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邂逅

今回も、不手際がありまして、4500文字近く書いたものが一度500文字までパージなりました!

杯つまり4000文字がパーです! 俺の頭のごとくパーです!


こまめに保存していれば……! と悔やまれてなりませんが、とりあえずまた精神がアレな状態での再考および文章入力。

格段にレベル下がっているかもですが、どうぞ見てやってください……!


そして、とりあえずは一段落です。

ラノベで言うところの第一章が終わりです。

次からは第二章~~みたいな感じで行きたいのですが、さてはて……

完了はいつになるんだこの小説ぅ――――! てな感じですねw

 この願いは、俺の本心だ。

 あまりに突拍子もなく思えるかもしれないけれど。

 俺は心の底から、彼女を家族にしたかった。

「お前に拒否権はない。いやでもお前は俺の家族だ。捨てようとしたその命、その価値を、お前にわからせてやる!」

「っ? っ??」

 脇に抱えられたイクミは、俺に告げられた言葉の意味を把握しかねているようだ。

 無理もない――というより、この一瞬で呑み込んで考えられたら、俺の方が驚く。

「お前は、俺の家族になるんだよ」

 暗がりの道を、女子を連れ去るようにして闊歩しながら微笑む。

 この微笑みは、何を意味しているのだろうか?

 俺の愛情? そんなものはない。出会ったばかりの少女に愛を囁けというのか。どんなナンパ野郎だ。

 嗜虐心? そんなものもない。死を選ぼうとしているやつに対して、さらにそんなもので微笑むような、ずれた感性は持っていない。

 死を選んだことに対する同情や憐憫? 俺ごときがそんなたいそうなものを抱けというのか、ばかばかしい。


 俺はただ、覚悟を決めただけだ。

 家族になる覚悟ではない。それは手段であって、直接の目的ではない。

 一緒にいる覚悟。喩え拒まれたとしても、手を離さない覚悟。

 彼女とつながり、彼女を引き留める覚悟。

 俺が――家族を作る、覚悟。

 

 そんな、ありもしない覚悟を固めて、彼女をいざなった。

 ――俺の、家族に。

だから、この微笑みは虚栄心の現れだ。ありもしない覚悟をより固めるための、ありもしない微笑み……挑戦することへの笑顔。

「っ! 家族ってなんですかっ? どうして私があなたの家族になんて……っ!」

 ようやく思考するだけの平常心を取り戻したらしい。それまで燻っていたであろう疑念と拒絶が、渦を巻くように一気に溢れ出す。

 怒りを思わせるその勢いは、けれどそれで正しいのだろう。

 だが俺も、その程度で揺らぐほど――理解も追いつかない感情だけの拒絶で揺らぐほど、やわな覚悟で願いを告げたわけでもない。

 喩え彼女がすべてを理解し、拒絶しても、それでも俺は止まらないだろう。

「別に、親権やらなんやら、小難しいことじゃない。ただ一緒に過ごして、同じものを見て、ひとつ屋根の下で生活して、互いに感情をすり合わせて、理解して、一緒になっていく……それが家族だ」

