11話 野心家の鼓動 再始動
今回予告
小寺藤兵衛 覚醒
1562年 8月 姫路城
前回の戦から半年以上が経つ。ようやくと言うべきだろうか、西播はほぼ完全に掌握した。
だが、事態はあまり芳しくない。
中国地方の勢力争いと言えば、毛利と尼子。尼子の当主だった尼子晴久が先年死んでから、この戦いには決着がつきつつある。つまり、中国地方は毛利一強の時代だ。
もう一つの懸念の材料である織田信長の動向。近隣の勢力ではないので、官兵衛は不思議な顔をしていたが、これを注視している限り、まだ奴は美濃攻めの真っ最中。昨年、墨俣一夜城の噂を聞いた。まだ、竹中半兵衛の話は聞かないが、甘く見てもあと数年と言う所だろう。
その事を踏まえて我が身を振り返ってみる。
まだ、一国の支配もなっていない。播州は大国とはいえ、まだ半分。現代で言えば、兵庫県の4分の1程度だ。同盟相手である宇喜多直家と合わせてようやく一国分ぐらいになる。
この状態で農閑期まで待てるのか……正直焦る。焦っても仕方ないのだが、焦る物は焦る。史実通り流されて家族を殺された俺にとって史実通り動くつもりなどサラサラない。
兵卒は育ってきた。量を増やす事よりも、質を高める事で精強無比の軍が揃いつつある。
軍備はまだ途上だ。おやっさんと小寺藤兵衛が尽力し、各地から揃えている事に加え、ようやく庇護した職人らからの生産も始まったばかりだ。
将に関しては……出たとこ勝負な所が多い。事、軍を率いるとなると、その将が信頼できるかどうかも掛かっている。
安心して兵を預けられるのは、官兵衛、武兵衛の二兵衛。おやっさん、休夢の禿親父、友にぃといった一門衆。他には最近兵の教育、監督役を一手に任せている鬼軍曹、母里小兵衛。最近は俺の股肱の臣となりつつある櫛橋左京。采配に関しては再修行中の赤松弥三郎おじさん、今はまだ他勢力になるが宇喜多直家辺りとなる。
これから小競り合いでは無く大勢力同士の争いになっていく上で、これだけの将兵で足りるのかどうか……足りねぇよ。
着実に育ててはいるつもりだ。だが、これから先は単なる訓練だけでなく、度重なる実戦を踏まえるしかないだろう。それは、先の戦いで武功一位に輝いた櫛橋左京の例からも言える事だ。それまでは二軍扱いだった奴は確実にあの一戦で覚醒した。
立ち止まるわけにはいかない。
「じゃあ、軍議を始めよう」
俺の一言で、集まった人間らの表情に緊張が走る。定例の会議の場であるが、俺は今回、会議、ではなく、軍議、と言った。それだけで察した人間が多いようだ。
メンツは他の城を任せている禿と友にぃ以外は揃っている。その代わり、現場の部隊長格の人間と、何故か―――と言っては変か、宇喜多直家と又七郎殿が加わっている。彼らと共同戦線を張る為に、惜しみなく手の内を晒すつもりで俺が呼んだ。
「まず、俺達は出来れば年内には播州統一を目指したい。現状の敵は、」
「置塩城の守護赤松とそれに与力する上月城の赤松一族、東の別所氏の同盟軍。あと、彼奴らとは関係ないが、浦上」
俺の視線を受けて官兵衛が言葉を紡ぐ。宇喜多直家が居ようが、その主家である浦上に対しての方針はもはや決定的だ。
一応、宇喜多を介して同盟を組んでいる相手であるが、俺達としては宇喜多と同盟しているに過ぎない。
「義父上は?」
「今更隠す事でも無いが、私は浦上と手を切るつもりでいる。それ以外に敵対する相手と言えば、同じ備前の中で尼子に与力する松田氏。その更に西、備中の三村氏だね」
「尼子の勢力が弱まっている今、即座に浦上とは手を切らず、某らは松田氏を落とすつもりです」
「昨年、松田方の穝所元常を殺し、その居城である龍ノ口城を奪取。西への足がかりを手に入れました」
「当家の長船又三郎の進言により、男色に目が無い奴に美麗な小姓を送り込んで暗殺しました。これを足掛かりに松田氏を崩します」
