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藤巴の野心家  作者: 北星
7.5章 富国の刻
95/105

73話 山名君頑張る 1

忘れない内に書いておこうと……。

 「今から殺し合いをしてもらう」


 あ、どうも。山名です。義親です。

 いきなり置塩城に連れて行かれて、とんでもない事言われたんですけど、どうしたらいいんですかー!?

 母里教官!隣の細川さんが既に泡吹いて倒れそうなので介抱の為抜けていいですか!?


 「ああ、語弊があったな。これは訓練だ。ただし、実際に軍と軍で戦ってもらう」

 「教官。発言宜しいでしょうか?」

 「山名か、いいだろう。許す」

 「つまり、これは以前行った物と同じ、実戦に準じた訓練という事でしょうか?」

 「つまりはそういう事だ」


 どういう事なんですか……。


 「毛利を降した今、我々は主だった軍事行動を控える予定だ。だが、実戦の勘を忘れてしまってはならぬ。それに加え、新たに加わった者たちや今まで主だった行動を行えなかった者たちの底上げを行いたい」


 そう言って母里教官は困惑するボク達の前で参加する者たちの名前をつらつらと挙げていきます。休夢様、波多野、塩冶、衣笠、淡河、三木、有馬、備前明石、備前伊賀、七条赤松、南條、尼子、江見、吉川、小早川、宍戸、殿……。

 

 ……なんか時折凄い所混じってませんか?旧毛利の吉川、小早川、宍戸辺りは仕方ないとして、休夢様とか淡河さんとか塩冶さんとか黒田家でも一流所じゃないですか。それに、それ以外の者たちも、元が元ならばその地方で鳴らした人たちばかりなんですけど。

 しいて挙げるなら、山中さん不在の中、旧尼子家中随一の猛将、江見さんを独立させられた尼子さんが一番弱体化している気がしますけど。

 最後にボソリと言われた方については触れない事にします!絶対に!訓練用の木刀で兜を叩き割ったり、人をポンポンと素手で投げ飛ばせたり出来る人なんて知りません!もし仮に当たったら……。


 それはともかく、以上の者たちに各200づつの兵を率いさせ、実戦まがいの訓練を行うそうです。そして、黒田家直轄からはボク達が代表らしいです。


 ……他人事みたいですけど、人死にますよね。普通に。前回は奇跡的に死者は出ませんでしたけど、負傷しなかった者なんていなかったですよ?前回の相手が殿と馬廻りだった事を考えると本当に奇跡だったと思います。


 「攻め手と守り手に分けられ、今回、お前たちは守り手側としてこの城を護ってもらう。そして、どこと当たるか、どこへ攻めるかは籤で行う。そして、今回、お前らに相手がどこかは知らせん」

 「「「うぇっ!?」」」

 「言っただろう。実戦だと。斥候を怠るなよ」


 うわー……という事は、事前情報から対策を練る事が出来ないわけですか。たとえばですけど、塩冶さんに対しての対処法と、休夢様への対処法だけでも全然違うんですけど。


 「勝ちの条件は」

 「相手が負けを認めるか、あるいは敵大将の捕縛。無論、負傷についての判断の為に軍監を複数付ける。軍医も同等」

 「兵糧は」

 「兵糧はひと月分。本来ならばありえぬ事だが、今回は費用も均等にする。訓練である以上、略奪の類は禁止するが、買い求める事は許される。資材もその条件に準じる」


 かつてない程の長丁場になりそうです……そして、費用まで割り当てられるという事は、城の守りを固めるか、あるいは兵糧を増すかで大分戦局が変わってきます。それに対して、攻める側はほぼ兵糧に割り当てる事が出来きます。条件としては守り手不利です。それはおそらく、同数の通常の攻城戦が守り手有利だからこその条件でしょう。

 兵糧攻めまで念頭に置かないといけない訓練って……。


 それと、もう一つ重大な疑問が。


 「えっと……教官。誰が指揮を執るんですか?」


 不本意ながらも実戦を一番踏んでいますけど、ボクは嫌です。理由は、前の殿との演習で指揮を執ったのですが、心折れそうな程やられたからです。いずれはこの失態を取り返すつもりではありますが、まだその時ではありません。

 絶対に殿に勝ちます……いずれ。


 けど、明らかに勝ち戦の経験が無い細川さんの下で戦うのもヤです。ボクだって戦国の男ですからやるからには勝ちたいのです。名門山名、そして母里武兵衛の義弟としての看板もあるので余計そうです。けど、そもそも、ここに集められた全員、同格ばかりで抜きん出た者がいないじゃないですか。


 あ……1人思い当たる人がいます。新しく入ってきたばかりですけど、次の馬廻り候補に間違いなしと言われている方です。けど、あの人本当に影が薄いからなー……。

 どこ行ったんだろ?しなのんさんと呼ばれている荒木さん……アララキさんでしたっけ?元池田家の。出番ですよー。


 「安心しろ。その件については既にお呼びしてある」


 母里教官が合図をすると、ボク達が集まっている城の広間に2人の少年が姿を現した。少年といっても、元服していないだけで、歳はボクとそれほど変わらないんですけど……。

 いや、確かに才能はボクたちも認める所ですよ?彼らの兄って揃ってアレですもの……英才教育とかそういう段階を飛び越えた選りすぐりですよ?

 けど、なんでしょう……戦う前に勝て、を徹底して叩き込まれてきた身として、「勝った」と確信できない事がこんなに不安だなんて想いもしませんでした。


 「大将を務める事になりました、黒田小一郎です」

 「……補佐、毛利四郎」


 でもまあ、不安より色んな意味での期待の大きい人選なので、あえて言っておきましょう――。


 キタコレ。



小姓三人衆の反応


小六<情報方は基本軍鑑。高みの見物。

小一郎<羨ましい……。

四郎<大体、やかましい方の兄の所為。


ちなみに相手が誰になるかは本当に籤にしようと思ってます(籤やガチャで妙な所を引く事に定評のある作者)。

もし、吉川相手だったら山名君の出番が四郎に食われるなーとかマジで危惧しています。


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