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28話 商品開発部、マスコットと戯れる

あと少しでブクマ8000人ですよ!

 ウサギ屋のマスコットキャラクターと言えば、ウサミミが特徴的な【レイン・ゴースト】達だろう。表向きは使い魔――本当は【ザ・クリエイティブ――転生蘇生リザレクション――】によって生み出され【ユニークモンスター】だ。


 今日は彼らにも新しい商品を開発してもらおう――と無理な企画を提案したのであった。


「ミヤト、流石に彼らには無理なんじゃ……」


「決め付けるのは早いぞ、アスティア! 見てみろよ、あいつらのやる気を!」


 クロ、シロ、モーノはホワイトボードを使いあれやこれやとお絵かきをしている。一見、ただの落書きだが、詳しく見てみると素材のようなもを足して、結果何かが生まれる……みたいな絵を描いているようだ。アスティアからすれば自分の絵よりは分かりやすい。デフォルメの果物や、モンスターの素材、机の上に散らばったものと比較すれば似ている気もしなくもない。


 リビングでモンスター3体が戯れながら遊ぶ姿を見守る店主とシスター。謎空間が広がっている所で、ようやくアスティアこの現状を変えようと口を開いた。


「それで、どうやって作る気ですか?」


「うんー、ちょっと考えたんだけど、お前らってユニークモンスターなんだよな? スキルとか使えないの?」


 レイン・ゴースト達は宮兎の質問にフードを見合わせると、静かに3体は頷いた。モーノがうでをパンパンと音を叩いて広げると、自らの体を包み込む泡が発生した。アスティアは「きれい…!」と呟いて、ミヤトは驚いて腕を組んだ。


「【ノイズ・シャットダウン】! なんちゅうマイナーなスキルを持っているんだよ……」


 【ノイズ・シャットダウン】――術者、あるいは対象者への音を封じ込めるスキルだ。これはハイパーボイス系統のスキルを防ぐためだけに使われる。なのでかなりマイナーで、扱える冒険者は少ない。宮兎が驚くのも無理はなかった。


 ただ、このスキルは毎日宮兎を対象に発動しているのだ。【レイン・ゴースト】達が召喚されたあの日の夜から、宮兎の安眠を守るために使われていた。アサシンのパッシブスキル【危険予知A】は残念ながら攻撃系スキルであれば寝ていても反応はできる。しかし【ノイズ・シャットダウン】はアシスト系スキルに分類され、宮兎は気がつかずにレイン・ゴースト達にスキルの実験にされていた。実験とは言い過ぎたのかもしれない――試験的に、どのようなスキルか試した……ほとんど変わらないか。


 そのおかげでとある盗賊団の命が助かっていることを忘れないでほしい。


「なら、この【耳栓】に【ノイズ・シャットダウン】をエンチャントできれば画期的なアイテムが!」


 取り出した耳栓に今度はクロが【ノイズ・シャットダウン】を使った。耳栓が泡に包まれ、パチンっと割れた。宮兎が恐る恐る耳にはめると――


「ど、どうですか?」


「ええ? なんだって!? なんか、何も聞こえないんだけど!」


「声が大きいですよ……。本当に何も聞こえないのですか?」


「だから何だって!? うわー、本当になーんにも聞こえねえや!」


 一人で大興奮している宮兎。アスティアは無理やり耳栓を引っこ抜いて、耳栓を机の上に置いた。


「確かに強力ですが、これはエンチャントではなくスキルの効果です。時間が経てば【防音】の効果は消えてしまいますよ?」


「むう、それもそうだな……。まあ、クロ達もスキルが使えることがはじめて分かったし、良かったんじゃねえか?」


「良かった……のですかね?」


 アシストスキルを扱えるレベル200超えのユニークモンスター。こんなモンスターが100ゴールドショップの棚を整理していたり、レジをうったり、宅配したり、なんとも出鱈目な真実だろうか。初心者冒険者の天敵が街をウロウロしていることに誰も気づいていないのが奇跡だ。


「そんじゃ、こいつらの案を1つ1つ見てみるか。アスティア、手伝ってくれ」


「ええ、それは良いのですが」


 3体のレイン・ゴーストが敬礼をすると、それぞれが思う商品を作るために素材を選び始めた。






 それからレイン・ゴースト達は1つの案にまとめ、クロが持ってきた素材は鉱石と木片を持ってきた。これだけでは何を作れば良いのかわからないので、シロがスラスラとホワイトボードに絵を描き始める。バネのように渦を巻く刃にそれを包み込む木製の球体。ヴァルハラ文字も書けるようになったので、絵と文字で説明を3体は一生懸命した。アスティアが上手く宮兎に伝えるが、肝心の使い道を教えてくれない。


