表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

第四話:二周目同士の小競り合い 前

 二周目同士の眼が合えば、お互いにわかるという――相手を討たねばならないと。同族嫌悪が理由だと、セルウィー・アエテルナエは言った。


「折角帰って来たって言うのに、戦わなくちゃいけないなんて……不幸だわなぁ」

「別に俺は、戦わなくても良いんだが?」

 二人の男が居た。繁華街の外れ、人気も少ない。奇妙な画だった、そのどちらも一般的な学生にしか見えない。だというのに、二人の間に流れる空気は、達人同士の放つソレに酷似していた。


「お前を放って置いたら、面倒な事になりそうなんでなぁ……スキル!」

 そう叫んだ彼の手には、いつの間にか武器が握られていた。冷気を纏うそれは、レイピアと呼ばれる剣だ。これが彼の得てきた力、異能の行使、スキルだ。

「三十秒だけ相手してやる……ソレ以上は勘弁してくれよ」

 男の眼前に、半透明の窓枠(ブラウザ)現れる(ポップ)


《Skill》┬  《Passive》

     .├  《Auto》

     .└→《Active》→【流水の構え】Recast time:50s

                          効果時間:30s


 武術の構えを取り、呼吸を整える。彼の眼前に小さく新たな枠が現れ、そこには三十秒のカウントが始まっていた。これがこの男の戦闘力の根源。VRMMOのシステムを、そのままに現実に戻って来てしまったのが彼だ。


(コレ)は、あちらの「れいぴあ」が勝つと思う』

「俺はあの構えた奴だな」

「あら、悠斗さん何故そう思いますか?」

 そんな男二人の闘いを、ビルの上から観戦して居るのがセルウィー達だった。悠斗に至っては、コンビニで買ってきたホットスナックを片手に持ち、ジュースを飲んでいる。

「勘」

 それだけ言うと、ホットスナックを一口齧った。


(三十秒だけ? どういうつもりだぁ?)

 レイピアを持ち、構える男――天条 蒼汰(てんじょう そうた)は訝しむ。なにせ、二周目という人種は、既に一つの問題(シナリオ)解決(クリア)している。ゲームで言えば二周目状態。だからこそ、そう呼ばれる。つまりは、殺傷力という一点に置いては誰もが一級品を持ち合わせているはずだ。

(それを、三十秒だけ相手をする?)

――つまりは、格下として見られている。そう思った瞬間、天条 蒼汰には我慢がならなかった。

「――馬鹿にするなァ!」


 踏み込む。


 意識と無意識の間、それの刹那を読み、蒼汰はレイピアを振るう。


《Skill》→  《Auto》→【斬り払い】Recast time:15s


 だが、ゲームシステムは絶対だ。回避不能と思われた一撃に反応を返す。

《Skill》→  《Passive》→【ガンホルダー】

 いつの間にか、腰に現れていた、二つのホルスター(・・・・・)から、抜刀(・・)する。


 それは、ホルスターには決して入らないような、巨大なガンブレイドだった。刃渡りだけで2mを越す大剣。その根本には、人の頭を込めれそうな程巨大なリボルバーが。


――そう、ゲームシステムは絶対だ。


 彼、西馬さいば だいは【マンチキン】と呼ばれる人種だった。和マンチなどと呼ばれる類いだ。

 彼の遊んでいたVRMMOはそれなりの出来であった。だが、世界初のVRMMOだったのが問題だった。プレイヤーの多くが、バグ探しに明け暮れていたのだ。前例のないゲームシステム、デスゲームに変わった世界で、生き残るためにもバグが探し続けられた。

 そんな世界において、ただ強く、強く有るために自らを組み上げてきた西馬 大の挙動はバグの塊とも言える。


(二周目共に合わせて戦いたいが、俺の戦闘能力は、この【流水の構え】の間、30秒しか持たない……)

――だからこそ、「三十秒だけ相手をしてやる」だ。


 視界の端、既に二十秒を切った残り時間(リミット)。先の斬り払いで、蒼汰のレイピアは粉々に砕けている。

「もう辞めないか?」

 大の発言、どちらかと言えば、懇願に近い。これ以上続ければ、死ぬからだ。


「ぁー、あー、俺の方こそ、馬鹿にして居た。申し訳ない……」

 蒼汰は小さくスキルと呟く。その両手に握られる二振りのレイピア。彼も、二刀流こそが本領。


「――本気(マァジ)で相手をさせて貰う!」

「そうかよッ!!」


 第二ラウンドが始まろうとしていた。


「ほらな、レイピアより、あっちのが強そうだ」

 悠斗はヘラヘラと笑った。セルウィーは、そろそろ彼を戦場に送り込もうかと考え始めていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