高校初試合
剣道の試合は面・小手・胴・突きの4カ所が有効となる部位である。
防具は個々違うものを使っており、見た目で1番違いが出るのは胴だ。男子は普通は黒の胴を使うのだが葵達は赤黒い胴を使っている。
余談だが初心者orヘタクソが黒以外の胴を使っているとイキり、調子に乗ってると馬鹿にされる。
剣道は倒れた相手に向かって一振りだけ相手に竹刀を振っていい。
入学から3日目早くも放課後になっていた。
試合前のアップは各チームに分かれて1時間行うことになった。
横で先輩たちが技術面の練習をしているなか俺達は防具を着けずに30分防具を着けて20分練習した。
試合前の休憩をしていると1人の先輩と小松が絡んできた
「お前らアップそれだけでいいの?」
「あっはい。太田先輩たちも、もういいんですか?」
「俺らはガッツリやったからな」
「こいつら先輩たち相手だから諦めてるんですよ」
「そっかそっか。ってかお前らかっこいい胴してんじゃん。お前らがつけててももったないだろ?くれよ」
「それはちょっと無理ですね」
「生意気だな。まぁ試合でボコボコにしてやるよ」
「お前ら馬鹿だなー。従っとけばよかったのに。」
「そだなー。まぁ試合でね」
ここで顧問からの集合がかかった
「集合しろ。試合の順番が決まったら俺に教えてくれ」
奏多がすぐに返事をする。
「僕たちは藤堂・今井・如月・不二の順番でお願いします」
「順番が相手にばれてもいいのか?」
「特に関係ないんで」
「あいつら馬鹿だぞ。順番バラしてやがんの。先輩俺が先鋒でいいですか?」
「小松お前ズルぃな。一番弱そうなチビ相手に選ぶとか」
「いいじゃないですか。俺がこのチームで一番弱いんですから」
「あぁじゃあお前が最初でいいぞ」
「あざーす」
あいつら馬鹿だ。仲良くないやつが真のことチビって言うのは禁句なのに
「みんな、俺あいつのこと嫌いだ」
「真だけじゃないだろ。俺らも嫌いだ」
「3振りで勝つから」
「はいはい」
審判は顧問が一人でやるらしい。
俺らの竹刀追いきれるのかよ
「1試合目するぞ。面着けろ」
真が面を着けると俺たちは円陣を組んだ。この慣れた行動に光が話し出す
「これが俺らの高校初試合だ。これが復讐への第一歩だ。気を抜くなよ」
「「「はい」」」
「いくぞ」
「「「押忍!!!」」」
「「「「ヨッシャ―!!」」」」
この光景に見覚えのある人物が1人いた。
それは3年生のキャプテンである真田だった。
(何か引っかかる。あれを俺は見たことがある。思い出せない。でも、嫌な予感する。大体あいつら何かおかしいんだ。あれだけの防具をそろえてるのに垂ネームを着けてない意味がわからない。なんなんだ?とりあえず1試合目を見たらなにかわかるだろ)
真は怒っていた。チビだと馬鹿にされたことはモチロンだが、みんなが馬鹿にされたことに腹が立ったのだ。この赤黒い胴はお前らごときがつけていいものじゃない。今からお前らを一方的に倒してやる。そんな気持ちでいっぱいだった。
コートに入った。
「お願いします」
道場には真の声しか響かなかった。小松ごときがは俺を舐めてるのか。
「はじめっ」
審判の声が響く。それと同時に真が面を打った
「面あり」
小松は腕を振り上げることすらできなかった
なにがおこったのかわからなかった。でも次は打たなければ負ける
「二本目」
小松は真に負けまいと面を打った。
いや、打とうとした。でも実際は打つ前に真に面を打たれたのだ。
「面あり。勝負あり」
「「ありがとうございました」」
先輩チームは驚いていた。昨日と今日の練習で自分たちと互角の勝負をしていた後輩が2振りで負けたのだ。驚かないほうがおかしい。
「どーせあいつが1番強いんだろ?」
さっき葵たちに絡んだ太田が発言した。
「あんな強いやつが沢山いるはずない。次は俺が出る。あんな優男に負けるはずない」
驚いていたのは葵たちも一緒だった。
「あの先生今の一本って見えてたのか?」
「わかんないね。でも、審判としてはヘタクソじゃなさそうだね」
「だな。これで返し技とか抜き技も使えそうだな」
「そうだね。誤審はこわいからね。じゃあ僕は行ってくるよ」
奏多がコートに向かうすると太田が奏多に向って叫ぶ
「俺はテメェなんかに負けねぇ。お前わかってんだろうな!!」
それは勝負をする者にとって愚かな叫びであった。相手を脅し萎縮させるつもりだったのだろうが奏多には脅しは効かなかった。
「よろしくお願いします」
ニッコリと微笑みながら奏多は返事をしたのだった。
「「お願いします」」
今度はお互いが挨拶をした。
「はじめっ」
この声と共に太田は真がしたように面を打った。
奏多はこれを少ししゃがみながら受けた。
これを見て太田は奏多が力負けをしてしゃがんだのだと勘違いし、上体があがったまま奏多に体当たりをした。
それに対し奏多は下からすくい上げるように体当たりをした。すると太田は体が浮き後頭部から地面に倒れていった。
奏多は倒れた太田に向かい突きを打った。一本にはならなかったが太田は恐怖心を植え付けられてしまった。
「やめっ」
普通は倒れた相手に向かい手を差し伸べるのだが奏多はしなかった。なぜなら奏多は意図的に太田を倒したのだから。太田が倒れているにも関わらず奏多は構えた。太田は萎縮してしまった。後輩に倒されたことによって相手との実力差、そして怒っていることに気付いたのだ。
「太田早く立て」
顧問に急かされ自分が試合中にも関わらず倒れていることに気付いたのだ。
太田は構えた
「はじめっ」
そこからは奏多が面を2本打って勝負が決まった。
「ありがとうございました」
奏多の声だけが道場に響いたのだった。
長くなったので2回に分けます。
小松 1年生
173㎝ 67㎏
太田 2年生
174㎝ 69㎏
剣道は誤審の多い競技なので顧問がちゃんと審判できてることに葵たちは驚いています。
返し技・・・相手の打った技を受けてから打つ技
抜き技・・・相手の打った技に触れずに避けてから打つ技
出鼻技・・・相手が打とうとしたときに打つ技。真が2本目に打ったのはこの技で出鼻面という。
こけたところに突き打たれるの怖いんだよなー(笑)