第三十四話 マグマドラゴン戦
「ハイオーラブレード!」
「オーラクラッシュ!」
鈴木がマグマドラゴンの正面に立って注意を引き付け、その隙に明日香と島が攻撃する。
(私の火の魔法剣は、こいつにはあまり効かない。魔力の斬撃で地道にHPを削っていくしかない。ああ、本条君の氷の魔法剣なら、こいつに大ダメージを与えられるけど、彼に無理はさせられないわ)
「ハイオーラブレード!」
「ギャオオオオオオオオオオオオス!」
マグマドラゴンは明日香達の攻撃を受けながらも、魔力を帯びた尾を豪快に振り、周囲にいる三人を攻撃する。そのマグマドラゴンのドラゴンテールを、明日香と島は素早い動きで回避し、鈴木は防御スキルを発動して盾で受け止めようとする。
「ミラクルガード! ぐあああっ!」
鈴木は、マグマドラゴンのドラゴンテールによって全身に衝撃を受けて数メートル飛ばされてしまう。
「ま、まだまだ!」
だが彼はすぐに態勢を立て直して走りだし、再びマグマドラゴンの前に立つ。
「いくよー! ボルトカノン!」
成田のその声を聴いて、前衛の明日香達は急いでマグマドラゴンから離れ、彼女は雷系最上級魔法を放つ。
「ガガガガガガガ!」
そのレーザーのような高威力の電撃が、マグマドラゴンに直撃して全身を感電させたが、マグマドラゴンはふらつきもせずに口を大きく開け、近くにいる鈴木を狙って口から火をまとった岩を吐きだす。
「グオアアアアアッ!」
「火炎岩か! ミラクルガード!」
マグマドラゴンが吐き出した火炎岩を、鈴木は防御スキルを発動して盾で身を守る。
「ぐおおっ!」
だが鈴木は、猛烈な勢いで飛んできた火炎岩によって、全身に大ダメージを受けた。
「瞬速乱舞斬!」
必殺技を使う機会を探していた明日香は、目で追えないほどの超高速の斬撃を繰り出した。それが火炎岩を吐きだした直後のマグマドラゴンのうろこを切り裂いて破壊する。だが破壊できたのは十数枚のうろこだけで、マグマドラゴンを倒せるほどのダメージは与えられなかった。
「竜のうろこが硬すぎるんだわ。それに強い竜族は竜麟のユニークスキルを持ってるから、物理攻撃も魔法攻撃も効きづらい」
(さすがのSランク覚醒者も、Aランク上位のドラゴンには苦戦するみたいだな……ん?)
アンリと星斗が、明日香達とマグマドラゴンとの戦いを見ていると、星斗が気配察知で後方からモンスターの気配を感じ取る。
「なっ! 危ない!」
星斗が振り向くと、黒い短剣を持った黒い人型のモンスターが、成田に向かって短剣を投げようとしていた。それを見た彼は、急いで彼女の後方へ移動して盾を構える。一方、その黒い人型のモンスターは、持っていた黒い短剣を全力で成田を狙って投げるが、星斗が魔法の盾でその短剣を弾いた。
「えっ?」
「なっ!」
アンリと成田は、いきなり現れた黒い人型のモンスターと、それに気づいて攻撃を防いだ星斗に驚く。
「あいつはシャドウアサシン!」
成田はそのモンスターが、Aランクモンスターのシャドウアサシンだということを知っていた。シャドウアサシンは闇系の人型モンスターで、顔を黒い布で隠し、体には黒い服を着て、首には黒いマフラーをしていた。
「奴のランクは?」
「Aランクの下位よ。でも奴は影の中に入るスキルを持ってるの」
「影の中ですか……」
(今回は気配察知が役に立った。もしなかったら奴の存在に気づけなかった)
一方、攻撃を防がれたシャドウアサシンは、新たな黒い短剣を取り出して右手に持ち、星斗、アンリ、成田と対峙する。その様子に明日香が気づく。
「くっ、アンリちゃんを助けに行きたいけど、手が離せない。本条君! さっき手に入れた炎の剣とか好きに使っていいから、そいつの相手をしてて! こっちを片づけたらすぐに行くから!」
「は、はい!」
星斗はアイテムボックスから、イフリートがドロップした炎の剣と、ウェンディゴがドロップした氷河の鎧を装備する。アイテムボックスは、取り出す時、今装備している装備品とアイテムボックスに収納している装備品を入れ替えることができるので、星斗は瞬時に炎の剣と氷河の鎧を装備する。
炎の剣 攻+70 火属性武器
氷河の鎧 防+60 火属性攻撃半減
「本条君、アンリちゃん。シャドウアサシンを倒すには私達だけでは戦力が足りないわ。明日香の言う通り、足止めすることだけを考えて」
「でもお姉ちゃん達でも、マグマドラゴンをすぐに倒すことは難しいんじゃ……」
「それはそうだけど……」
「戦力ならあります。召喚! シルバーナイト! ダークエルフ!」
星斗は召喚のスキルを発動し、目の前にシルバーナイトとダークエルフが現れ、それを見て成田が驚く。
「本条君、モンスターを召喚できたの?」
「はい。呼び出したモンスターは、俺と同じレベルになります」
「それなら何とかなるかもしれないわ」
「よし。シルバーナイトは成田さんとダークエルフを守れ。ダークエルフは隙をみて雷魔法を使ってくれ。奴は闇属性みたいだから、闇魔法は効かないはず」
「はっ! 召喚者殿に勝利を!」
「了解しました」
(本条君のダークエルフって雷魔法も使えるのか。普通のダークエルフは雷魔法なんて使えないから、やっぱり普通の召喚じゃないんだ)
星斗達のやりとりを聞いたアンリは心の中でそう考える。
「朝比奈さん。俺と一緒に前衛で戦おう」
「わかった。私は光の魔法剣を使うわ」
「了解」
星斗とアンリが前衛に立ち、成田とシルバーナイトとダークエルフが後衛に立つ。
「……」
一方、シャドウアサシンは、奇襲が失敗し、さらにシルバーナイトとダークエルフが現れたので簡単には動けずにいたが、いきなり部屋の中の柱の影に飛び込み、そのまま消える。
「影の中に入った!」
「あれがシャドウアサシンの影隠れよ。それに影移動のスキルで、つながってる影の中を移動できるの」
シャドウアサシンと戦ったことのある成田が、星斗とアンリにそう話す。シャドウアサシンが入った柱の影は、部屋内のほかの影とつながっていた。
「つながってない影には移動できないんですよね」
「そう。だから、いきなり私たちの影の中から現れるとかはないわ」
「なるほど」
(奴が影に入ってから、気配察知で何も感じない。影の中にいる時は気配を完全に消せるのか。やっかいな……)
星斗とアンリは、どこからシャドウアサシンが現れてもいいように周囲を警戒し、成田とダークエルフは魔法発動の準備をしている。
「どこからくるかな」
「奴は短剣を持ってた。短剣は攻撃力はそれほどでもないから、たぶん防御力の低い成田さんかダークエルフを狙ってくるはず」
「さっきも成田さんを狙ってたものね」
「あっ!」
「危ない!」
「えっ?」
明日香と島の声を聞いて星斗達が後ろを振り向くと、マグマドラゴンが吐き出した火炎岩が彼らに向かって飛んできていた。
次回 シャドウアサシン戦 に続く