「そういう意味じゃ……っ!」

 わかっている。彼女が何を言っているのか。

 俺には分かっているつもりだ――いや、俺はわかっていなくてないけない。


 ――家族とは、そう簡単なものではない。


 家族とは、自分かそれ以上に信頼のおける存在だ――そう簡単に他人を置けるものではない。

 そんな場所に、会って間もない彼女を置こうというのだ――が、彼女が言いたいことはたぶん、それでもないだろう。

 それだけ信頼している場所に、誰かを置くリスクというのはたぶん、一般的なデメリットだ。彼女の危惧は、そのほかにあると思う。

「それでも俺は、お前を家族にしたいんだよ」

 イクミの内心を覗いたつもりでも、俺は俺の願いを取り下げない。

 イクミの瞳に、怒りと恨みのような暗いものが浮かんだ気がした。

 彼女は脇に抱えられているのだから見えるはずもないが、気配で感じた。そして、それが気のせいだと思えるほど、俺は楽天的ではない。

 まるで野犬が領域から誰かを追い返すような、威嚇的な語調でイクミは告げる。

「いやです。あなたの家族になんて、なりませんですっ」

「それでも俺は、お前を家族にしたいんだよっ」

 先ほどと同じ文句を、強めた口調で告げる。

 闇に声が広がり、いつ誰が来てもおかしくない状況だ。

 だが、聞く人が聞けば、結婚のことを言い争っているのだろうか。どのみち俺は悪役だが。

「……っ」

「…………」

 頭を半回転させたイクミが、下から俺を睨み上げる。俺はそれを無言で見下ろし、歩みは止めない。

 何度も何度も、光と闇のトンネルをくぐって、イクミを連行しながら家路をたどる。

「…………」

 実際、俺は悪役なのだ。

 彼女が怒るだけの正当な行為を働き、彼女が恨むだけの理不尽な願いを強要している。

 そのことを自覚してなお、俺は今回のこの願いを、取り下げない。

 誰かに恨まれたりしても平気なほど、俺は鈍感でも厚顔でもないつもりだ。自分の感情を割り切れるほど、俺は大人ではない。

 それでも為したいことがあるのなら、割り切れない感情を呑み込んで、傷つきながら事をなせる程度には、俺は子供ではない。

「……っ」

 いつの間にか――というほど精神的には短く感じられる時間で、実際には十分近くかかったはずの道のりを歩き――俺は家に到着していた。

 俺は脇に込めた力を抜くと、さりげなく抜いたにもかかわらずイクミは機敏な動きで俺の拘束から抜け出した。

「もう一度、いうぞ」

 俺はそれを確かめて、言葉で縛りつけるようにイクミと正面から向き合い、厳かに告げる。

 イクミは俺の宣告から身を隠すように、弱々しく首を左右に振って、顔を俯け、耳を覆った。それでも俺は、気にせず続ける。

「イクミ、俺の家族になれ!」

 慄くように、イクミの肩がびくりと震える。

 そして、耳を押さえていた手の力が抜け、バッと顔を上げた。


 そして、絶叫が響く。


「どうしてですっ?」

 つんざくような叫び声ではなく、声にならないような音でもない。それは絶叫というにはあまりに小さくしか響かなかった。

 その声には、悲愴さやひ弱さしかない。そして、それらの感情が精一杯、闇に響いた。

 ヒステリックさはなくても、この声は絶叫といっていいだろう。俺は彼女の並べ立てる非難や拒絶をすべて受け入れるため、無言で佇んだ。

「どうして私を家族にしようとするんですっ? 私はあなたと何の関係もないじゃないですかっ! 私が死んだところであなたは気にする事もない、ただの他人じゃないですかっ! なのにどうしてっ? どうして私なんかを、家族にしようとするんですかっ?」

 考えがまとまらないのか、そもそもまとめられる精神ではないのか、イクミは感情をそのまま垂れ流したように、『私なんか』と拒絶を続けた。

『なんか』なんていうなよ――と言おうかとも思ったが、止めた。出会って間もない――本当に、何も知らないような相手にそれを言うのは不誠実だと思ったからだ。その不誠実もこの場では必要なのかもしれないが、今は使うべきじゃないとも思った。

 ヒステリックに拒絶を叫ぶイクミの声に涙が混じったと感じた時、俺はいつの間にかイクミの傍に寄って抱き留めていた。

「っ」

 だがその腕は、イクミの細い腕によってすぐさま払われる。イクミは虚勢を見せながら、俺と一歩分の距離をあけた。


 手を伸ばせば触れられる距離。だが、人のぬくもりを直接感じるには遠い――そんな距離。


 俺は虚勢を張れるだけの元気があることに安堵しつつ、ふっと微笑む。

「だめ、か……?」

「っ……!」

 俺の期待のこもった言葉に、イクミが言葉を失った。失って、そして拒む。

「私、にも……家族、が……いました、ので……」

 ――だから、新しい家族を受け入れたくはない。

 言葉の裏にそこまでの言葉を見つけて、俺はそれ以上何も言えずにただ相槌を打つ。

「そう、か……」

 予想された言葉だった。

 想像できる心情だった。

 だから、これ以上は何も言えない――ということではない。

「それでも俺は、お前と家族になりたい」

「あなたはっ!」

 先ほどまで以上に、恨みのこもった目で睨まれ、敵意を込めて怒鳴られ、それを俺は受け止める。

「っ……?」

 途端、敵意が霧散し、恨みの陰も薄れ、イクミの瞳に戸惑いが見えた。

 いったい俺の目に何を見たのだか……自分で予想はできるが、意識したくはない。俺は恵まれた家庭にいるのだから。

 そして同時に、俺が退く気はないことは悟ったのだろう。若干諦念のにじませる、悔しそうな目をして告げる。

「とりあえず……私が、帰るまでは……一緒に住まわせてもらいます、です……」

「ああ、わかった。とりあえずな」

 俺はふっと微笑んで、玄関のかぎを開ける。

 そして、俺があきらめていないことの意思表示のため、もう一度いう。

「――とりあえず、な?」

「っ!」

 キッと振り返って、何かを言おうとしたようだが、結局は何も言わずに中へと入る。

 俺は微笑んで後を追うと、玄関に腰をかけ、靴を脱ぐ――ように見せかけて、必要以上の時間をかけたあまり時間で、内心を整えた。

「…………」


 正直、どんな感情を浮かべればいいのかわからない。


 思い通りに行ったことを喜ぶべきだろう。

 彼女のことを怒らせ、恨まれるようなことをしたことを詫びるべきだろう。

 それらをひっくるめて、何もなかったようにふるまうべきでもあるだろう。

(……難しいな)

 自分が正しいことをしたつもりはない。そんな心では喜べない。

 ここで謝れば、自分のやったすべてが間違ったことであると認めることになる。自分のしたことに後悔はない以上、詫びるわけにはいかない。

 何もなかった? すでに賽は投げられている。もう、なかったことになんてできるはずはないのだ。

 十秒近くでそこまで考えて、ふっと笑う。

(……結局、今は受け入れ続けるべき、なんだろうな)

 だから、笑おう。

 喜びでもなく、苦しみでもなく、涙を浮かべながらでもなく。

 この先をよりよくして、今という結果を『よかった』ものにするために。

 ――これから先、挑戦し続ける。

「……っし!」

 ひとつ気合いを入れなおすと、イクミを連れ立ってリビングへと。

 このあとは、料理を作って、父さんにどう認めさせるか考えよう――と、まだ帰っていないであろう最終関門のことを考えながらドアを開ける。

「え?」

「お? おぉ? 遼ちゃん、おかえ、りー?」

「……? …………」

 無言が重たいですイクミさん。

「……え?」

 意外なことに、父さんがすでに帰っていた。

「ねえ、遼ちゃん。その子、だれ?」

 そして当然、俺の背後に控えるイクミの姿をとらえている。

 ……いきなり前準備もなしにボス戦っすか?

「……えぇぇえ~~??」

「…………」

 こうして俺たちの新しい生活は始まったのだ。

 ……イクミさん、チョークールっすね!

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