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勇者と魔王は終わりのない恋をする

作者:アカツキ
 俺は走る。今居るこの城の玉座を目指してひたすら走る。魔王を封印するという目的を達成する為に平和の為に走る。
 そして遂に玉座の間に繋がる扉を開け、大声で叫ぶ。
 「魔王は居るかー!」
 すぐに綺麗な声と共に返事は帰ってきた。
 「なんだ。お前の目は節穴ななのか?妾はお前の目の前に居るであろう」
 目の前の玉座に片肘をつき、その手で退屈そうに頭を支えている女性が魔王である。
 「待ちくたびれたぞ勇者アレク・ブレイブよ」
 「そんな待たせてないだろ、魔王レティナ・ヴェル・ゾルフォード」
 「今年で3回目か……妾たちが初めてあった日から300年も経つのか……」
 そう今年で300年も経つ。俺が初めて魔王城を訪れ魔王レティナを封印したあの日から。以来俺は100年に一度こうして封印しに来ている。
 「なぁ、アンタももう戦う気はないんだろ?」
 「あぁ、そのつもりだ。ただその前に昔話をしないか?」
 「ん?そりゃどうしてだ」
 当然の疑問だ。なぜ魔王を封印しに来て昔話をしなければならないんだ。
 「お前にとって過去の話はつまらんかもしれんが、ずっと封印されてばかりの妾としては昨日のことのように記憶しているのだぞ。それに、昔を知っているのは、もはやこの世界に妾とお前……あとは神くらいだろうか?」
 「確かに、復活しては封印されの人生じゃ可哀想だ。少しばかり付き合ってやるか」
 そう言って俺は腰に吊るしていた聖剣を床に置き、あぐらをかいて座る。すると、魔王はおもむろに話し始めた。

ーーー

 「妾は先代魔王ゲイル・ヴェル・ゾルフォードの一人娘として産まれた。父上は跡継ぎとして男子が欲しかったらしいが、妾が産まれて間もなく死んだ……。元々、不治の病を患っていたそうだ。妾は魔王を継ぐべく必死に勉強し大臣や母上に助けてもらいながら魔族を統率していった。」
 ここで声のトーンが変わる。
 「そして、妾が20歳の誕生日を迎えた時、力は覚醒した。不老不死の肉体と無尽蔵の魔力を手に入れたのだ。原因は父上の不治の病の元凶であるウイルスと言われておる。そのウイルスが妾の中で突然変異を起こし、絶対死ぬ病気から絶対死なない病気へと変化してしまったらしい」
 ここで俺が話を引き継ぐ。
 「それと同時に、俺は神から使命を与えられた。『現魔王を封印せよ』ってね。そして聖剣を授かり、不老不死の勇者となった。ちなみにその時の俺は18。アンタより2歳も若いぜ」
 お互い300年以上も前の事を楽しそうに懐かしそうに語る。世界で一番古い会話をしているのは間違いなく俺たちだって言い張れるくらいには。
 「いやぁ〜最初は驚いたぜ?色んな街巡って仲間集めて、魔物討伐して、冒険して、魔王城に辿り着いた」
 「それを妾は全身全霊をもって迎え撃った。特にお前は面倒だったな。何度殺しても復活するし……最終的に負けてしまった。妾の家臣たちには悪い事をしたと思っておる。余りにも多くの魔族が傷つき過ぎた……」
 急に魔王の元気が無くなったので必死に取り繕うと話を繋げる。
 「ちなみにその後、盾使いの堅物ラインハルトと超絶美少女ヒーラーのチェルシーが結婚したんだぜ!仲間皆で祝ってよ〜。幸せそうで何よりだった……。まぁ、皆死んじまったが……」
 「その……お前は結婚しなかったのか?」
 「えっ?」
 想像もしていない質問だったので返事に戸惑う。しかし、それが癪に障ったのか更に大きな声で聞いてくる。
 「だ・か・ら!お前は結婚しなかったのかと聞いておる!」
 「いや、俺は結婚しなかったよ」
 「なぜだ?」
 「なぜって言われても……。まぁ、結婚して子供ができても俺は不老不死だから……。ほら嫁や子供、孫が先に老いていって死ぬのって嫌じゃん。俺は若いままだし」」
 「そんな理由でか?」
 「いや、そんな理由って。結構重要だぜ?」
 俺は、話を切り替える為に昔話を続けた。正直自分で振った話題から派生した話ではあるが、こういう話は好きではない。
 「そーいや2回目なんてビックリしたぜ。何せ魔王城に着いたらアンタ以外誰も居ねえんだからよ。魔王城総出で夜逃げしたのかと思ったぜ」
 「あぁ、あれは200年前の反省を活かしたのだ。妾は不死身だが仕えている魔族は命に限りがあるであろう?だから、勇者ご一行様に傷つけられないように逃したのだ。」
 まぁ、そんなところだとは思っていたが100年後に答え合わせって変な感じだな。
 「アンタも一緒に逃げれば封印されずに済んだんじゃないのか?」
 「そんなことしたらお前たちが追いかけてくるであろう。そしたら戦闘になって犠牲者が出るやもしれん」
 ごもっともな意見に何も反応できないでいると、悲しそうな表情になって頭を下げてきた。
 「あの時は本当に申し訳ない事をしたと思っておる。妾は、お前たちのパーティーを全滅させた。お前を何度も殺した。自分の家臣たちには怪我をさせぬように逃したというのに……お前たちには容赦無く殺しにかかってしまった……。黙って封印されようと思っておったのだが、直前になって自分の運命に抗いたくなってしまったのだ」
 辛辣そうに謝る魔王を見て俺の方こそ強引で申し訳なかったと誤った。
 「その事はもう気にするな。アイツ等が生きてたってとっくに寿命で死んでるさ。恨んでる奴なんていない……」
 少しばかり空気が重くなってしまったので無理矢理にでも空気を変えようと虚勢を張りながら話の時間を進めることにした。
 「そんな暗くなるなよ。お前が反省している事は今回でよ〜く分かった。だって3回目の魔王城に行く為に村出ようとしたら魔王直属の部下が迎えに来て、超豪華な馬車で直接ここまで送ってくれたんだぜ?冒険も何もありゃしねぇ」
 笑いながら言ってやると、してやったみたいな顔でこちらを見つめてくる。座っていた床はすっかり俺の熱で温かくなっていた。

