第三十二話 ウェンディゴ戦
ウェンディゴは、頭に二本の鹿の角があり、全身が白い毛でおおわれている人型のAランクモンスターだった。
「グオオオオオオオオッ!」
星斗達の存在に気づいたウェンディゴが叫び声を上げ、全身が赤いオーラに包まれる。
「あれは自分の攻撃力を上げる能力強化系スキルの『怪力』だ!」
「ウェンディゴはAランク中位のモンスターよ! 吹雪のブレスを吐くから気を付けて!」
「はい!」
鈴木と島が星斗にそうアドバイスする。彼らはウェンディゴと何度も戦っているので、その特徴を知っていた。
「四人で奴を取り囲んで攻撃しましょう。本条君は奴の後ろにまわって、隙がある時だけ攻撃して」
「わかりました」
「ガードブースト!」
鈴木が仲間全員の防御力が上昇する能力強化系スキルを発動する。
「おお! 鈴木さん、ありがとうございます!」
「うむ。奴の注意は俺が引き付けるから心配するな」
「はい!」
星斗達は、鈴木を先頭にしてウェンディゴにゆっくりと接近していく。すると、
ウェンディゴ
ユニークスキル
氷魔法(A) 格闘術(B)
どれを誰にコピーしますか?
と星斗の目の前にウィンドウが表示され、
(俺に氷魔法をコピーだ!)
ユニークスキル(10/10)
ユニークスキルコピー(B) 物理耐性(B) 剣術(A)
気配察知(B) 力激化(A) 氷魔法(A) 召喚(A)
アイテムボックス(B) 取得経験値増加(A) 幸運(A)
(よし、氷魔法がBからAに上がった! これで俺も上級魔法が使える!)
コールドストーム
冷気の嵐を作り出して放つ
氷系上級魔法
消費MP 40
「ガアアアアアアア!」
ウェンディゴが叫び声を上げながら走りだし、先頭にいる鈴木へ飛び掛かかって、魔力をまとわせた拳で連続で荒々しく殴りかかる。それを鈴木は盾ですべて受け止める。その攻防の隙に、明日香と島はウェンディゴの左右に移動し、星斗は後方に回り込む。
「烈火斬!」
「オーラクラッシュ!」
ウェンディゴの左右に移動した明日香と島が、同時に物理スキルを発動して攻撃する。さらに鈴木も剣と盾で攻防を続けている。
(奴は氷魔法を使えるようだけど、みんなが連続で攻撃してるから魔法が使えないんだろうな。よし、俺もそろそろ行ってみるか)
ウェンディゴの後方で攻撃の隙をうかがっている星斗は、風のやいばに魔力をまとわせ、明日香達の攻撃を受けた直後のウェンディゴに接近する。
「ハイオーラブレード!」
星斗の強烈な魔力の斬撃がウェンディゴの背中に直撃する。今の星斗の剣技は、力激化(A)によって劇的に強化されていた。
「ガアアアアアアア!」
星斗の一撃は、確実にAランクモンスターのウェンディゴにもダメージを与えていた。だがウェンディゴは全身が傷だらけになっても倒れずに振り向き、今の攻撃を放った星斗をにらみつける。
「むっ!」
「させない! 烈火斬!」
星斗へ攻撃がいかないように明日香が火の斬撃を放ち、ウェンディゴは魔力をまとわせた両腕でその攻撃を防御する。だが明日香の火の斬撃の威力が高く、その両腕が燃えて黒焦げになった。
「グオオオオオオオオッ!」
両腕にダメージを受けて痛みを感じたウェンディゴは、今度は明日香の方を見て彼女をにらみつける。
「こんどはこっちよ! オーラクラッシュ!」
そこへ島が大剣で魔力の斬撃を放ち、鈴木もそれに続いて剣で攻撃する。そられの連続攻撃によってウェンディゴは追い込まれていく。
「ブフアアアアアアア!」
しばらく防戦一方だったウェンディゴは、火の斬撃を使える明日香を狙って口から吹雪のブレスを吐きだした。それが彼女の全身を飲み込む。
「お姉ちゃん!」