「んー、木製の球体の中に渦巻状の刃を入れればいいんだな? 大きさは手の平よりちょっと大きめ。んで、中身は空洞――まあ、一応作ってみるか」


 商品名が分からないので【木で包まれた渦巻状の刃】と名前を入れて検索。素材を決めて錬成すると――クロが考えたアイテムが出来上がる。


 提案どおり木製の球体の中身は渦巻状の刃以外は何もなく、上と下が空洞となっていた。宮兎も作ってみたが、全く使い道が想像できない。


「できたぞ。これ、どうやって使うんだ?」


 待っていましたとモーノがブツを受取ると、机の上に素材としておいてあった【グレンの実】を手にとる。【グレンの実】は前回も説明したようにヴァルハラでは誰もが好む果物である。現代にたとえるならバナナやみかんと同等の人気を誇る。


 するとクロが球体の中に【グレンの実】を無理やりねじ込む。


「おお! なるほど!」


 アスティアは正直に驚いて見せた。モーノの手には綺麗に皮の剥けた【グレンの実】があった。このアイテムはグレンの実の皮を剥く為の便利アイテムだった。見事に皮は渦巻状の刃に絡めとられて、球体の中にそのままある。モーノが球体を優しく叩くと、ポロリと皮が落ちてくる。


「グレンの実は包丁で皮をむくと、下手な人は実も一緒にむいて勿体無いです。ですが、このアイテムなら綺麗に皮だけを剥けるのですね!」


 アスティアの興奮から見て、期待度が高い。宮兎はさっそく商品化しようと心に決め、照れる【レイン・ゴースト】達を優しく撫でた。


「アイディアグッズを思いつくと流石だな。よし、ご褒美をあげなきゃな」


 アイテム覧から取り出したのは小さな虹色にひかる金平糖なようなもの。これはモンスター達のお菓子的な物で魔力の塊に近い性質をしている。レイン・ゴースト達の食事もこれでまかなっており、一粒食べれば、2週間は元気に動ける。とても美味しいらしく、よく褒美にねだられるらしい。


 一粒ずつ受け取り、レイン・ゴースト達の体の中へ吸い込まれていく。よっぽど美味しかったのか、喜びのあまり天井を駆け回る。2人はそんな微笑ましい光景を笑ってみていたが、アスティアが突然気になったことがあった。


「あれ? なんだか【レイン・ゴースト】達の魔力が強くなっている気が……」


「魔力が? いやー、流石に【魔力糖まりょくとう】をチマチマあげたぐらいでレベルは上がらないと思うんだけど」


「そうですが……。一応確認を」


 【ステラ・スコープ】を取り出して覗いてみる――やがて2人は口がぽかーんっと開いた。


 ====================


  【ステータス】


  【レイン・ゴースト】


  Lv.307

  MP???/???

  STR ???

  VIT ???

  DEX ???

  AGI ???

  INT ???


  特性【物理無効B 水属性無効S 言語理解S】

  物理攻撃に対して50%無効 

  水属性物理魔法攻撃に対して70%無効

  人の言葉をとても理解できる


 ====================


「……レベル、上がってるし」


「しかも、【物理無効C】が【B】にランクアップ、【言語理解S】まで習得してますよ……」


 人間がレベルアップするためには、モンスターを倒す、体を鍛える、そして何かしらの経験を積むこと。この世界でのルールであり、ヴァルハラに住む人間なら誰でも知っているようなことだ。


 レイン・ゴースト達が今回レベルアップした理由は――やはりウサギ屋での経験を積んだことだろう。職業経験値はモンスターを倒したり体を鍛えたりするより、もらえる数値は小さい。ただ、パーティーを組んだ状態だと【パーティーボーナス】でコンビなら1.3倍、トリオなら1.5倍、更にカルテットなら2倍の経験値を得られる。つまり知らず知らずに【レイン・ゴースト】達は【パーティーボーナス】でほぼ毎日経験値を貰い、日に日に成長していた。


 これが――結果である。


「レベル300のユニークモンスターが働くお店って……」


「……俺の家は魔王城かっ!?」


 主人とシスターの苦悩を知ってか知らずか、レイン・ゴースト達はレベルアップのご褒美に、また【魔力糖】をちょうだいちょうだいと宮兎に抱きついてお願いするのであった。


 もちろん彼らに激甘の宮兎が悩みながらも彼らにご褒美を与えたのは言うまでもない。ちなみにアスティアは放心状態で「ああ、どんどん冒険者より強くなっていく……」と力なく呟いていた。

今回で商品開発部編は終了ですね。

いやー、やっぱレイン・ゴーストがヒロインでいいので(


次回からは【死霊魔術師編】です!

死霊魔術師――ネクロマンサーって誰だよ、って読者の気持ちにこたえると名前だけのあの人ですよ!


あ、ブクマ7700人の時「7777人」の方が良かったのではといわれて、後悔してます。はい。

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