test
2045年、日本政府は国家存続を目的とした「日本再帰還計画」を発動した。少子高齢化、地方消滅、東京一極集中、老朽化したインフラ、そして度重なる大規模災害によって、日本は国家として限界を迎えつつあった。政府はAIによる国家シミュレーションの結果、「全国土を現在の形で維持することは不可能」という結論に至り、全国民を出生地、または先祖の本籍地へ段階的に再配置する政策を開始する。東京で生活していた人々は地方へ戻され、地方には莫大な国家予算が投下された。無人農業、自動物流、AI行政、遠隔医療、仮想空間教育など最先端技術が導入され、“地方分散型国家”として日本を再設計する巨大国家プロジェクトが始まったのである。
しかし当然、国民の反発は大きかった。東京で成功した者たちは生活も仕事も人脈も失い、若者たちは「なぜ故郷へ戻らなければならないのか」と政府を批判した。SNSでは「現代の強制移住政策」として連日炎上し、日本社会は分断されていく。そんな中、大阪でIT企業を経営していた38歳の相馬蓮司は、出生地である徳島への帰郷命令を受ける。蓮司は東京や大阪で構築された便利な都市社会こそが未来だと信じていたが、徳島へ戻った彼が目にしたのは、シャッター街、無人駅、廃校寸前の学校、後継者を失った農家、そして高齢者だけが残る集落だった。しかし同時に、都会では失われていた静かな時間、人との距離感、土地の文化がそこには残っていた。
蓮司はITとAI技術を活用し、故郷再生へ挑戦する。都市企業の仕事を地方で受注できる遠隔労働システム、AIによる農業支援、地域通貨、無人配送ネットワークを次々と導入し、少しずつ若者たちが戻り始める。しかしその成功を、内閣直属組織「地方再設計局」が注視していた。ある日、局員である東条真理という女性官僚が蓮司のもとを訪れ、「政府は第二段階へ移行する」と告げる。第二段階とは、AIが“維持不能”と判断した地域を統合・放棄する「区域統合政策」だった。人口、税収、医療、物流、災害リスクをAIが総合判断し、国家維持に不要とされた地域は行政機能を停止され、“自然返還区域”として切り捨てられる。つまり政府は、日本全体を守るために、一部の地方を見捨てる決断を下そうとしていたのである。
蓮司は激しく反発するが、国家財政シミュレーションを見るうちに、政府の合理性も理解し始める。このままでは日本は維持できない。全てを守ろうとすれば国家そのものが崩壊する。だが同時に、AIには理解できないものがあることも知る。それは、人が故郷に抱く感情だった。祖父母の墓、祭り、方言、山や海の風景、幼少期の記憶。合理性だけでは測れない“帰る場所”が、人間には存在する。国家の合理性と、人間の感情。その二つの間で、日本という国そのものが引き裂かれていく中、蓮司は徳島の地で、日本の未来を左右する決断へ巻き込まれていく。そして彼は次第に気づく。この政策の本当の目的は地方創生ではない。日本という国家を、AIによって完全に再設計することなのだと――。