「お、おう」
……やべー。なんつーハニートラップだ。見た目は年齢不詳の優男なのに、エグい手を打ちやがる。まるで宇喜多直家みたいだ。
そして、殺す為に男に抱かれろと言われ、見事遂行する執念。コイツら敵に回したくねぇな。
「実は、婿殿と会う前は、松田氏に小夜を嫁がせ、講和し、その後に殺す腹積もりでした」
多分、その時小夜も諸共に殺す腹積もりだったのだろうな。結果として彼女は俺の嫁となったけど、それで彼女も救われたと思えば、何も問題は無い。直家に殺される様な君主で無ければと、兜の緒を締める心地だ。
「義父上の忌憚のない言葉、忝し」
「いえ、こちらこそ」
「それでは、宇喜多はこれから西に向かうつもりだと?」
「黒田家という頼もしい味方を得た以上、浦上と手を切る時もそう遠くはありますまい。ただ、その前に某らも地盤を固めたいと思います」
俺が直家に頭を下げている内に、官兵衛が飛ばした質問に又七郎殿が丁寧に答える。確かに今の所、宇喜多氏はそれほど大きな勢力と言う訳ではない。これから下剋上を成し遂げていく上で、地盤を固める事は重要だ。
なにせ、浦上は凋落気味とはいえ、過去に2万も動員した事もある。俺が総動員して1万に届くかどうかという事を考えると、もう少し力が欲しい。
「その事なんだが、守護を討つ上で、足並みをそろえてもらい、宇喜多に上月城をくれようと思うのだが、兵を分ける事はできるか?」
「願っても無い申し出ですが、何故?」
「先の戦いで俺達は室山城を獲っちまった。その補充という意味合いと、今後の版図拡大に向けた餞だ」
上月城は播州の北西部にある要衝の城だ。史実では山中鹿之助らが見殺しにされて最後を遂げた城として俺も知っている。上月城からならば、美作に侵攻する事も、その先の日本海側に抜ける事も容易くなる。
これを譲るという事は、かなり戦略的な部分を放棄する事になるが、その分、贈り物としてはこれ以上無い物のはずだ。
「いいのですか?上月城の城主は婿殿の叔父御のはずですが……」
「突然湧いてきた親族なんて知らねぇよ。使える人材ならば使えばいいし、使えねぇなら煮るなり焼くなりすりゃぁいいさ。俺ぁ、目の前に居る、共に手を取るに足る身内を優先する」
「それに、俺達が今上月城を奪うと、必然的に浦上と全面衝突する事になる。それは和泉守(宇喜多直家)にとってもあまり嬉しくない事態のはずだ」
この件については既に官兵衛とは殴り合いの末に話がついている。官兵衛は大分渋ったが、まだ浦上と事を構えるには早急だという結論と、二方面作戦の難しさを先の戦いで感じた今は、因縁を残した別所に集中したいという事で落ち着いた。
しかし……慣れたとはいえ、前回のように鎧を付けていなかったから、今回の説得は痛かったぜ。官兵衛の奴、レバーを集中して叩いて来やがったからな。
「成程……わかりました。年内と言いましたが、時期はいつ頃を?」
「定石を踏まえると、農閑期まで待つつもりなのだが……おやっさん、兵糧は?」
「まあ、もたない事は無い。ただ、稲刈りの時期に人を取る以上、次の年が厳しくなるな」
くっ……全て貧乏が悪いんや。
「えー、その事なのですが、一つ提案が」
「珍しい。なんだ、藤兵衛」
軍を動かす以上、どうしても兵糧軍費の事は欠かせない。その為、内政官の親玉としてこの軍議に参加していた小寺藤兵衛が手を挙げると、皆が驚いた様な表情をした。
だが、なんでだろうな。すげー頼もしく感じる。
「既に姫路城下の再開発が始まり、また、殿が細川と赤松の係累という噂など、当家の噂を聞きつけ、堺の商人らからの献金、援助の申し出が相次いでおりましてな。えー、そこでですが、今年の年貢を緩和する事で凌げないかと」
「……成程な。それは、内政に携わる者としての計算に基づいたものか?」