ーーー

 そしてゆっくりと立ち上がり、聖剣を鞘から引き抜く。
 「昔話はもういいだろ。そろそろお別れの時間だ。急に気持ちが変わって抵抗するなんて言わないでくれよ」
 「あぁ、そんな事はもう言わん。ただ、その前に一つ教えてはくれんか?」
 「ん?」
 何だろうと首を傾げる。魔王が眠っていた時の話だろうか、それとも100年後俺がどこに居るとかそんな事だろうかと思考を巡らせていると、思ってもいない角度から質問が飛んできた。
 「なぜ妾は封印されねばならんのだ」
 予想外過ぎる質問に気の抜けた声が出てしまう。
 「はぁ!?アンタそんな事も知らなかったのかよ!?」
 「し、知らなかったのだから仕方ないであろう」
 「知らないんならしゃーない、俺が教えてやるよ」
 300年以上前に神から聞いた事を思い出しながら説明していく。人間意外と覚えているものだ。
 「いいかよく聞けよ。アンタ等魔族には生まれつき魔力を持っているらしい。俺は魔族じゃねぇから分からねぇけど、その魔力ってのは魔族が30歳になるまで増え続け、その後は、ゆっくりと無くなり魔力の枯渇と同時にその命を終える。魔族は寿命にバラつきがあるのも、個々による魔力の差が大きい為らしい」
 その辺はアンタの方が良く知っているだろうと流す。本題はここからだ。
 「魔力ってのは魔族が20〜30歳の間に最大効率で増えるらしいが……アンタは20歳で時が止まってるんだろ?だから、今もアンタの中でどんどん魔力が増加していっているらしい。言うなればアンタは魔力の爆弾だ。封印でもしなければいつ爆発するか分からない。爆弾すればアンタと俺以外は生きていないだろうよ」
 まぁ、こんな感じだ。と説明を簡単に済ませる。
 実際に目の前に居るのは300年以上も魔力を貯め込んだ不老不死の爆弾。その気になればこの星だって吹き飛ばせるのかもしれない。そう考えると、よくこんなのと戦ったなと自分を賞賛したくなる。
 「礼を言う。前は戦闘でそれどころではなかったからな。ずっと気になっていたのだ」
 改めて礼を言われるとなんだか情が出てきそうなので、そろそろ封印に移る。魔王も察したのか静かになる。
 話し声が無くなり部屋の気温が何度か下がったような気がし、身震いをする。大きく息を吸い思い切り吐く。そうでもしないと先へ進めなそうだ。
 封印は至極簡単。ただ、聖剣で魔王の心臓を突き刺す。それだけで封印は終了する。3回目でやっと慣れてきたと思っていたのに気が進まない。本当に情でも湧いてきてしまったのだろうか……。
 「何だ、早くせんか。妾との別れが惜しいか?また100年後会えるであろう」
 「そんなんじゃねぇよ」
 そこで、自分の声が震えている事に気が付く。目が熱い。あぁ胸糞悪いな……。
 足を動かし魔王が座っている玉座の前に行く。魔王は薄く笑ったまま身動きもしない。
 聖剣を構える。まだ笑ったままだ。
 そして、剣を引き力を込めて体に突き刺す。魔王が痛みに顔を歪めながら耳元で囁いた。


