プロローグ
始めまして、夕張ミストと申します。
今回、初投稿なので若干緊張しておりますが頑張って行きたいと思います。
当方学生の身で、更新は不定期になると思います。
尚、この小説の中で少々過激な表現が含まれる場合も御座います、ご了承ください。
ずっと響いている。
それは悲鳴か、それとも狩人の雄たけびか。
ここは狩場だ、戦場ではない一方的な狩り。
狩る者は己が欲のために肉を貪り、狩られる者は恐怖し目を見開き貪られる。
俺も、例外ではなかった。
「一体何がどうなってんだ・・・!」
薄暗い裏通りを全力で駆け抜ける。
そこは犬や猫の死体が転がり、異臭が漂う地獄だった。
むせ返る様な腐敗臭の中を俺は表通りに向かって逃げるように走っていた。
そう、逃げているのだ。
ペタ・・・ペタ・・・と俺の背後からは奴らが迫ってきている。
捕まったら、あの教官のように食らい付かれる。
そして奴らと同じように獲物を探してずっと彷徨い続ける事になる。
それだけは嫌だ。
まだ俺だってしたい事は山ほどある。
それをこんなわけのわからない事件で死ぬのはまっぴら御免だった。
とりあえず警察署、或いはこの近くには軍の基地が存在する。
そこに行けば何とかなるはずだ。
幸い、奴らは歩くだけでそこまで移動速度は速くないのがせめてもの救いであった。
保護してもらうためにはとりあえず表通りに出て、どんな状況なのか見てからだ。
おそらくもうこの異変は町中に広がっているだろう、ところどころで聞こえる悲鳴がその証拠だ。
表通りに警官隊が展開していればそこで保護してもらえるだろう。
流石に目の前で教官や同級生が食い殺された時はかなりパニックになったが
ここまでくると逃げるのに必死でどうこう考えている暇はない。
ふと前方から表通りからの明かりが差し込んでいた。
ほっと、安堵の息を吐く反面やけに静かな表通りに、妙な恐怖心を抱いた。
そうして、俺は表通りに出た。
警官隊と奴らとの交戦の跡があった。
銃弾に砕かれたコンクリートブロック、飛び散った血・・・戦場跡だ。
だがそこは戦場の跡だというのに人影の一つもない、それが妙だ。
不意に、俺の右肩に高熱の棒を押し付けたような感覚が襲った。
次に激痛が走る。
「がっ・・・!?」
膝から力が抜ける。
恐る恐る振り返ると「奴ら」が立っていた。
その右手には鋭利な刃物、恐らく人家を襲って手に入れたであろう包丁が握られていた。
包丁を持ってたたずむそいつは、口を歪めて笑っているように見えた。
ボタボタと液体が地面に落ちる音がする。
右腕の感覚がない、立つ事も逃げる事も出来ない。
そしてそいつは包丁を高く掲げ・・・
振り下ろされない。
脳裏に疑問が浮かぶのと同時に甲高い銃声のような音がした。
恐る恐る目を開けてみるとそいつが倒れていて、頭から妙な色の血を流している。
「助かった・・・?」
撃ったのは誰だろうか、警官隊が戻ってきたか?それとも軍が動いたか?
それはともかくこの血を止めなけれ・・・
瞬間、ゴッという鈍い音と共に俺の頭に激痛が走り、意識が落ちた。