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029⚫️やさしい魂
マザー・テレサが活動を始めた当時のカルカッタは、
貧困・病・差別が渦巻く都市だった。
彼女自身も豊かな資金や組織を持っていたわけではない。
むしろ彼女の出発点は’ほとんど何もない’に近かった。
食料も寝床も不足し、助けを求める人々は圧倒的に多い。
彼女はいつも奔走し、時間はいつも足りなかった。
それでも彼女は、路上で倒れた人を抱き上げ、
汚れた身体を洗い、死にゆく者に寄り添い、
「あなたは愛されている」と伝え続けた。
そこにあるのは、余裕から生まれた慈善ではない。
むしろ
「余裕がないからこそ、目の前の苦しみに反応せずにはいられない」
という衝動だったのではないか。
彼女の’やさしさ’は、条件や環境に左右されるものではなく、
価値観と信念から湧き上がる行為だった。
彼女の’やさしさ’とは、
「時間的・物質的ゆとりがあるかどうか」ではなく、
「自分はどう生きたいか」をその基盤としていたのだ。
ある国の表意文字では、’やさしい’は’すぐれている’と同じ文字を使う。
それは相対評価ではなく、絶対評価。
’優しい’とは、その魂が’優れている’ということなのではないだろうか。