その様子を見ていたアンリが叫ぶ。すると吹雪に飲み込まれたはずの明日香は、いつの間にかウェンディゴから離れた場所に立っていた。
「お姉ちゃん!」
「凄い! 今の動き、まったく見えなかった!」
星斗には吹雪のブレスに飲み込まれた明日香が、今いる場所に瞬間移動したかのように見えた。
(ふぅ、危ない危ない。絶対回避がなかったら大ダメージを受けていたわ)
明日香は攻撃を完全に回避するスキル「絶対回避」を使って、今の吹雪のブレスを回避していた。ただ絶対回避はクールタイムが三時間あるので、使いどころを考える必要があるスキルだった。
「みんな! 離れて!」
魔法の準備をしていた成田がそう叫び、星斗達はウェンディゴから急いで離れる。
「ボルトカノン!!」
成田は直径一メートルを超えるレーザーのような強力な電撃をウェンディゴを狙って放った。それが一瞬でウェンディゴに到達して命中し、全身を感電させる。
「ガガガガガガガ……」
その雷系最上級魔法によってウェンディゴは意識を失って前のめりに倒れて消滅した。そしてその場に宝箱が出現し、星斗はレベルが35になった。
「よし、倒した」
「ナイス! あずさ!」
「本条君もお疲れ」
「は、はい」
(レベルが上がって嬉しいが……これがAランクモンスターか)
星斗は初めてのAランクモンスターとの戦いの緊張で、全身に汗をかいていた。
(俺の攻撃は確かにウェンディゴにダメージを与えていた。だけど、朝比奈さんのお姉さん達と比べたら、まだまだだ。たぶんレベルが違いすぎるんだろう。俺よりかなり前からダンジョンに潜ってるんだろうし)
星斗は明日香達との実力の差を感じていた。
「さて、宝箱の中身は何かな?」
明日香が宝箱の蓋を開ける。すると中に青白色の豪華な鎧が入っていた。
「これは……氷河の鎧ね。本条君。お願い」
「はい」
星斗は、宝箱の中の氷河の鎧をアイテムボックスに収納して、その後、アンリのいる場所に行く。
「朝比奈さん。前衛の交代をお願い。今の戦いで精神的に疲れた」
「わかった。よーし! やっと私の出番ね!」
その後、アンリが前衛を担当し、星斗は成田と共に後衛でダンジョン探索を再開する。
「明日香、今日はどこまで潜る?」
「そうねー。ルーキー達もいるし、地下三階の転移の石碑までかな」
「了解」
明日香と島が、そんな話をしながら地下二階を進んでいく。その間、アンリも星斗と同じように前衛で明日香達の補助的な戦いをしながら進んでいく。その後、星斗は疲れが癒えて元気を取り戻し、彼らが地下三階に到着した時、アンリと前衛を交代する。すると、
「むっ、ミノタウロスが二体か」
星斗達は再びミノタウロスと遭遇し、星斗は、力激化(A)をシルバーナイトにコピーした。
シルバーナイト
ユニークスキル(3/3)
剣術(B) 力激化(A) 防御激化(B)
そして彼らはそのミノタウロスを倒し、さらに地下三階を進んでいくと、星斗が見たことのないモンスターが現れた。
「むっ、炎の人?」
「あれは……イフリートね」
現れたのは、火が人の姿になって宙に浮いているAランクモンスター、火の精霊イフリートだった。
「奴は火の魔法が得意なモンスターよ! 魔法障壁をいつでも使えるように準備ね!」
「了解です」
島は星斗にそうアドバイスし、前衛の四人とイフリートの距離が縮まると、
イフリート
ユニークスキル
火魔法(A) 魔力激化(A) 最大MP激化(B)
どれを誰にコピーしますか?
と星斗の目の前にウィンドウが表示され、
(火魔法も捨てがたいけど、今はダークエルフに魔力激化をコピーだ!)
ダークエルフ
ユニークスキル(3/3)
闇魔法(B) 雷魔法(B) 魔力激化(A)
魔力激化(A)
魔力が三倍になる。
次回 イフリート戦 に続く




