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今日から学校と仕事、始まります。①莞

熱帯の凍え

作者: 孤独

寒い。


電波時計に記される温度表記。あれは正しいのだろうか?30度を越している。この部屋は30度を越している。

そんな馬鹿な。カーテンで窓を閉ざし、ドアを閉め、光を閉ざしたこの部屋が熱いわけがない。僕は咄嗟にネットの天気予報を震える手で開いた。そこに記されていたのは最高気温、34度だった。

最高気温並か。いや待てよ。最高気温は今日叩きだす最高の気温という意味で、常に34度なわけがない。この部屋が30度であり続けるのはありえない。



いや、違う。



僕は寒さを感じているんだ。謎の寒さを感じている。熱いことに疑問を抱くのはおかしい。

どーしてだぁぁ。なんでこんなに熱い部屋にいて、俺は汗を掻かないんだぁぁ。どーして、体が寒いと思っているんだ。

分からない。分からない。

唾を飲み込んでもう一回、この部屋がどうして寒いのかを考える。クーラーは切った、冷え性には辛い。あとは何がある?

パソコンのファンが強力だからか?だからか!?



「ファンが強いからかあぁぁぁっ!!」


僕専用のパソコンを起動時にも関わらず叩く。ファンの前で口を空ければ汚い埃が入っていく。この風は違う。温かい。


「なんでだ。なんで、寒いと感じるんだ」


電波時計の温度計は34度を記録した。分からない。もう汗もかけない。腐った匂いのするパーカーにパンツにジャージの姿の僕。


「寒いよぉっ」



どうしてこんなに寒いのだろう。この部屋と僕の周りの人達はどうして、冷たいんだろうか。

寝転がっても寒いままだ。僕の体はどうして冬のような寒さを感じているのだろう。




……………



「立早さん。ちゃんと食事を摂らせてましたか?部屋に引き篭もり、あげく飯を与えないとは教育以前の問題です!」


教育ってなんですか?弟はもう


「20を超えているんですよ。自立できないなんておかしいです。救急車を呼ぶ始末になったし。会社で缶詰にされてるんです」

「汗をかけないほど、食事も飲み物も与えず部屋に閉じ込めるなんて、狂気の沙汰ですよ。家族の監督責任です」

「あたしは仕事してるの!!両親の面倒も見てるの!なんで引き篭もりになった弟の面倒まで見なきゃいけないの!!?あーもぅ、余計なことするから出社したら当分会社から出れなくなっちゃうぅっ!」



そりゃ寒いと感じるだろうね。

2日ほど飲まず食わずでネットに嵌っていたら……



姉は救われない。弟も……以前と変わらず引き篭もっている。


みんな冷たいのも変わらない。


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