第五十三話 再び天満ダンジョンへ
星斗が真宮寺ダンジョンを攻略してから数日後、アンリはライジンギルドの本部ビルの訓練室で、姉の明日香と竹刀を使って剣術の訓練をしていた。
「いいかんじになってきたよ。アンリちゃん」
「はぁ、はぁ、はぁ……こ、ここまで苦労したもん」
アンリは星斗が急成長しているので、それに負けないように姉に訓練を頼んでいた。
「はい。これ飲んで」
「うん。ありがと」
アンリは渡されたスポーツドリンクを飲んで休憩する。
「でも剣術の訓練をするより、ダンジョンでモンスターを倒してレベルを上げたほうが強くなれるんじゃ……」
「それも大事だけど、こっちの訓練も重要なの。剣術のスキルに頼ってばかりじゃ、いずれ限界がくるからね」
剣術のユニークスキルを持っている覚醒者は、本物の剣術を学ばなくてもある程度の剣術を使うことができた。だが、本格的な剣術の訓練すれば、それだけ剣の技を強くすることもできた。
「そうだ。そろそろ天満ダンジョンの攻略を再開しようと思ってるんだけど、アンリちゃんも来る?」
「もちろん行くよ。この訓練の成果を試してみたいし、強いモンスターと戦ってレベルも上げたいし」
「わかった。ああ、本条君も呼びたいから、学校で会ったら話しといて」
「うん、わかった」
(ふふふ、本条君に強くなった私を見せつけてやろう)
「さあ、お姉ちゃん。訓練を再開しよ」
アンリはさらに自分の剣術を高めるために訓練を続ける。それから数日後の土曜日。星斗はアンリから話を聞いて、再び天満ダンジョンにやってきた。そして入口付近にいるライジンギルドのエースパーティの明日香達の姿を見つける。
「おはようございます」
「おはよ」
「今日もよろしく頼むぞ。本条君」
「はい」
「本条君も来たし、後はあずさだけね」
この場には本条星斗、朝比奈アンリ、朝比奈明日香、島恭子、鈴木秀幸の五人がいて、彼らは残りのメンバーの成田あずさを待っている。その後、しばらくして彼女がやって来た。
「おはよー。待たせちゃったみたいね。ごめんごめん。今日は化粧ノリが悪くて……」
「あずさ、もしかして曲がり角……」
「ちょっ! そんなわけないでしょ! 私の肌は、まだ十代の水を弾く肌よ!」
成田と島がそんな話をしてると、明日香があきれたような顔で話す。
「これからダンジョンに潜るのに、化粧とかどうでもいいでしょ」
「いやいや。明日香は元がいいから気にしなくていいけど、私はいつも苦労……違うわ! 私も元もいいわ!」
「わかった。わかった。とりあえず、中に入りましょう」
明日香が成田をなだめながらダンジョンの入口から中に入り、星斗も入口にいる覚醒者協会の職員に、Bランクの覚醒者カードを見せて中に入る。すると彼のカードが以前と変わっていることに島が気づく。
「本条君、Bランクになったんだ」
「はい」
「Bランクを目指すって言って、そんなに経ってないのにもう?」
「真宮寺ダンジョンをひとりで攻略してたので」
「ひとりで? もしかしてボスも倒したの?」
「はい。風の精霊ジンを倒しました」
「ジンってAランクでしょ。それを一人で倒すのは凄い!」
「俺には召喚できる仲間がいるので」
「ああ、そういえばそうだったわね」
「それに三体のモンスターの内、二体が上位種族変化したんですよ」
「上位種族変化!? 見せて見せて!」
「はい。では……ゴールドナイト! ダークハイエルフ! 妖狐召喚!」
島に催促され、星斗は三体のモンスターを召喚する。
「おお! ゴールドナイトか! 豪華な装備になってて強そうだ!」
「ダークハイエルフって、ダークエルフの上位種族よね。見た目は変わってないけど、魔力が凄く強くなってる」