「無論。あとは許可さえ頂けたら、いくらでも捻出しましょう」
つまり、生産だけではなく、売買で凌げと。
米転がしとか、ここに来て藤兵衛が覚醒しやがった……っ!褒美に南蛮商人から眼鏡でも手に入れて贈ってやろうか。
その兆候は黙々とそろばん弾いていた頃からあったが、これはありがたい傾向だ。だが、この様子だと二番底があると思うんだが。
「……話はそれだけか?」
「いえ。あと二つ。一つは海賊衆の懐柔。塩飽衆、それと村上水軍ですな」
「塩飽はともかく、村上は毛利の傘下だろう?」
「いえ、調査によると、村上水軍は能島、来島、因島の三つの勢力に分かれます。その内、村上武吉率いる能島村上のみ毛利とはまだ距離を置いてます」
「……勝算は?」
「報酬次第ですかなー」
毛利水軍の代名詞、村上のぶきっつぁんだぜ。安くはねぇな。
これは、俺自身が行くべきか……報酬は、
「妻鹿城。市川の河口にある、水軍創設の為に、俺の直轄にしていたあの城。それに加え、これから広がる版図も加え、この一帯海域の艘別銭徴収の権利だ」
「大胆な報酬を出すな。特に妻鹿城は儂ら黒田家が姫路を貰う前に居城にしていた城だぞ?」
「それで村上武吉が味方になるならば、安い。一族一党率いてこっちに来てもらう事になる以上、報酬は妥協できねぇ。藤兵衛、一度渡りを付けられるか?会いたいと言ってくれ」
「塩飽より、村上を優先で?」
「構わない」
「えー、では、その件については、馬廻りの内、何人か使者としてお借りします。あと、一筆いただきたく」
「わかった。用意しておこう」
妻鹿城はおやっさんのお袋、つまり官兵衛のお婆さんの一族が治めていた城だ。この姫路の近くを流れる市川の河口にあり、海に近い。
俺の挙兵の時には黒田の御隠居が居たのだが、御着崩れのあとぐらいに、こちらに帰順し、今は妻鹿城を明け渡して、この姫路の近くでのんびりと暮している。
実はあの妖怪爺、まだ生きていやがるんだよな……時折、ひっそりと俺の所に来ては子はまだか、と言ったり、官兵衛に早く嫁をとれ、と言ってきたりしてきているが。
「水軍の件はこれでいいな?次はなんだ」
「はい。置塩城を陥落させた後、但馬への侵攻を進言します」
「但馬……山名か。その心は」
「えー、はい、この姫路から、市川に沿って北上すると―――」
「生野銀山かっ!?」
弾かれたように声を挙げるおやっさんに向け、藤兵衛はコクリ、と頷く。
「最近接触してきた堺の今井宗久。そこから話が来ています。銀山経営に対しての利権を見返りに、当家への援助という話が。堺の商人からの話ではこれが一番魅力的かなーと」
一つの商家に全てを任す事はリスクが高いので、少し条件面での調整が必要になりそうだが……とんでもねぇ物ブッ込んで来やがった。
今井宗久か。油断したら後ろから刺されそうだが、確かに魅力的にも映る。銀山に限らず、鉱山のある無しというのはかなりでかい。
ウチが貧乏ながらもやりくりできているのは、この播州が鉄の産地であると共に、西日本随一の穀倉地帯だからだ。地勢の影響というのは馬鹿に出来ない。
しかし、藤兵衛……そんだけ優秀なのに、なんで、たった二人に屈したんだ、お前。
「……官兵衛」
「なんだ?」
「戦略、能うるか?」
「貴様もこの眉唾物の話に乗る気か。面白い」
俺「も」ってなんだよ。お前も乗る気じゃねぇかよ、と思ったが黙って頷いておこう。
実に俺達向きの無茶苦茶な状況だ。
「宇喜多と同調して置塩を落とす。その後、軍を分ける―――それしかないだろう」
「だよなぁ。結局軍を分けるのか……」
「隆鳳。お前なら生野から丹波を獲れるか?」
「年内で!?半年もねぇぞ!?」
馬鹿だ、馬鹿がここに居る。目が銀でくらんじまってるよぉ。
銀山奪取ついでに丹波平定とか、鬼か!?ところで大江山って丹波だっけ?丹後だっけ?