 「アレク、愛しておるぞ」


 光はその言葉と共に魔王の全身を包み込む。次の瞬間には跡形も無く消えていた。
 「ずりぃじゃねぇか」
 床が濡れる。
 「何で涙が止まらねぇんだ。昔の仲間の葬式でも泣いた事なんて無かったのに……」
 玉座の間には月の光に照らされた男だけが残り、すすり泣きだけが響いていた。
 空気は冷たいのに目だけが熱く変な感じだ……。


 「100年後、今度は花束を持って来てやるよ」


 男はこの言葉を最後に魔王城を去った。

ーーー

 あれから100年の月日が経った。
 眠っていた妾としては100年前なんて昨日の事だ。ただ、100年前と違うのは目の前に居る勇者が、聖剣ではなく花束を持ってきたことだ。
 「どういった風の吹き回しだ。封印しに来たんだろう?その為に今回は飛空艇を用意してやったのに」
 男は100年前と変わらぬ笑顔で突拍子もない事を言ってきた。
 「聖剣は家に置いてきた。その代わりの花束だ」
 意味が分からない。妾を魔力爆弾だから封印しなくちゃいけないと言っておった筈なのだが……。
 「だから、俺と結婚してくれ!」
 「はぁ!?」
 ついつい100年前アイツが驚いた時と同じように驚いてしまった。まず接続詞がおかしいし、何でそうなる!
 「ほら指輪も用意した」
 そう言ってポケットから指輪を出してくる。見た事もない宝石が埋め込まれた装飾の美しい指輪だ。
 「いや、だから……」
 「これが有れば魔力を抑えられる。この宝石は100年間で俺が研究してきた結晶だ!」
 今なんて言った?これを着ければ封印されずに済むのか?
 「それは本当か?」
 「本当だ。アンタは前回、俺を愛していると言ってくれた。それに俺は男として、同じ不老不死として応えなければならないと思ったんだ」
 男は片膝をつき指輪を差し出しこう言った。
 「勇者アレク・ブレイブは、魔王レティナ・ヴェル・ゾルフォードを愛しています。結婚してください」
 嬉しい。400年以上生きてきてこれ以上嬉しかったことはない。無意識に頬を涙がつたう。心に春が訪れたようだ。
 断れない。断らない。
 「こちらこそよろしくお願いする。愛する夫アレク」
 柄にもないが全力で微笑む。左手の薬指にはめられた指輪がより輝きを増した。

 ドカァーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!

 さっきまで晴れていた空が、急に顔色を変え、空を真っ黒な雲で覆ってしまった。あちらこちらで雷が鳴っている。
 慌ててアレクの方を見ると申し訳なさそうに引きつった笑みを浮かべている。
 「スマン。俺の使命はレティナの封印だっただろ?それをしないってことは神に逆らったって事なんだ」
 「え?どういうことだ?」
 状況が把握出来ず心なしか焦る。背中に嫌な汗が流れる。
 「今から俺は、『魔王を封印し世界を守る勇者』から、『神に反逆し世界を危機に晒す大罪人』に身分が変わったわけだ」
 急な目眩に頭を抱える。
 「結婚生活の先が思いやられる……」
 一人で呟く。旦那は呑気に笑ってばかり……。
 妾たち不老不死の夫婦は、楽しい新婚生活なんて無く、神から追われる逃走の日々を迎えそうである。
短編小説として上げてますが、好評なら連載に移行する予定です。(意訳:高評価、コメント、ブクマよろしくお願いしますm(_ _)m )

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