第四十〇話 実力差
「二回戦も凄い試合だった。予選とは違うな」
「そりゃ、決勝トーナメント戦だからな。勝ち上がってるのは、強い奴等ばかりだし」
決勝トーナメントの一回戦、第一試合と第二試合を観戦した生徒達は、その戦いのレベルの高さに驚いている。
(これはまずい……どうしよう)
一方、審判に名前を呼ばれ、戦闘舞台へ歩いていく星斗は、表情を変えずに心の中で焦っている。
(全力では戦えない。元々、使うスキルを絞って戦おうと思っていたけど、それだけじゃ駄目だ)
星斗はこれまでの試合を見て、自分が強くなりすぎたことに気づいた。彼はほかの生徒達がユニークスキルが最大三つなのに、自分だけ九つ使えるのは不公正だと思い、スキルをシルバーナイト召喚、ハイオーラブレード、アイスバレットだけで戦おうと事前に考えていた。
(失敗した。炎の剣と氷河の鎧を装備してきてしまった。もっと弱い装備で来ればよかった)
彼が装備している武器と防具も、普通の生徒が入手できるような物ではなかった。
(今から装備を変えるのもおかしいし、いや、指輪ならいけるか)
星斗は、歩きながら怪力の指輪、防壁の指輪、麻痺無効の指輪をアイテムボックスに収納する。
(この程度じゃ、あまり意味ないな。手加減しながら、それがばれないようにしないと)
星斗は自分の本当の強さがばれると面倒なことになると考え、どう戦えばいいのか考えながら戦闘舞台の上に移動する。同時に剣と盾と鎧を装備した対戦相手の男子生徒も戦闘舞台の上に移動する。すると、
林慎吾
剣術(A) 力激化(B) 最大HP激化(C)
どれを誰にコピーしますか?
とウィンドウが表示され、
(そうだ。コピーしないと。ええと……剣術をシルバーナイトにコピーだ!)
シルバーナイト
ユニークスキル(3/3)
剣術(A) 力激化(A) 防御激化(B)
スキル
オーラブレード ハイオーラブレード
魔法障壁 竜麟斬り
(これで剣術がBからAになって、シルバーナイトも竜麟斬りが使えるようになった)
ユニークスキルのコピーを終えた星斗は、戦闘舞台の上で炎の剣と精霊の盾を構えて、対戦相手の林と対峙する。
「あの一組のモンスター使いも優勝候補だ。どんな戦いをするのか楽しみだ」
「相手の林も、二組でトップクラスの強さだぞ。簡単には負けないはずだ」
戦闘舞台の上にいる星斗と林が対峙しているのを見て、観戦している生徒達はいい試合を期待している。
「では試合開始!」
「うおおおおおおおお!」
試合開始直後、林は剣と盾を構えたまま星斗に向かって突撃する。
「ハイオーラブレード!」
星斗に接近した林は、膨大な魔力をまとわせた剣で斬撃を繰り出し、星斗はその一撃を精霊の盾で防御する。
「うおおおおおおお!」
さらに林は連続で斬撃を繰り出し続ける。それに対し星斗は、相手の動きをよく見ながら精霊の盾で防御している。
「あれじゃ、モンスターを召喚できない!」
「なるほど、モンスターを召喚させない作戦か!」
(予選の優勝候補だった後藤君と同じ作戦か。あの試合を見てたのかな。でも竜麟のおかげか、攻撃が軽く感じる……反撃しようと思えばできるけど、ちょっと待つか)
星斗は冷静に林の連続斬撃を防御している。一方、林は試合開始から全力で攻撃し続けていたが、その疲れで斬撃の勢いが弱まる。
「くっ!」
手の握力がなくなってきた林は、バックステップして星斗から距離を取る。
「シルバーナイト召喚!」
その隙に星斗は召喚の魔法陣からシルバーナイトを呼び出した。
「ああ、召喚されてしまった!」
「これで二対一だ。これで林は厳しくなったな」
「はぁ、はぁ、はぁ……」
林は剣と盾を構えたまま息切れしている。
「シルバーナイト! 一緒に行くぞ!」
「はっ。召喚者殿に勝利を!」
星斗は炎の剣に火をまとわせ、シルバーナイトは銀の剣を構えながら同時に走りだし、林の左右から接近する。
「ちっ! 回転斬り!」
一方、林は剣に魔力をまとわせ、体を回転させながら水平に剣を振って剣の魔力を飛ばして周囲を攻撃する剣技を放つ。
「はっ!」
それを見た星斗とシルバーナイトは、走りながら盾でその魔力を防御する。
「なっ!」
林の回転斬りは足止めにもならず、星斗とシルバーナイトは林に接近し同時に斬撃を放つ。
「うりゃあっ!」
「ぐあああああああああ!」
林は星斗の斬撃を盾で受け止めたが、同時に放たれたシルバーナイトの斬撃を体に受けて全身に衝撃が走り、彼の身代わりバッチが砕けた。
「勝者! 本条選手!」
(ふぅ、何とか自然な感じで勝てた。シルバーナイトの剣術もAになったし、大成功だ)
星斗はシルバーナイトを帰還させて、戦闘舞台から降りて待機席に戻る。その後、試合は順調に進み、次の星斗の戦いが始まろうとしている。
「それでは準決勝、第二試合を始めます。本条選手! 池田選手! 戦闘舞台に上がってください!」
戦闘舞台の上に星斗と、彼と同じクラスで豪華な杖を持った魔法使い風の女子生徒が上がる。すると、
池田美鈴
火魔法(A) 雷魔法(A) 魔力激化(B)
どれを誰にコピーしますか?
とウィンドウが表示され、
(池田さんは魔法特化タイプだな。じゃあ、雷魔法をダークエルフにコピーだ!)
ダークエルフ
ユニークスキル(3/3)
闇魔法(B) 雷魔法(A) 魔力激化(A)
スキル
ダークボルト ダークスマッシャー
サンダーボルト サンダーウェーブ
サンダーストーム 魔法障壁
サンダーストーム
大量の雷を嵐のように放つ
雷系上級魔法
消費MP 40
(よし。雷魔法がAになって上級魔法が使えるようになった。後は彼女を倒すだけだけど、魔法の発動が早いんだよな)
池田は詠唱短縮のスキルを持っているので、一対一の戦いで不利といわれてきた魔法使いでも、ここまで勝ち上がってこれていた。
(彼女は火か雷の魔法で攻撃してくるだろう。でもこっちは魔法障壁は使えない。戦士系の俺が、魔法使い系の彼女より魔力が高い可能性がある)
池田と同じ魔力激化(B)を持つ星斗は、自分の魔力の高さをばれないようにするには、どうすればいいか考える。
(彼女の魔法を受けても、竜麟と魔力激化と精霊の盾のおかげで大きなダメージにはならないはず。ここは強引に行こう)
「では準決勝、第二試合開始!」
審判が試合開始を宣言すると、池田は魔法発動の準備を始め、星斗は精霊の盾を構えながら、彼女に向かって突撃する。
「サンダーウェーブ!」
池田は、突撃してくる星斗を狙って強力な電撃を放つ。
「ぐっ!」
その電撃が星斗に命中するが、彼の突撃は止まらず、そのまま池田に接近する。
次回 決勝戦 に続く




