第四十八話 Sランクユニークスキル
「す、凄い!」
「フェンリルと互角に戦ってる!」
ライトウィングギルドの戦士風の男性と女性が、フェンリルと激しい接近戦を繰り広げている。
「サンダーブレイズ!」
さらに魔力を高めていた魔法使い風の女性が、強大で特殊な雷を放ち、それがフェンリルに直撃する。
「ガガガガガガガガガ!」
フェンリルは全身が感電し、さらにその魂にもダメージを受けていた。
「なんて威力の雷だ!」
「あんな強力な雷魔法、見たことないぞ!」
「グオオオオオオオオ!」
一方、フェンリルは大ダメージを受けても闘志が鈍らず、口から激しく燃える青白い火を吐きだす。それを接近戦をしていた二人が高速の動きでかわす。
「す、凄い戦いだ! 俺達が割って入れるレベルじゃない!」
「そんなことはありません。立花さん」
「はい。聖女の加護!」
浅井のパーティの立花が黄金の杖を掲げて、仲間全員の全能力値を上昇させるスキルを発動する。
「凄い! 力があふれてくるようだ!」
「魔力も強くなってるし、体も軽くなってる!」
「彼女のスキルは、能力値を二倍にしてくれて、さらに失ったHPを徐々に回復してくれます」
「それは凄い!」
「これなら俺達も戦える!」
立花の能力強化スキルによって、この場にいるすべての覚醒者の体が赤いオーラに包まれる。
(二倍か。俺には激化スキルがあるからな)
この世界の能力強化系スキルは、いくらでも重ね掛けできるのだが、その中で一番効果の高いものが適用されるルールだった。つまり星斗が能力値を二倍に強化するスキルを受けても、元々、力が三倍になる力激化(A)を持っているので、その三倍のままだった。
「みんな、攻撃魔法が使える者は、魔法で彼らを援護してください。あのフェンリルのパワーとスピードでは、接近して戦うのは危険です」
「確かに奴の攻撃を一撃でも食らったら終わりだろうな」
「よし、やってみよう」
浅井の指示通り、黒田が風系最上級魔法、酒井が氷系最上級魔法の魔法発動の準備を始める。
「魔法なら俺も!」
「本条君も魔法が使えるの?」
「はい。氷系上級魔法が使えます」
明日香にそう答えながら、星斗も魔法発動の準備を始める。
「浅井さん。このまま魔法を放ったら、前の二人が危なくないですか?」
「心配ないですよ。彼らは戦いながらでも、こっちの動きを把握してます。準備ができたら自由に魔法を撃ってください」
「わかりました。では……アブソリュートゼロ!」
酒井は、離れた場所で戦っているフェンリルを狙って、すべてを凍らせる絶対零度の冷気を放つ。するとその魔法に気づいた前衛の二人が、フェンリルから急いで離れる。だがフェンリルもその氷魔法に気づき、高速の動きでよけてしまった。
「くっ! 速い! これは魔法を当てるのが難しい」
「次は俺だ! スパイラルハリケーン!」
続いて黒田が風のやいばが激しく渦巻く巨大な竜巻を放つ。だがフェンリルはその魔法も高速の動きで回避した。
「黒田さんでもダメか。よく彼女は魔法を当てれたな」
そう言いながら島は、杖を構えて魔法発動の準備をしているライトウィングギルドの魔法使い風の女性を見る。
「彼女の魔法は雷系ですからね。雷を見て避けるなんて普通はできませんよ」
「確かにそうか」
「魔力チャージ完了! サンダーブレイズ!」
魔法使い風の女性が、再び雷系最上級魔法を放ち、それがフェンリルに直撃する。
「ガガガガガガガガ!」
「今だ! コールドストーム!」
フェンリルが感電しているタイミングで、星斗が激しく渦巻く極寒の冷気の嵐を放つ。今の彼の氷系上級魔法は、魔力激化(B)で二・五倍に強化されていた。
「グガアアアアアアア!」
「おお! 当てた!」
「なるほど。感電してる時なら魔法を当てられるか」
「考えたわね。本条君」
「でもまだ倒せそうにないみたいです」
「グルルルルル!」
フェンリルは魔法が飛んできた方向を見て、星斗達をにらみつける。
「グオオオオオアアアアアアア!」
次の瞬間、フェンリルが、星斗達がいる場所に向かって超高速で走り出した。
「うわっ! こっちに来るぞ!」
「戦士系のみなさん! 迎撃をお願いします!」
「了解です」
浅井、前田、榊原、明日香、島が武器を構える。そしてフェンリルが彼らの目前まで接近すると、
フェンリル
ユニークスキル
全能力激化(S) 牙(S) 会心(S)
どれを誰にコピーしますか?
というウィンドウが星斗の目の前に表示された。
(来た! この瞬間を待っていた! この中なら……全能力激化を俺にコピーだ!)
星斗
ユニークスキル(8/10)
ユニークスキルコピー(A) 竜麟(A) 気配察知(B)
全能力激化(S) 召喚(A) アイテムボックス(B)
フレスベルク流魔法剣術(A) 女神ノルンの加護(A)
全能力激化(S)
力、防御、魔力、速さが四倍、
最大HP、最大MPが二倍になる。
(四倍と二倍! 凄すぎる! さすがSランクユニークスキル!)
星斗は「力激化」と「魔力激化」と「速さ激化」を持っていたが、それらが消えて全能力激化が加わったので、ユニークスキル枠が二つ増えていた。
「瞬速乱舞斬!」
「瞬速乱舞斬!」
「ファイナルギガバースト!」
一方、浅井達は必殺技を放ち、それを受けたフェンリルの突撃が止まる。するとライトウィングギルドの戦士風の男性が戻ってきて、フェンリルの前に立つ。
「グオオオオオオオオオ!」
それを見たフェンリルは、素早い動きで戦士風の男性に噛みつく。だがその牙は彼の体をすり抜けて、その直後、彼はフェンリルを狙って斬撃を放っていた。
「むっ。今、噛まれなかったか?」
「牙が体をすり抜けたように見えたが」
「高速の動きでかわしたから、残像が噛まれたように見えたんじゃないか?」
今の攻防を見た酒井や榊原がそう話している。
(あれは彼の摩利支天顕現の物理無効の効果なんだけど、能力のことは話さないほうがいいな。すべての物理攻撃を無効化できる強力なスキルだけど、魔法は防げないという弱点があるし)
酒井と榊原の会話を聞いていた浅井が心の中でそう考える。
「グルルルルル」
一方、フェンリルは、戦士風の男性に自分の攻撃が効かず、さらに今までの攻防でダメージがかなり積み重なっていたので、焦っていた。
「グオオオオオオオ!」
フェンリルは獣の雄たけびを上げた直後、超高速で誰もいない方向へ走り出す。
「むっ! 奴は何をする気なんだ?」
「距離を取って何か……いや、もしかして逃げたのか?」
浅井はフェンリルの動きを警戒していたが、フェンリルは走りを止めずに、そのままこの場からいなくなった。
「やはり逃げたのか」
「ふぅ。何とか全員、生き残れました。これもライトウィングギルドのあの三人のおかげですよ」
酒井は緊張が解けて、その場にしゃがみながら浅井にそう話す。
次回 撤退 に続く




