第四十五話 中心部での戦い
「酒井さん。こちらこそ、よろしくお願いします」
「今日はライトウィングギルドの戦い方を勉強させてもらいますよ」
ドラゴンファングギルドのギルドマスター酒井と、明日香、島、浅井が挨拶しているのを、少し離れた場所から星斗と鈴木が見ている。
「あの人がSランク覚醒者で日本最強の氷の魔法使い、酒井さんだ」
「ドラゴンファングギルドには、もうひとりSランクがいますよね」
「ああ、向こうの車から降りてきた日本刀を腰に差しているのが、榊原さんだ」
この基地に到着した自衛隊の車から、長髪で日本刀を帯刀した男性が降りてくる。さらにほかのドラゴンファングギルドのメンバーも続々と降りてきた。
「ライジンギルドとドラゴンファングギルドにいるSランク覚醒者はこれで全員ですけど、ライトウィングギルドのSランクも参加するんですよね」
「日本にいる十一人のSランク覚醒者は全員参加するって言ってたな。ああ、あっちに浅井さんのパーティーの仲間がいるぞ」
鈴木が向いた方向を星斗も見ると、戦士風の男性と、僧侶風の女性と、魔法使い風の男性が、離れた場所で話しているのが見えた。彼らも浅井と同じSランク覚醒者だった。
「あの人達のほかに、ライトウィングギルドにはあと三人いるんですよね」
「ああ、エースパーティの三人だ。でも彼らの姿は見えないな」
鈴木は周囲をキョロキョロと見渡している。
「ギルドランク一位のエースパーティの人達を見てみたかったんですが」
「あの三人は、名前も公開してない謎の人達だからな。まあ、作戦が始まれば会えるだろう」
その後、モンスター支配地域の中心部へ突入する時間になり、覚醒者達と自衛隊の部隊が、海堂ダンジョンへ続く道路へ集結する。ここからは部隊を三つに分けて、Sランクモンスター、フォルネウスを討伐する部隊と、中心部にいるほかのモンスターの駆除する二つの部隊に分かれて突入する予定だった。
「外周部より中心部のほうが高ランクモンスターが多いから、私達の出番が増えるわよ」
「でもこれだけの覚醒者がいると心強いですね」
星斗は、島に周囲にいる日本のSランク覚醒者の姿を見ながらそう話す。彼はアンリと一緒に、フォルネウスを討伐する部隊にサポート要員として参加していた。
「本条君、あの三人だ」
鈴木にそう言われ星斗がその方を見ると、ライトウィングギルドの浅井のそばに、戦士風の男性、戦士風の女性、魔法使い風の女性の三人の姿が見えた。
「あの人達が日本最強のSランク覚醒者……」
戦士風の男性は、目にゴーグルをつけ、マフラーを首に巻いて顔を半分隠していて、腰に剣を装備している。その隣にいる戦士風の女性は、剣と全身鎧を装備していて、頭に口元だけ見える兜を装備している。そして魔法使い風の女性は、杖とフード付きのローブを装備していて、フードをかぶって色のついた大きな眼鏡をかけているので、彼女の顔もよく見えなかった。
「あの全身鎧の女性は口元だけしか見えないけど、絶対、美人だ……」
星斗のそのつぶやきが聞こえていたアンリが彼に話しかける。
「へー、本条君はあんな感じが好みなんだ」
「えっ? ええと……」
「まあ、私もあの人は美人だと思うけど、さらに強いんだからまいっちゃうわよね」
(朝比奈さんも同じだと思うけど……)
星斗はアンリの顔を見ながらそう考える。
「ん? 何?」
「い、いや。何でもない」
「そろそろ出発します」
自衛隊員の言葉で、星斗はほかの覚醒者達や自衛隊員と共に中央部へ向けて道路を歩いていき、その後ろに数台の自衛隊の装甲車が歩くスピードでついていく。
