歴史小説
主な登場人物が歴史上実在した人物で、主な部分はほぼ史実通りに進められる。
・時代小説
架空の人物を登場させるか、実在の人物を使っても史実と違う展開をする。
私がイメージする歴史小説は前者だ。
しかし、小説家になろうの「歴史〔文芸〕」ジャンルでは、ファンタジー色強めの時代小説が主流だ。主流どころか、ほぼ後者しかない。
どうりで、読みたい「歴史小説」が見つからないはずだ
本稿で、ファンタジー系の歴史/時代小説を批判する意図はない。
一般論として、カタイ歴史小説よりファンタジー系時代小説の方が需要が高いことは理解できる。
ファンタジー系小説のタイトルが、ランキング上位を独占するのは至極当然のことだ。
小説家になろうが弱小サイトだった頃なら、マイナージャンルをまとめて大雑把にカテゴライズしても仕方がない。
だが、いまやこれだけ作品数が増えて巨大化しているのだから、ジャンル分類のシステムを再考してもいい時期ではないだろうか。
2018年9月現在、小説家になろうの作品数は40万以上におよぶ。
アカウント登録者数80万人以上、小説閲覧数月間11億PV以上だそうだ。
40万ともなれば玉石混交。好みの「玉」には個人差がある。売れる大衆小説もあれば、ニッチな需要を満たすマイナー小説を望む人もいる。
40万の中に、マイナージャンルというだけで埋もれている良作がどれほど眠っているだろうか。
現行システムは、一般受けするタイトルばかりが目立ち、マイナージャンルを探すシステムが機能していないことにジレンマを感じる。
運営側のことを考えると、システム改善はなかなか大変だと思う。
しかし、小説投稿サイトとしてさらなる成長を見込むなら、現行システムの改善は必要になってくるだろう。
「日本最大級の小説投稿サイト」を標榜しながら、アマゾン並みのジャンル分類システムではいささか物足りない。
小説家になろう/小説を読もう!サイトが、未知の作家・未知の作品を「発掘」できる良サイトであることに異論はない。
停滞する出版業界に循環を生み出すのは、作家であり読者でもある。
小説投稿サイトの運営者と出版社は、作家と読者をつなぐ橋渡しの役目であり、時代に合わせた最適なシステム環境を構築することが課題とも言える。
投稿数、読者数、発行部数、売上など、数値的な成果も大事だ。
同時に、需要と供給の循環システムが機能しなければ、業界に利益は生まれない。
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最後に手前味噌になるが、筆者は連載小説を2作執筆している。
ひとつは、歴史小説だ。登場人物はほぼ実在した人物のみで、ストーリーは史実通りに進められる。プロットは年表どおりだが、キャラクターの思いや行動の動機は作家の腕の見せどころだ。
もうひとつは、時代小説だ。登場人物もストーリーも歴史に沿っているものの、諸事情により主人公は生死の狭間で空想世界を見ている。
自分が何を書いているのか、何を書こうとしているのか。
評価をあげる方法を考えるのも結構だが、クリエイターの端くれとしてはテーマとストーリーの軸を確認することも大事だと思っている。売り方を考えるのは、作家の仕事ではない。本来は編集者の仕事だ。
クリエイティブなスキルと、ビジネスのスキル。どちらを優先するか/どちらが得意かは各々に委ねられている。