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18話 見習い少女、絶望の前触れ

わー、短くてごめんなさい!

※ブックマーク6600人突破です! ありがとうございます!

 ウサギ屋の売り上げは近頃安定して1日、6万から7万ゴールドほどになった。店内に誰も居なくなる時間が増え、今も宮兎は暇といわんばかりにバックルームで新聞を広げていた。この日はアスティアとのデートを終えた次の日である。そして、ティナが出発する1日前だ。


「スタイダスト中でモンスター達に異変? 騒ぎになり、騎士団人手足らず? 昨日、そんなことあったっけな……?」


 新聞を広げ、【語学力SS】のエンチャントが施された伊達メガネをかけて記事を睨む。事件の発生した時刻を確認すると、アスティアとレストランでコーヒーとクッキーを食べ終え、一緒にウサギ屋へ帰ってきた時間帯だった。外が騒がしいとは感じなかった。首を傾げつつ、読み進めると騎士団が確認しているだけでも4件同時だったという。


「北の区の【番犬オルトス】、西の区は【配達タートル】、東の区は【門番ゴーレム】、中央区――中央広場付近で【魔車のジャイアント・ホース】がそれぞれ暴走。理由はそれぞれ違うが、必要以上に興奮した状態だったという。騎士団達は四件同時の事件に、人手不足を感じると……なんだかスタイダストも南の区みたいに物騒になってきたな」


 記事に載せられたモンスター達はどれも人間の仕事を手伝うために調教されたモンスター達だ。【番犬オルトス】は騎士団と共に見回りなどをする首が二つついたドーベルマンのようなモンスター。【配達タートル】は手紙などの配達物を郵送するための足として使われる。巨大な亀だが、走れば時速60キロも余裕で走る。【門番ゴーレム】はスタイダストの門を守る巨大なゴーレムだ。体が門のような構造をしており、ほとんどの成分が石である。そして【魔車マシャのジャイアント・ホース】はバスを思わせる座席が入った巨大な車輪つきの箱を引いて運転するモンスターだ。


 どのモンスターも大人しく、何かしら興奮する要素があってもすぐさま我に返れるほど精神力が高い――十分な知力が備わっているとされている。ウサギ屋のマスコット【レイン・ゴースト】に多少は遅れをとるとはいえ、人の言葉も理解できるほどだ。


 そんなモンスター達が暴走――宮兎はどうもひっかかった。


 すると裏口がノックされ、恐る恐るドアが開かれる。誰が来たのだろうと立ち上がって裏口へと向かった。


「アスティア?」


「そ、そうです……」


 訪ねてきたのはアスティアだった。いつもの修道服に戻り、内心今日もワンピースで来れば良かったのにと宮兎は思ってしまった。だが、彼女の顔色が優れないことをすぐに察し、急いで駆け寄る。


「お、おい。顔色悪いぞ? 風邪でもひいたか?」


「ちがうんです…………、こう、なんだか良くないものが……。肌がピリピリして気持ち悪い気がして」


「気持ち悪いって、やっぱり何か病気じゃないのか?」


 とりあえず、肩を貸して二階へ移動する。階段ではアスティアを背負い、そのまま客室まで向かう。一旦、ベッドに寝かせて急いで一階へ戻った。バックルームから顔を覗かせるとお客は片手で数えられるほどだ。レジでもモーノが暇そうにふわふわと漂っている。


「モーノ、ちょっと悪いけど席はずすぞ。アスティアが調子悪いみたいだ。誰とも連絡取れずにここまで来たのかもしれない。様子を見るから、なにかあったら二階まで呼びにきてくれないか?」


 ラジャーっ! と、答えるように敬礼する。宮兎も微笑んで頷いた。顔を引っ込めると、真剣な表情に戻り駆け足で客室まで戻る。ドアを開くと、アスティアは荒い呼吸で、こちらを見つめていた。