「待て待て待て!待て!官兵衛!」
「無論、一気に全部獲れとは言わん。だが、別所と構えている最中に横から銀山を獲られても困る。それに丹波は細川京兆のかつての支配国―――名目もある。だから、潰せる奴は潰せ」
「それで、浦上の押さえはどうすんだよ」
「その件だが、もしよければ、私が消すよ?」
「…………………………………」
その言葉は洒落にならねぇっす。宇喜多の直家さん。
消すってアレですよね?アレ。
「毒殺でよければ」
「ですよねーっ?!」
「婿殿の所には、浦上政宗の子がいるしね。だから彼を寄越してくれれば、名分も立つ。ただ、毒殺した後、間違いなく報復されるから、即座に助けに来てくれたら嬉しいな」
あざとい……素なんだろうけど、その言い方はあざといぜ、義父上。
あれ……おかしいな。最初の戦略はもっとまともだったんだ。それがどうしてこんなカオスになった?頭がいい奴らが悉く手のひらクルーッてなってやがる。
多分、藤兵衛の投下した燃料の所為だけど、提案自体は凄くまともだしなぁ。
その燃料が投下されたなれの果てが、村上水軍調略して、生野銀山奪って、丹波侵攻して、別所と事構えて、宇喜多救出?まともじゃない。おかしいぜ……ヒートアップする三人以外、タイト過ぎる行程に青ざめている理由がよくわかる。
「嫁と離れたくなくて臆したか、隆鳳」
「……あ?」
今なんつった?官兵衛。
「まともな戦略じゃ、貴様には似つかわしくないと考えたが、所帯を持って腑抜けたか?」
「……言ってくれるじゃねぇか!官兵衛っ!!」
「俺達は天下を目指すんだろう?貴様は、夢を夢で終わらすか。西播で終わらせるか」
激高した俺に胸倉を掴まれながらも、官兵衛の言葉は止まらない。
「先ほども俺は言ったが、全てを一気にやれとは言わない。半年とも言っていない。だが、遅れてやってきた俺達は神速をもって天下に覇を挙げるべきだ。無茶でもいい。笑われてもいい。だが、足を止めたら終わりだ。貴様だってわかっているはずだ―――隆鳳」
「…………上等じゃねぇか。そこまで言うなら、どんな死地だろうと、俺が先陣切ってテメェら丸ごと天下まで連れて行ってやる」
「ああ。そうだ。貴様が先陣切って進め。定石などぶち壊せ。貴様が先陣を切らないと、俺の軍略も、俺達の夢は燻ったままだ」
無茶苦茶だ。無茶苦茶なのはわかるが、賭に出る価値もある。生野銀山、丹波。そこを足掛かりに、但馬、丹後、因幡、伯耆、出雲、石見―――山陰道を毛利に奪われる前に奪いに行ける。そして何より京。最善の道を行けば、直接毛利とぶち当たる前に、有利な戦略が描ける。
途方も無い夢物語だ。
また、たとえうまくいったとしても、デメリットも存在する。それは丹波を狙う事で三好と事を構える事と、広げた領地の統治に時間がかかる事だ。
西に毛利、東に三好。最悪、三好の支配圏は信長にくれてやる。だが、それまでに挟まれても十分持つ程の国力を蓄えなければならない。統治に能う人材が育つのを待つのか、人が来るのを願うのか。どちらにしても不確定過ぎる。
対毛利戦を念頭に置くと、リミットは甘く見て2年。信長が上洛するまで大体4、5年といった所か。
だが、誰よりも信頼を置く軍師にここまで尻を蹴りあげられて、黙っていられるか?
