第五十七話 黒竜
(回復魔法のランクがBからAになって回復魔法が増えてる。それに魔力のブレスを使えるようになった)
星斗は仙狐のステータスボードを見ている。
「やった! 変化しても、もふもふのままだ!」
「可愛いままで、よかったねー」
「クーーーン」
アンリと明日香が、仙狐の頭や背中をなでながら微笑んでいる。
「仙狐になっても、今まで通り、回復魔法や障壁でみんなを守ってくれ」
「クオーーーーン!」
仙狐は、星斗の言葉に力強く鳴いて答える。
「珍しいものも見れたし、先に進みましょう」
星斗達は引き続き探索を続け、地下十三階、地下十四階と順調に進んでいき、転移の石碑がある部屋までやってきた。彼らはここまでに宝箱から「フルポーション」「詠唱短縮のスキルブック」「アイテムボックスのスキルブック」「メタルアーマー」「疾風の槍」などを入手していた。
「今日はここまでにしましょうか」
「じゃあ、早く本部に行って報酬の分配をお願いね」
「あずさは詠唱短縮のスキルブックが欲しいんでしょ」
「えっ? 何でわかったの?」
「詠唱短縮のスキルブックが宝箱から出てきた時、あずさの目が怖かったもの」
「なっ、そんなに?」
島の言葉を聞いて、成田の顔が赤くなる。彼女はハイダークエルフが詠唱短縮のスキルを持っていることを知り、ライバル心から、どうしても詠唱短縮のスキルブックが欲しかった。
「まあ、あずさの魔法が早く撃てるようになれば、凄い助かるから、これはあずさが使っていいよ」
「ほんと? 明日香、ありがと!」
「本条君。取り出してくれる?」
「はい」
星斗はアイテムボックスから詠唱短縮のスキルブック取り出して成田に渡し、彼女は嬉しそうな顔をしながら、その場で詠唱短縮を習得する。
「ほかの戦利品は、本部に行ってから分配するね」
星斗達は転移の石碑で入口に戻り、車でライジンギルドの本部ビルに行って、星斗は複数の魔石と「フルポーション」「風の精霊の指輪」を手に入れた。
フルポーション HPを完全回復する薬
風の精霊の指輪 速+15%
そして次の日、星斗達は再び天満ダンジョンの地下十四階に戻ってきた。星斗は昨日入手した風の精霊の指輪を装備している。そしてアンリは入口で覚醒者協会の職員にBランク覚醒者カードを見せていて、彼女はこの天満ダンジョンで稼いだ魔石でBランクに昇格していた。
「本条君とアンリちゃんがBランクになったことだし、次はAランク目指して魔石を集めましょう」
星斗達は地下十四階をマップを作りながら進んでいく。その途中、
「危ない!」
明日香が高速の動きで星斗の後ろに移動し、飛んできた魔力を帯びた短剣を剣で打ち払う。
「なっ!」
「シャドウアサシンだ!」
全員が後方を見ると、通路にある柱の後ろにシャドウアサシンが隠れていた。シャドウアサシンは柱の影に潜んでいて、星斗達が通り過ぎた後、影から出てきて、オーラスロー(投てき武器に魔力をまとわせて投げるスキル)で星斗を狙っていた。
(奴の攻撃にまったく気づけなかった。気配察知はモンスターの気配は察知できるけど、投げられた短剣は察知できない。それに気づいた明日香さんは凄いな)
明日香は空間把握というユニークスキルを持っていて、それは自分の周囲のモンスターの気配や動くものを正確に感知できるスキルだった。
ちなみに星斗のユニークスキルコピーは、最初に遭遇したモンスターは自動的にウィンドウが表示されてその存在を知ることができるのだが、二回目からは自分が見たいと思わないとウィンドウは表示されなかった。
「また影に入られる前に倒す!」
「私も行くよ!」
「俺も行きます!」
明日香とアンリと星斗が、シャドウアサシンがいる場所に向かって高速で走りだし、成田とダークハイエルフが魔法発動の準備を開始する。
「氷結斬!」
星斗が最初にシャドウアサシンに接近して冷気の斬撃を放つ。それをシャドウアサシンは再び影の中に入って回避する。
「くっ、また影に入られた!」
「みんな! 影を警戒して!」
島のその言葉を聞いて、星斗達はシャドウアサシンが入った影がどこに伸びているか確認する。シャドウアサシンは影隠れのスキルで影の中に入り、影移動でその影の中を移動することができた。だが影がつながってない場所には移動できないので、どこに潜んでいるのかは、ある程度絞ることができた。
(シャドウアサシンのコピーウィンドウを開いてくれ)
星斗がそう心の中で意志を示すと、星斗の右方向に
シャドウアサシン
ユニークスキル
影術(A) 短剣術(B) 気配察知(C)
どれを誰にコピーしますか?
と表示された。
「奴はあのあたりにいます!」
その星斗の言葉を聞いて、全員が彼が示した方向を見る。その後、みんなが見ている影からシャドウアサシンが飛び出してきた。
(今だ! 影術を俺にコピーだ!)
星斗は、前の戦いでミノタウロスからコピーした斧術に影術を上書きする。
「ダークボルト!」
「サンダーボルト!」
シャドウアサシンの姿を確認した成田とダークハイエルフが、闇系下級魔法と雷系下級魔法と同時に放つ。それがシャドウアサシンに連続で命中する。
「ぐがっ!」
「今だ! 氷結斬!」
「聖光斬!」
「ぎゃあああああああ!」
星斗の冷気の斬撃とアンリの光の斬撃が、魔法のダメージを受けて動けないシャドウアサシンの体を斬り、それが致命傷となったシャドウアサシンはその場で倒れて消滅した。そして宝箱が出現する。
「やった! 宝箱!」
戦いが終わり、アンリが宝箱の中から「闇の短剣」を回収する。その後、星斗が近くにいる明日香に話しかける。
「明日香さん。さっきはありがとうございました」
「えっ? う、うん……」
明日香は人見知りモードが発動し、ドキドキしながら星斗に答える。
(本条君は私の空間把握でも感知できないシャドウアサシンの居場所がわかっていた。何か感知系のスキルか装備品を持ってるのかも)
明日香もアンリと同じように、星斗のユニークスキルが気になっているようだ。
「さあ、先に進みましょう」
その後、星斗達は戦いながら順調に進んで地下十五階に到着し、転移の石碑のある部屋と、その先にボス部屋の扉を発見した。彼らはここまでに「紅蓮の大剣」「漆黒のローブ」「メタルシールド」「守護の指輪」などを手に入れていた。
「とうとうボス部屋に到着した」
「天満ダンジョンは地下十五階が最下層なのね」
「それでボスとは戦わないんですよね」
星斗のその質問に島が答える。
「もちろんよ。しばらくはここを探索して、レベル上げと宝箱の回収をしましょう」
「でもボスが何なのかは、知っておいたほうがいいんじゃない?」
「確かに確認しとけば、後で戦う時の対策が立てれるか。じゃあ、中に入って、ボスが何かを確認したら、すぐに部屋を出ましょう」
明日香と島の話し合いの結果、星斗達はボス部屋の扉を開けて中に入る。すると広いボス部屋の中心にある魔法陣から、巨大な黒い竜が出現した。
「あ、あれは!」
「ブ、ブラックドラゴンだ!」
次回 潜伏 に続く