モンスター支配地域は、外周部より中央部の方が高ランクのモンスターが徘徊しているので、彼らはいきなり強いモンスターに襲われてもすぐに対応できるように歩きで移動していた。そして装甲車は、物資の運搬と、ここでの戦いで怪我をして動けなくなった者を運ぶために同行していた。
「前方にモンスターの群れを発見!」
「あれは……トロールだ! トロールが六体いるぞ!」
星斗達の前に現れたのは、身長が二メートル以上あり、緑色の肌の人型で太った姿のBランクモンスター、トロールだった。トロール達は鋼鉄製のこん棒を装備している。
「ここはうちのギルドが戦います。俺達は、なるべく力を温存しておいたほうがいいので、うちのAランクにまかせましょう」
ドラゴンファングギルドのギルドマスター酒井が、浅井や明日香にそう提案する。
「では、ここはドラゴンファングギルドにおまかせします」
「了解です。第二パーティ、第三パーティ! 出番だ!」
「はい!」
ドラゴンファングギルドのAランク覚醒者達が前に出る。
「トロールは再生能力を持っていて、少しくらいの傷ならすぐに再生してしまう。だから攻撃する時は、高威力の攻撃を集中させて回復する隙を与えないで倒すぞ」
「了解!」
「まだ奴らはこちらに気づいてない。魔法で先制攻撃しよう」
「おう!」
「まかせて!」
ドラゴンファングギルドの魔法使い達が魔法発動の準備を始める。
「よし、そろそろだな。アーチャー!」
「おう。始めるぞ」
ドラゴンファングギルドの弓使いが、矢に魔力をまとわせ、トロールを狙って放つ。
「オーラアロー!」
弓使いが放った魔力を帯びた矢が、一番近くにいるトロールに向かって飛んでいく。
「ガアアアアアアア!」
そのトロールの腹部に矢が命中し、ほかのトロール達も人間達の存在に気づく。
「グオオオオオオ!」
怒ったトロール達が、その巨体を揺らしながら走ってくる。だがその巨体ゆえに移動速度は遅かった。
「よし、今だ! 放て!」
「バーストフレア!」
「サンダーストーム!」
「サイクロン!」
六体のトロールに魔法使い達の攻撃魔法が次々と命中しダメージを与える。
「よし! 畳みかけるぞ!」
「おう!」
「いけーーーっ!」
「うおおおおおおお!」
続いて武器を構えた戦士達が、魔法のダメージを受けて足止めされたトロールに向かって走りだし、攻撃スキルを使って次々とダメージを与えて倒していく。
「おお! トロールはBランクでも上位のモンスターなのに一方的だな!」
「さすがドラゴンファングギルド。層が厚い」
ほかの覚醒者達が、彼らの活躍を見てそう話していると、すぐに六体のトロールは全滅した。
「敵の全滅を確認」
「周囲にモンスターの気配はありません」
「よし、先に進むぞ」
星斗達はさらに海堂ダンジョンへ続く道路を進んでいく。すると、
「むっ! またトロールの群れ……いや、それだけじゃない! あれは……ギガントトロールだ!」
前方に十体のトロールがいて、その奥にさらに身長が四メートルを超える巨大な体のトロールがいた。それがトロールの上位種でAランクモンスター、ギガントトロールだった。ギガントトロールは、トロールの物よりさらに大きな鋼鉄製のこん棒を持っている。
「ギガントトロールか。なら今度は俺達が出ます」
浅井がそう言いながら腰の剣を抜き、それを見た酒井が声をかける。
「今度はライトウィングギルドの力を見せてもらいますよ」
「任せてください。みんな、行くぞ!」
「おう!」
「支援はまかせて」
「ギガントトロールは、トロールより再生能力が高いから、速攻で決めるぞ」
浅井と彼の仲間の三人が、武器を構えながらトロールの群れへ向かって歩いていく。
次回 Sランクモンスター に続く




