第四十六話 Sランクモンスター
「国内一位のギルドマスターの戦いが見れる」
「どんな戦い方をするのか楽しみね」
星斗とアンリは、ギガントトロールと十体のトロールへ接近していく浅井達四人を見ている。
「まずはトロールを片付けよう。立花さん。お願い」
「はい」
浅井達は移動を止めて、立花と呼ばれた白いローブを着ている僧侶風の若い女性が黄金の杖を天に掲げる。
「聖女の加護!」
立花が掲げた杖が光りを放ち、浅井達四人の体が赤いオーラに包まれる。聖女の加護は、仲間全員の全能力強化と、戦闘中、失ったHPを徐々に回復する効果があった。
「次は俺の番だな」
「黒田君。頼んだ」
「まかせろ」
黒田と呼ばれた魔法使い風の若い男性が、宝石で装飾された杖を掲げて魔法発動の準備を始める。すると彼の周囲に風が吹き荒れ始める。
「スパイラルハリケーン!」
黒田は風のやいばが舞う猛烈な勢いの巨大な竜巻を作り出し、それを前方へ放つ。
「ガアアアアアアア!」
「ゴアアアアアアアア!」
「ギギャアアアアア!」
黒田が放った巨大な竜巻がトロールの群れを飲み込み、ギガントトロールと十体のトロールの全身を風のやいばが切り刻む。そしてトロール達の全身に傷がどんどん増えていき、その傷が再生される間もなく次々と倒れて全滅し、その場に魔石(大)が四つ出現した。
「す、凄い! 魔法一つでトロールが全滅した!」
「俺達は二つのパーティで六体を相手したのに……」
「あれほどの大規模な魔法、俺でも無理だ。これがライトウィングギルドか」
ドラゴンファングギルドの酒井やギルドメンバー達が、黒田の魔法を見て驚いている。今の黒田の風系最上級魔法は、立花の能力強化スキルで魔力が大幅に上昇しているので、その威力も強化されていた。
「ガアアアアアアアアアアアア!」
黒田の魔法を受けても生き残ったギガントトロールが叫び声を上げ、怒りの表情で浅井達へ向かって来る。
「まず俺が迎え撃つ。その後はまかせた」
「わかった。頼んだよ。前田君」
前田と呼ばれた戦士風の若い男が、豪華な剣に魔力をまとわせ、接近してくるギガントトロールへ向かって走り出す。
「瞬速乱舞斬!」
前田は自分の間合いにギガントトロールが入った瞬間、超高速の連続斬撃を繰り出す。それがギガントトロールの巨体を切り刻み大ダメージを与える。
「ガアアアアアアア!」
だがギガントトロールはまだ倒れず、前田を狙って鋼鉄製の巨大なこん棒を振り回す。
「そんな大振りは当たらん」
前田がギガントトロールの攻撃をかわすと、彼に続いて走ってきていた浅井が、強大な破壊の魔力を宿した聖剣を振り上げる。
「ファイナルギガバースト!」
浅井の聖剣にまとわせた魔力が五メートルを超える長さになり、その剣を振るってギガントトロールに豪快に斬撃を放つ。
「ガアアアアアアアアアア!」
その破壊の魔力の斬撃がギガントトロールの体に直撃し、さらにギガントトロールの足元の地面が大きく陥没する。その後、致命傷を受けたギガントトロールはその場に倒れて消滅し、陥没した地面の中心に宝箱が出現した。
「す、凄い!」
「今のが彼の必殺技か! とんでもない威力だ!」
「あれが国内一位のギルドマスターか!」
今の浅井達の戦いを見ていた覚醒者達や自衛隊員達が驚いている。
「ギガントトロールって、マグマドラゴンと同じAランク上位のモンスターよね。私達があれだけ苦労して倒した同じランクのモンスターを瞬殺って……」
「前田さんの瞬速乱舞斬。私のより速かった。私も強くなったと思ってたけど、まだまだね」
明日香と島も、浅井達の戦いを見て驚いている。
「ちょっと待て。あれだけの強さの人達がライトウィングギルドのエースパーティじゃないってことは、あの三人はもっと強いってことか?」
「確かに浅井さん達より強いって想像できないわ」
星斗とアンリは、日本最強と言われる三人に、ますます興味がわいてきた。
「さあ、先に進みましょう」
宝箱や魔石を回収した後、浅井達を先頭にしてフォルネウス討伐隊が海堂ダンジョンを目指して移動を再開する。そして出現したモンスターを倒しながら彼らが進んでいく途中、ライトウィングギルドのエースパーティの魔法使い風の女性が浅井に話しかける。
「浅井君。右からとんでもない魔力を持つ奴が近づいてくるよ」
「むっ、とんでもない魔力?」
「そう。たぶんSランクでも上位の奴だと思う」
「!!」
その女性の言葉を聞いて浅井の表情が青くなる。
「みなさん! 右方向からSランクモンスターが来ます!」
浅井が右方向を向いて聖剣を抜いて構えながらそう叫ぶ。その声を聞いたフォルネウス討伐部隊全員が右方向を見る。
「Sランクってフォルネウスですか?」
「奴は海堂ダンジョンの近くにいるはずじゃ……」
「わかりません。でも強いモンスターが来るのは確かです」
浅井はエースパーティの魔法使い風の女性の言葉を完全に信じているようだ。
「んー。俺は何も感知できないな」
「いや! 何か来る!」
ドラゴンファングギルドの気配察知を持つ覚醒者でも、そのモンスターを感知することはできなかったが、望遠眼という遠くを見ることができるスキルを持つ覚醒者が、遠くから走ってくるモンスターの姿を発見する。さらに双眼鏡を持つ自衛隊員もそのモンスターの存在を確認する。
「白い奴が来る!」
「巨大な獣型のモンスターだ!」
「ならフォルネウスではないな」
「なっ! この魔力は!」
「ヤバい! とんでもなく強いモンスターだ!」
巨大な獣型のモンスターが接近してくると、魔力感知に長けた覚醒者達がその強大な魔力に恐怖する。
「なっ!」
「速っ!」
フォルネウス討伐隊に接近してきた巨大な獣型のモンスターが、走るスピードを上げて一瞬で彼らの前に迫ってきた。そのモンスターは体長が三十メートル以上ある青白い毛並みの狼のような姿だった。
「グオアアアアアアアア!」
急接近してきた巨大な狼のモンスターが、魔力をまとわせた右前足の爪を振って覚醒者達に襲い掛かる。
「うわわわわわわ!」
「アイギスの盾!」
その攻撃をライトウィングギルドのエースパーティの戦士風の女性が、右手を掲げて巨大な円状のバリアを展開して皆を守る。
「グルルルルル」
攻撃を防がれた巨大な狼のモンスターは、数歩後づさって人間達と距離をとる。
「た、助かった」
「今のは彼女のスキルか」
「浅井! 奴はフェンリル、Sランク上位のモンスターだ!」
ライトウィングギルドの黒田はモンスター鑑定のスキルを持っていて、その巨大な狼のモンスターの正体が判明する。
「フェンリル!?」
「Sランク上位のモンスターだと!」
「フェンリルって、神話の最高神を飲み込んだっていわれている奴か!」
次回 物欲 に続く




