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藤巴の野心家  作者: 北星
7章 嵐を駆る者
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65話 エモノがいたぜ!

 黒田隆鳳


 えー……はい。姫路に一度立ち寄って小夜と子供たちと一夜の団欒を過ごしましたけど、結局すぐ毛利戦線に戻ってきました。

 俺の扱いってなんでせうか?黒田隆鳳さまだよーっ!


 ……本日も雨です。農家暮らしの時は雨がありがたかったけど、もぉええっちゅーねん。


 え、あ、はい。状況ですね。えー、毛利との戦は継続中です。まず、山陽道の本隊は一度動きがありました。VTRをどうぞ……あ、流れないな。ゴメンナサイ。一度姫路でテンションとシリアス度をデフォルトしてきましたもので。そうしたら、気が付かなかったこの疲労感が……正直失敗した。けど、後悔はしていない。


 それでは、改めて状況だ。


 山陽道では膠着状態から、宇喜多の義父が一度本格的な野戦を仕掛けた。当初は俺が残して行った弥三郎おじさん率いる第一軍が底、左翼に義父殿、右翼に美作から駆け付けた七条赤松の爺さん、という配置で鶴翼を展開。それに応じるように兵数の多い毛利も鶴翼で応じ、両翼がぶつかり合った所で、逆さ魚鱗になるような形で第一軍が正面から突入。中央からの猛攻に耐える為、敵方両翼が掩護に駆けつけ、敵陣が崩壊し、勝利を収めたとの事だ。


 ただ、負けても流石の毛利。まだやや不慣れな所がある、爺さんと正対していた小早川が、僅かな隙を見逃さずに部隊を巧みに散らし、そこで生じた隙を見逃さずに毛利元就が軍を退かせたとの事だ。その霞を掴ませる様な見事な指揮ぶりは残っていた馬廻りの連中すら度肝を抜いたらしい。


 まあそれもそうだ。お互い力比べのように渾身の力を振り絞ってぶつかり合っていた状態から、一方が急に力を抜いたらやられた方は前につんのめる。原理としてはわかるが、今まさに突入されているその時に軍を散らすなんて真似が出来る奴がいるか?


 まぁ、なんつーか、勝ったけど一杯喰わされた、そんな感じだ。現在は備後まで食い込んで神辺城の近くで睨みあっている。どうも俺のやり方を真似たらしい毛利隆元が補給拠点として居た際に結構な要塞にしたようなのだが、毛利本隊はあえてその城に籠っていない。


 籠ったら一気に後方をぶち抜くのが俺達の常套手段だからだ。そして、俺自身も総指揮を執る宇喜多の義父に侵攻の許可を与えている。東がひと段落した事で、本格的にシフトを入れたのだ。今まさに覚醒した『謀聖』が『謀神』相手にどこまで行けるか――。


 山陽道は山陰道と名前を入れ替えた方が良いと思う……。


 そして、西に戻ってきた俺だが。


 「で、出雲こっちに来たと。元気だね……隆鳳」

 「うん」

 

 座右の銘は「鬼出電入」……上杉師匠より頂きました。俺様の天衣無縫伝説は終わらない。姫路から一路山陰道を進み、そしてやって来ましたスサノオのおひざ元、出雲国。こちらに出張っている友にぃと米子の辺りで合流すると「何でここに居るの!?」と驚かれました。


 まあ、あれだ。状況を簡単に説明すると。


 第三軍に 不 明 な ユ ニ ッ ト が 接 続 さ れ ま し た 。

 

 やるぜー、超やるぜー。

 あ、これ官兵衛から貰った作戦書ね。


 「山陽道で敵主力を引きつけ、山陰からの吉田郡山城強襲……あのバカ。こっちはギリギリの所を捌いているんだから、そっとしといてくれよ……」 

 「友にぃ、本音出し過ぎ」


 相変わらずの面倒くさがりでちょっとホッとするよ。まあ、そういう人程いざって時働くんだけどね。


 「でも、隆鳳が来たって事は、吉川は任せていいのかな?」

 「ああ。むしろ俺としては吉川そっちの方が本命だったりするし」

 「……少し同情するよ。何か企んでるって顔してる」


 え、別に企んでないよ?ウチで預っている毛利四郎はしっかりと教育しているけど、まだ態度が固い。ここにもう一人ぐらい身内がいれば気が楽なんじゃないかなーって思っただけで。拉致るだけですよ。

 それに、毛利が誇る最強の武将。俺が相手しないで誰が相手する。将棋で言えば吉川は飛車、更にその先には銀(山)と王(吉田郡山城)が待つ。官兵衛に言われずとも俺が来るわい。


 「状況は?」

 「毛利方の最前線、白鹿城(松江)にいるよ。立原と南條が抑えに行ってる。で、将監がここら辺」


 友にぃが取り出された地図を大雑把に指で囲う。丁度、吉川元春の兵站線を全部切る辺りだ。

 最前線に入らせて、背後を断つように吉岡将監のゲリラをばらまくか。エグいぜ……。

 つーか……。


 「詰んでるじゃねぇか、吉川」

 「そうでもないよ。最近は意地でも突破されてる。捕えた者からの情報だと、なんでも毛利の若様が直々に選抜して送り込んでるみたい。腹心の志道しじ上野介の姿も確認されている」

 「ここでも顔を出すか、毛利隆元」

 

 地味だけど有能なんてもんじゃない。即席で山陽道と山陰道の兵站線を同時にもたせるとか、ウチでも出来る奴はおやっさんと藤兵衛ぐらいだわ。

 

 「それに、志道って確か『あの』毛利陸奥守の軍師だったか。聞いたことあるぞ」

 「それは先代だね。毛利陸奥守の軍師にして名宰相。そして毛利大膳大夫の後見だった人でもある。当代はその孫だよ」


 もう既に兵站の極意を掴みかけていらっしゃる……そんな大物をよく後方支援に使えたものだ。これは下手を打つと長引くな。


 「なら、早急に俺は行くとするか」

 「そうしてもらえると助かるね。他の城が落としやすくなる」

 「毛利に獲られていた旧尼子十旗、きっちり奪い返しておいてね」

 「……任せてよぉ」


 面倒だってわかるけど、そうベソかくなよ、兄ちゃん。

 今まで楽しようとしてきたツケだ。

尚、団欒の様子。


隆鳳「ガッ……じ、二郎……いい蹴りしてる、じゃねぇか……いい武将になるぜ」

小夜「…………!?りゅ、隆鳳さま!?傷が開いて……!?誰かー!!」


隆鳳、次男の蹴りを見事に怪我していた脇腹に喰らって再負傷。

うん、ほのぼの。

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