現状に満足していないのは俺だけじゃ無い。
「……もう一度訊く。戦略、能うるか?」
「貴様が望むならば、意地でも」
「……上等。ただしだ、俺から一つ注文をつけさせてもらう」
「なんだ?」
「丹波を獲るという事は、三好と事を構えるという事だ。銀山とったら、先に一気に別所を潰す。別所を潰し、三好の横っ腹に刃を付きつけてから、息もつかせぬ勢いで丹波攻略戦を敢行する。神速を是とする俺の黒田武士にできねぇとは言わせねぇ」
「……上等だ」
コクリ、と官兵衛が頷くのを見て俺は官兵衛の胸倉から手を離し、そして一発だけドテッ腹に拳をぶち込んだ。
別に俺の事をどうと言おうとかまいやしねぇが、小夜の事をダシにした事だけはいただけねぇ。
周囲の人間はむせながら這いつくばる官兵衛の様子を見て動揺するが、官兵衛自身はそれがわかっているのか今回は何も言わない。いつもならば、躊躇い無く殴り返してくる官兵衛が、だ。
……全部わかっていて焚きつけやがったな。いいさ、そこまで見込まれちゃこっちも黙ってらんねぇ。
「ふむ……となると、私らもうかうかしてられませんね。さしあたっては上月城。その後が大変だ」
「ですな。某らもなりふり構わず、備前を纏めに掛からなければ。ああ、上月城を手に入れれば掩護に行く事も容易いですな」
「悪いな、付き合わせちまって。ただ、あまり無理はしないでくれよ?」
「孫を抱くまでは死ねませんね」
「いや、アンタはその前に嫡子を作れよ。娘婿の俺が言う事じゃねぇのかもしれねぇけど、嫁さんの件はわかるけど……嫡子がいねぇんじゃ困るぜ」
「……善処します」
一番早く頭を切り替えた宇喜多主従に声を掛け、そして苦笑いする宇喜多直家に笑いかける。
男の子がいないんじゃ……宇喜多秀家ってまだ生まれてねぇんだよな。後妻が誰だか知らねぇけどさ。
「おやっさん」
「……わかっておる。背後は任せい」
「藤兵衛には先に事を進めてもらう。しばらくおやっさんの負担が大きいが、頼む」
「うむ。任せい」
おやっさんの前で頭を下げると、頭をガシガシと撫でられる。小僧扱いするのは勘弁してほしいな。
さて、腹は固まったか。
「聴け!このままゆっくりと侵攻すれば、播州は必ず手に入るだろう―――だが、お前たちに問う!お前らは播州で満足するか!燻ったまま死ぬか!」
「否だ、大将!」
黙って推移を見守っていた武兵衛が真っ先に声を挙げ、それに同調するように、この場に居る者たちから怒涛のように武兵衛に同調する声が挙がる。
熱気を伴った声が、うねりを挙げる。
「天下を獲る為に無茶をする覚悟はあるか!別所を、浦上を、毛利を、三好を、将軍を―――悉く食い散らかす覚悟は出来したか!唯只管前に進む覚悟はあるか!」
「「「「「応ッ!!!」」」」」
「我が方、寡兵、劣勢!西は大国、毛利、東は三好。撤退は許されない―――状況は最高。我ら黒田武士―――これより不可能を覆す!」
『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』
武兵衛が、小兵衛が、左京が、弥三郎が、そしてその場にいる重臣や馬廻りらすべての人間が圧力を伴った声を挙げる。それがひとしきりおさまった後、軽く手を挙げ、不敵に笑いかける。
「―――陣触れを出せ。くだらねぇ事で悩むのは止めだ。『可能』か『不可能』か、じゃねぇ。道は官兵衛が指し示す。道は俺が先陣切ってこじ開ける。時代への反逆―――『やる』か『やらねぇ』か、だ」
覚醒の結果
戦略メチャクチャ。