第三十三話 イフリート戦
(これでダークエルフの魔力激化がBからAになった。それはいいけど……)
星斗は、イフリートが火魔法(A)と魔力激化(A)持っていることを知り、恐怖する。
(Aランクの火魔法に、Aランクの魔力激化……俺の魔法障壁じゃ、イフリートの魔法を防げない……)
星斗の持つ魔法の盾は、攻撃魔法の威力を二割カットできるのだが、それでも彼がイフリートの魔法を受けたら大ダメージを受けることになる。そのことに気づいた星斗は、足が止まり体が震えだした。その様子に明日香が気づく。
(へー。戦う前にイフリートの強さを感じ取ったのか。アンリちゃんが彼のことが気になってるのもわかるわ)
「本条君。無理しないで下がってていいよ」
「は、はい。そうさせてもらいます」
星斗は魔法の盾を構えながら、ゆっくりと後ろへ下がっていく。
「さあ、いきましょう!」
「おう!」
「まかせて!」
明日香の掛け声で、前衛の三人がイフリートへ走って接近していく。一方、イフリートは大量の火を作り出して魔法を発動する。イフリートは詠唱短縮のスキルを持っているので、短時間で魔法を発動することができた。
「バーストフレア!」
イフリートは巨大な火の鳥を作り出し、走ってくる明日香達を狙って放つ。その火系上級魔法を見た明日香は、素早く先頭に立って剣に魔力をまとわせて豪快に振るう。
「魔力断!」
その魔力の斬撃が、迫ってきた火の鳥を真っ二つに切り裂いて消滅させる。
「今よ!」
「おう!」
「はああああ! オーラクラッシュ!」
三人は、魔法を発動した直後のイフリートに接近し、島と鈴木が攻撃を始め、そこに明日香も加わってイフリートを取り囲む。
「凄い連携だ。あれではイフリートはもう魔法を使えない。俺とシルバーナイトもあのくらい連携できれば……」
星斗は明日香達の戦い方を見て、自分達の戦いの参考にしようとしている。
「ガアアアアアアッ!」
防戦一方だったイフリートは、右手を巨大化させ、一番近くにいる鈴木を狙って突き出す。これはフレイムハンドというイフリートの火系物理スキルだった。
「ミラクルガード!」
それに対し鈴木は、防御スキルを発動してフレイムハンドを盾で受けとめる。ミラクルガードは、防御した後、瞬時に使用者のHPを回復するスキルだった。そのスキルのおかげで、彼は大きなダメージは受けなかった。
「みんな! 離れて!」
魔法発動の準備が完了した成田が、前衛の三人に向かってそう叫び、明日香達は急いでイフリートから離れる。
「ボルトカノン!!」
成田はイフリートを狙って高威力のレーザーのような電撃を放つ。その雷系最上級魔法がイフリートに直撃し、その全身を感電させる。
「ガガガガガガガガ……」
それが致命傷となって、イフリートは霧散するように消滅した。そしてその場に宝箱が出現し、星斗はレベルが36になった。
「おお! イフリートを倒した! でも火の体が感電するって、なんか変な感じがするな」
「そこらへんはよくわかってないのよね。イフリートの火の体に、剣の攻撃でダメージを与えられるし」
その星斗とアンリの会話を聞いた成田が、二人の会話に加わる。
「超常の存在のモンスターには、現代科学の常識は通用しないのよ」
「何でですか?」
「さあ? そういうものだと思って対応するしかないでしょ」
「さあ、宝箱、宝箱」
明日香はイフリートがドロップした宝箱を開ける。すると中に豪華な鞘に入った剣が入っていた。それを彼女は手に取り、簡易鑑定でその名前を調べる。
「炎の剣だって。イフリートらしいドロップアイテムね。ああ、本条君、お願いね」
「はい」
星斗は宝箱のある場所まで走っていって、炎の剣をアイテムボックスに収納する。
「さあ、先に進みましょう」
星斗は前衛をアンリと交代して、後衛の成田と一緒に地下三階を進んでいく。
(俺も魔力激化を習得すれば、魔法障壁が強くなるんだけど、捨てるユニークスキルがない)
星斗は自分のステータスボードのユニークスキル欄を見ながら考える。
ユニークスキル(10/10)
ユニークスキルコピー(B) 物理耐性(B) 剣術(A)
気配察知(B) 力激化(A) 氷魔法(A) 召喚(A)
アイテムボックス(B) 取得経験値増加(A) 幸運(A)
(この中だと、気配察知か……いや、気配察知があると敵の奇襲が防げるし、戦いの時もこれのおかげで敵の動きがよくわかるような気がするんだよな。ならあまり使わない氷魔法を……いや、魔法はいざという時のために持っておきたい。うーん)
星斗は心の中で悩みながら歩いていく。
(まあ、まだ俺はAランクモンスターと単独で戦うことはないから、後で決めよう。それまでは魔法の盾みたいに魔法耐性の高い装備でごまかそう)
その後、明日香達がモンスターを倒しながら地下三階を歩いていくと、比較的広い部屋の入口に到着する。
「そろそろ地下三階の転移の石碑のある場所に着くから、そこで今日の探索は終わり……」
「むっ! あれは……」
明日香が皆に話している途中、島が広い部屋の奥のほうに巨大な四つ足のモンスターがいることに気づく。
「あの巨体は……マグマドラゴン! こんな浅い層で出てくるとは!」
出現したのは、体長が十メートルを超えていて、全身が赤いうろこでおおわれているAランクモンスターのマグマドラゴンだった。
「前にあいつと戦ったのは地下十階だったよな」
「そうよ。どうやら前回はたまたま地下十階で遭遇しただけで、奴は浅い層でも出現するみたいね」
「ちっ、運が悪い……」
島と鈴木は、マグマドラゴンとは戦いたくない様子だった。
「ギャオオオオオオオオオオオオス!」
「むっ、背中に翼がないのは同じだけど、あいつはアースドラゴンより強い感じがする」
「そうね。アースドラゴンはBランク最上位だけど、マグマドラゴンはAランクモンスター上位だからね。それでもレッドドラゴンとかの最上位の奴等よりはましだけど」
星斗は成田の話を聞いて、マグマドラゴンの強さを理解する。
「それで、みなさんなら倒せますよね」
「倒したことはあるけど……その時は前衛の三人はボロボロになってたわ。まあ、大怪我してもフルポーションがあるから治せるけど、死ぬほど痛い思いをすることになるわ」
一方、前衛の四人は集まって話し合っている。
「明日香、どうするの? 逃げる?」
「私達は前に戦った時より強くなってるから、前回のように苦戦はしないはず。奴のスキルと戦い方もだいたい把握してるし、戦いましょう」
「やるんだな。わかった。ガードブースト!」
明日香の戦う意思を聞いた鈴木が、仲間全員の防御力を上げるスキルを発動する。
「マジックブースト!」
さらに成田が、仲間全員の魔力を上昇させるスキルを発動し、星斗達は防御力と魔力が強化された。
「アンリちゃんは後衛で本条君と待機してて」
「うん。お姉ちゃん、気を付けて」
前衛にいたアンリは急いで後方へ下がり、星斗と成田と合流する。
「本条君とアンリちゃんは自分の身を守ることを優先して」
「はい」
「わかりました」
(マグマドラゴンほどの強いモンスターなら、ユニークスキルも強いのを持ってるはず。何とかして十メートル以内に近づけないだろうか)
星斗は魔法の盾を構えながら、マグマドラゴンの動きと明日香達の動きを観察している。
次回 マグマドラゴン戦 に続く