「すみません……そんなつもりじゃなかったのですが」


「気にするなって。何か飲み物とかいるか?」


「いえ……。本当に、途中までは元気だったのですが。突然寒気と今まで感じたことのない不安に襲われて……」


「不安?」


 腕を組んで、ヴァルハラで発症する病気を思いつく限り考えた。元の世界とは違い、馬鹿みたいな病気があるから異世界は恐ろしいと宮兎は当時思っていた。例えばだが、宮兎がヴァルハラではじめてかかった病が【パッチリ病】である。瞼が2日間閉じることができない恐ろしい病気だ。瞬きすら許されないため、処方の目薬をひたすら垂らし続けなければならなかった。思い出すだけでも宮兎は震えが止まらない。


「やっぱり病気なんじゃ……」


「でも、なんだか不安と恐怖がずっと背後に居るような……。私、怖いです……」


「うんー、ちょっとセルフィさんにでも相談するかな……」


「その必要は、ない、です……」


「え? どうして?」


 アスティアは真っ青な表情でメニューを開き、【コール】の着信履歴を選ぶ。そこにはずらっとセルフィの名前が書かれていた。宮兎は嫌な予感――そんなはずはないだろうと、アスティアを見る。


「留守番も入っています……。どうやら、先ほどからセルフィが私にかけてたようです……。ちょっと取れませんでしたが……」


「無理して取らない方がいいって。それより、留守番の内容は?」


「えっと、再生します……」


 履歴の一つを選び、アスティアは再生を指示する。宮兎にも聞こえるようにアスティアは設定をいじる。音量を上げて、部屋全体に響き渡るようにした。


『アスティア! 聞こえるアスティア! なんかヤバイ気配がしない! シスターのみんなもバッタバッタ倒れて大変なの! あたしは何とか平気だけど……アスティアも体に変化はないの? できればすぐに返信頂戴、よろしく!』


「シスターがばったばった?」


「………次いきますね」


『アスティア!? 本当に大丈夫なの!? お姉ちゃん心配で心配で……。今すぐそっちに向かいたいけど、みんな倒れて、手が放せないし……』


『おい、セルフィ! ちょっと手伝ってくれ!』


『あ、今すぐいくねダーリン! じゃ、また後でコール飛ばすわね!』


「え? なんか今ダーリンとか言ってなかった?」


「……セルフィもおかしくなっちゃったのでしょうか?」


 セルフィの【コール】――後ろから男性の声が聞こえたが、あまりにも遠すぎて声では判断できない。答えはもちろん【オニガシマ】の店主、キキョウ・クチナシで間違いはない。彼は昨日しつこくセルフィに追い回され、コールの連絡先を交換。今日とて、人手が足らないと泣きながらお願いしたのだ。


「うーん、まあ、シスターがみんな一斉に倒れる……。魔王復活とかいわねえだろうな?」


「流石にそれは……いまごろ街は大騒ぎですよ」


「確かにそうだな」


 宮兎の考えでは、魔力を感じ取れるシスターが何かしらの【異変】を感じ取ったと考えた。だが、今のところギルドからの緊急招集や、スタイダストの警報鐘がならない。つまり、風で何かしらのユニークモンスターの魔力がスタイダストに流れ込んできたのではないかと推測する。討伐された時、若干ながら魔力が風に乗る場合がある。今回がその事例ではないか――なら、アスティアの体調不良も時期に治るだろうと思った。


「ま、調子が良くなるまで寝てろよ。【レイン・ゴースト】達に任せっぱなしってのも流石にわるいからな。大丈夫か?」


「はい。そもそも、こんな状態で来た私が原因ですので……。申し訳ないです」


「謝るなって。そんじゃ、しばらく安静にな」


「はい」


 それから一時間も経たずにアスティアの体調は回復。やはり、不浄の魔力の影響だろうと宮兎は納得する。セルフィにも連絡をとり、他のシスター達も問題はないと知らせてくれた。


 この――ティナ達が出発する前日。


 これが絶望の前触れだと――誰が予想でできただろうか。

今回短くて本当にすみません。

明日はちゃんと書きます…。


さて、感想やメッセージで多くの方々から修正に対するアドバイスをいただきました!どれもこれもすばらしい案で、感謝しております。


しばらく修正はしませんが、できる限り矛盾をなくせたらと思います。

大幅な変更がある可能性は0ではありませんが、物語に支障をきたすようなことにはしませんので、ご安心ください。


今後ともウサギ屋をよろしくお願いします。

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