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ラー面子

作者: 花成

「ラーメン3ぶんこしようぜ!」

喧噪とした男子校の食堂の中でも、その聞きなれないおバカな提案が周囲の聞き耳に入ってしまってないか気がかりになる。視界端で意外性を込めた視線を捉えてる気もする。一声を放った隣にいる奴はたかりだ。学食代をケチって誰かの残り物で昼食をすごして、残飯キラーを自称している。独り身を狙う誘拐犯のように、クラスで特に冴えない人を狙って交渉してくる。この前おにぎりを与えてからお得意様認定されたらしく、食堂までついてきた。しかしまぁ他の子から食い終わった残りのラーメンのスープを飲み干してる姿を見かけるが、まだ手を付けてないラーメンを等分しよう!と持ち掛けてくるとはずうずうしいにも程がある。

図に乗るなよ。

「じゃあ俺、麺♪」

たかり魔の向かいに座ってる俺と似た体型の小太りも話に乗っかて来た。まずお前もラーメンたのんでるだろ。しかもグレード高くとんこつでゆで卵もトッピングしてるし。

「俺スープ」

結局お前はスープなのか。

「いやだよ」

そもそもスープと麺の役割をなんで分裂するんだよ。分けるってラーメンっていう具材の組み合わせを保ったまま味をシェアするもんじゃないの普通?

「なんだよ、お前メンマとチャーシューの2種類あんのに文句あんのかよ。ほら、お前の好きな肉だぞ!」

屁理屈がめんどくせえ!てかお前にも立派な皮下脂肪ついてるだろ。デブ=肉の皮肉はブーメランだ、まぁ好物だが。はぁ、仕方ない。

「肉があってもメインに欠けるの!器に普通に分けようよ」

たかり魔の、この近辺にいる全員に言える特徴だが、整えたこともない老人のように伸びきった眉毛がくいっと上がり。

「お前天才だな!産まれてこの方養われても共有した覚えはないからな。俺ひとりっこだしっ!」

「俺もひとりっこぉ」

じーっと、2人がこちらに視線を向ける。息ぴったりな兄弟のよう。

「じゃ、じゃあ俺も―――」

「「どうぞどうぞどうぞどうぞ」」

「なんだよこれ」

世代ではない、もはやニッチな芸人のネタに、普段動じない頬がきつく上がる。小太りは何事もなかったかのようにとんこつラーメンをすする。分けてもらいたいのはこっちだ。たかり魔は顎で早く食えと催促する。別にあげるなんて言っていないのに、さも報酬が確定しているように落ち着いてやがる。残念だが俺もスープは飲み干す派だ。投げやりだが落としどころが付いたらしい。さてはお前たちもこの絡みはだるいと感じていたようだな。この歪で不器用なやりとりは並の仲のコミュニティーじゃドン引きだろう。そもそも陽気で話上手な奴はこんな隅っこなテーブルに寄り集まらい。でも受け身がちな俺には、この陰気独特の拙い接触が、上手く馴染んだ。

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