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00.元素記号の可笑しな思考回路

作者: 藍崎 奏

ギャグ要素強め注意です!

今日は厄日だ。

そう思い頭痛の止まらない頭を押さえて、少年…荒川琉衣(あらかわるい)はため息を吐いた。

彼がこんなに重苦しいため息を吐くのには理由があった。


…つい数十分前のことである。


きらきら

そんな効果音がしそうな顔で百円玉をまじまじと見つめている少女がいた。

喜びで今にも踊りそうなオーラを漂わせている少女、日川みずきは徐に百円玉を空に掲げ、


「百円っ!ついに私は百円神(ひゃくえんしん)を味方につけたようだ…っ!!」


と、何とも訳の分からないことを叫びだした。


それを横で見ていた荒川は、若干引き気味に「俺、百円拾ってそんなに喜ぶ高校生はじめて見たわ…」と呟いていた。

むしろ百円神ってなんぞ、と思っても口に出さないのが荒川なりの優しさである。


荒川の的確な突っ込みを聞いて日川は、「クックック…哀れな奴め」と喉を鳴らして笑い、呟いた。


「君は百円様の偉大さを知らないようだ…」

「お前、今相当イタイ奴だぞ」


半ば呆れ気味に突っ込みを入れると、日川は「何だ、そんなに偉大さを知りたいか」とじわりじわりと歩み寄ってくる。

そんな日川を避けるように、荒川はじりじりと後ずさる。


「なぁなぁ、教えて欲しいんだろう?」

「いや、別にけっこ「そうか!ならば教えてやろう!!」


断ろうとした矢先に速攻ディフェンスを入れてくる会話に疲れた荒川は、もう何も言うまいとため息を吐いた。


「聞いて驚け…なんと!百円様が一人いるだけでな…!!」


ビシッ

日川は腰に手を当て、荒川を思いっきり指差す。

その様子に「そんなに凄いことができるのか百円…っ」と心の中で荒川は思った。


すぅ、と大きく息を吸い日川はニヤり、と意味有り気な笑みを浮かべる。

思わず、荒川は生唾を飲み込んだ。


「うまい棒公爵が10人も召還できてしまうのだよッ!!」

「…うまい棒はいつから公爵になったんだよ、おい」


バンッと壁を叩きながら力説する彼女に、とてつもない脱力感を感じ、荒川は再びため息を吐いた。

あまりの訳の分からなさにあほか、あほなのか…あっ、あほか。と自己完結をしてしまう。


「少しでも期待した俺が馬鹿だったわ、まったく…」


するり、と日川の横を抜けて荒川は歩き出す。

そんな彼を目で追いながら、日川は問う。


「どこに行くの?」

「んぁ、自販機ー」

「私も行く!!」


元気よく言う日川を横目に、小学生かよと荒川は小さく笑った。

別にいいけどさ、と荒川が答えると、日川は荒川の後を追った。


「待ってくださいよぉ、ルイさぁん」


語尾にハートが付きそうな口調で日川が言う。

人をおちょくっているのか、と荒川は眉間にしわを寄せる。


「ウザイ、キモイ、そしてウザイ」

「ひどっ!!何でウザイ二回言ったのよ、傷つく…」

「大事なことは二回言わなきゃいけないっていう掟があるんだよ」

「尚更酷い!」


半泣きの日川を見て、軽く笑いながら「本当のこと言ってるし」と呟いた。


「せめて可愛くないとかさ」

「U☆ZA☆Iです」

「強調やめてぇえ!!」


そんな会話をしながら自販機をの前まで歩いていった。

…そんなこんなで、今に至る訳である。


荒川の今の状況は、自販機にお札を入れようとした瞬間に超絶ハイテンション少女に大声で叫ばれて思わずフリーズしている、といったとてもシュールなものだった。


「な、何だよ今度は…」

「ゆっ…油断していた…荒川男爵が千円王子を手の内に入れていたなんて…」


はい、やって参りました!!みずきの必殺技、≪意味の分からない発言≫!!!

と、叫びたくなる衝動を抑えて荒川は「だぁれが男爵だ!つか、野口英世はいつから王子になったんだよッ!!!」と的確な突っ込みを入れた。

もはや若手の芸人よりも突っ込みが美しくなってしまっている。慣れって恐ろしい。


「しかぁし!!私には百円神が付いておられるのだ!!!!」


ふはははははと高笑いを続けている日川に付き合いきれなくなった荒川は、ささっと自販機で紅茶を買っていた。

よく冷えた缶に口を付けようとした、刹那。


「あああああああああああああっ!!!!!!!」


と、何事かと思うくらいの悲鳴が耳に入ってきた。

思わず缶を落としそうになったのを必死に阻止し、声の主を思いっきり睨んだ。


「うっせーな!!今度はなん…っ!?」


荒川は驚き、目を見張った。

それもそのはず。

今までうっとおしいまでにぎゃあぎゃあ騒いでいた日川が、まるで死んだ魚のような目をして静かに大量の涙を流していたからだ。


「な、何があったぁああぁあああ!!」

「…た…」

「ハァ!?なんつー小声!!!!!聞こえねえよ!!さっきまでの元気はどうしたんだよ!!!」


軽く混乱状態の荒川は、日川の方を掴みぐらぐらと揺らした。

日川はそっと目に手を持っていくと、聞き取れるくらいの声で彼に言った。


「百円様…落とした…」


…もうどーでもいいわ。

心のから荒川はそう思った。






「百円神は私を見放したのだろうか…」

「いいから探せよ、俺はしらねぇよ。もう」

「一緒に探してよぉ…っ」

「YA☆DA」

「うぅう…っルイの鬼畜ぅうう!!!!!!!!」


(人に散々心配させといて、よく言うわ…)

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