鈴木と成田は、ゴールドナイトとダークハイエルフを見ただけで、その強さを感じ取った。
「妖狐ちゃんはそのままねー。なでなで」
「この子は、このまま可愛いままでいて欲しいな。なでなで」
「クオーーーン!」
明日香とアンリは妖狐の頭をなでている。
「あっ、私もお姉ちゃんと剣術の訓練をしたから、どれだけ強くなったか見せてあげる」
「俺も今までと違うところを見せれるよ」
「それは楽しみね」
(ユニークスキルコピーのことは、ばれるのはまずいけど、戦闘力についてはもう隠さなくてもいいや。というか、このダンジョンで力を隠して戦うのは厳しい。全力で戦う)
星斗はそう考えながら、明日香達と共に天満ダンジョンの一階フロア内を歩いていく。明日香達はこの天満ダンジョンの地下十階までは転移の石碑で移動できるのだが、星斗とアンリの今の強さや、彼らとの連携を試すため、まず一階から進んでいくことにした。すると通路の先にAランクモンスター、ミノタウロスが一体出現する。
「ミノタウロスか」
「なら君達の成長を見せてもらおうかしら」
「はい。任せてください」
「私もやるよ」
星斗、アンリ、ゴールドナイトが前に出て武器を構え、ダークハイエルフは魔法発動の準備を始める。
「ヴモーーーッ!」
一方、ミノタウロスも星斗達の存在に気づき、巨大な斧を構えながら彼らに向かって突撃してくる。
「ヴモーーーッ!」
「氷結斬!」
「聖光斬!」
星斗とアンリは二方向から同時に魔法剣のスキルを放ち、それがミノタウロスの体を切り裂く。
「ガアアアアア!」
「ハイオーラブレード!」
続いてゴールドナイトが、星斗達の攻撃を受けてひるんだミノタウロスに、強大な魔力の斬撃を放つ。
「シャドウチェーン!」
さらにダークハイエルフが闇系上級魔法を発動すると、ミノタウロスの足元の影から四本の闇の鎖が現れ、それがミノタウロスの全身に巻き付いて動きを封じ、さらに闇属性の大ダメージを与える。
「ヴモーーーーーーッ!」
その闇魔法が致命傷となり、ミノタウロスはその場に倒れて消滅し、そこに魔石(大)が出現した。
「おお! Aランクを瞬殺か!」
「二人共、前の時より確実に強くなってる」
「それにゴールドナイトとダークハイエルフも凄い……ああ、妖狐ちゃんはそのままでいいのよ」
鈴木、成田、明日香は、星斗達の強さに驚いている。
「朝比奈さん。確かに今までとは違う」
「そっちもでしょ。はあ、強くなった私を見せて驚かせようと思ってたのに」
(俺はフェンリルの全属性激化のおかげだけど、朝比奈さんもここまで強くなってるとは……Sランクの天才の力かもしれない)
星斗とアンリは、一緒に戦ってみて、お互いが以前より強くなっていることを認め合う。
「二人共、私達と遜色ない強さね。これならこのダンジョンの踏破記録を塗り替えることができそう」
島は、星斗とアンリの強さを知り、天満ダンジョン攻略のやる気が上がる。その彼女の言葉を聞いて星斗が質問する。
「みなさんは何階まで到達したんですか?」
「地下十階の転移の石碑の部屋までよ。それ以降はまだ誰も踏破したという報告はないわ」
この天満ダンジョンは未踏破ダンジョンで、地下何階まであるのかも、まだ判明していなかった。
「じゃあ、ここのボスのこともわからないんですね」
「そう」
「ボス戦は、詳しい情報がないと危険度が跳ね上がるから、ボス部屋を見つけても当分は入らないわよ」
「そうなんですか」
「私達の目的は、ダンジョンをクリアすることじゃなくて、もっと強くなることだからね」
次回 再戦 に続く




