第二十八話 ライジンギルド
「くっ。さすがに硬い」
星斗は長期戦のことも考えて、アースドラゴンにスキルを使わずに風のやいばで斬撃を放つが、その全身をおおう茶色のうろこが硬く、大きなダメージを与えられなかった。
「やはり、こいつで戦うしかない。竜麟斬り!」
「竜麟斬り!」
「ハイオーラブレード!」
「ゴアアアアアアアアアアアッ!」
星斗、アンリ、シルバーナイトが、アースドラゴンを取り囲んで物理スキルで三方向から攻撃し、アースドラゴンもドラゴンテールや噛みつき攻撃などで応戦している。
「これだけみんなで攻撃してるのに、まだ倒れそうにない」
「アースドラゴンは竜麟のユニークスキルを持ってるから、物理攻撃も魔法攻撃もダメージが通りにくいんです。それに最大HP激化も持ってますし」
アースドラゴンから離れた場所で、魔法の準備をしている智也と美亜がそう話している。最大HP激化は最大HPが増えるユニークスキルで、竜麟と相性がよく、アースドラゴンが強い理由のひとつになっていた。
「そろそろ十分くらい経つんじゃないか?」
「はい。またいつ砂嵐のブレスが来てもおかしくないです」
智也が腕時計を見ながら美亜と話している。アースドラゴンは、砂嵐のブレスのクールタイムが終わっていたが、前衛の星斗達が自分を取り囲むように位置取りしてるので、ブレスを使うタイミングをうかがっているようだった。
「ガアアアアアアアアアア!」
その時、アースドラゴンが星斗達を無視して、離れた場所にいる智也、美亜、ダークエルフがいる場所に向かって猛スピードで走り出す。
「なっ! 意外と速い!」
「あいつ! 後衛陣を狙うつもりだ!」
「させない!」
星斗とアンリは走り出したアースドラゴンを追って全力で走っていく。シルバーナイトもそれに続くが、彼は重い全身鎧と大きな盾を持っているので、速い動きはできなかった。
「逃げろ!」
「は、はい!」
「私も避難します」
智也、美亜、ダークエルフは、発動しようとしていた魔法をキャンセルして、急いでアースドラゴンから逃げるように走りだす。
「ガアアア!」
それを見たアースドラゴンは、三人が逃げる方向へ突撃していく。
「そこまでよ!」
スピードブーストで高速の動きが可能なアンリは全力で走り、アースドラゴンの前方へ先回りする。するとアースドラゴンは逃げる三人ではなく、アンリを狙って、口を大きく開けて鋭い牙を見せながら襲い掛かる。
「ガアアアアアッ!」
「はっ!」
アースドラゴンの噛みつき攻撃を、アンリは再び高速の動きで回避する。その直後、アースドラゴンは大きく息を吸う。
「なっ! 魔法障壁!」
アンリは急いで球状の魔法障壁を身の回りに展開する。
「ブフアアアアアアアア!」
一方、アースドラゴンは、目の前にいるアンリを狙って猛烈な勢いの砂嵐のブレスを吐きだした。
「朝比奈さん!」
星斗は走りながら、アンリが近距離で砂嵐のブレスを受けたのを見て、彼女が心配になる。
「おおっ、さすが朝比奈さんだ」
そのアンリは近距離で砂嵐のブレスを受けたが、彼女の魔法障壁は破壊されずに無事だった。
「このっ! 今度はこっちの番だ! 竜麟斬り!」
アースドラゴンに追いついた星斗は、その首を狙って竜族へ大ダメージを与える斬撃を放つ。
「ギャガアアアアアアアアア!」
その一撃がアースドラゴンの首のうろこを切り裂き、今までで一番の大ダメージを与えた。
「おお! 今のは手ごたえがあった!」
「グルルルルル……」
首に大ダメージを受けたアースドラゴンは、今までの蓄積ダメージの影響もあり、動きが鈍る。
「やっと奴のHPの底が見えた! 竜麟斬り!」
その様子を見たアンリは、魔法障壁を解除して反撃の斬撃を放つ。その後、星斗達に追いついたシルバーナイトも加わって、再びアースドラゴンを取り囲んで攻撃を再開する。そこへ後衛陣の魔法も加わってアースドラゴンに攻撃を集中させる。
「はああああ! 竜麟斬り!」
アンリは全力の竜麟斬りを放ち、それがアースドラゴンの頭部のうろこを打ち砕く。
「ギギャアアアアアアア!」
その一撃が止めとなり、アースドラゴンは全身の力を失ってその場に倒れて消滅した。そして豪華な宝箱が出現し、星斗はレベルが32になった。
「やった! やっと倒した!」
「今までで、一番強いモンスターだった。俺は何発、魔法を撃ったんだ?」
「さすがドラゴンですね。みんなが恐れるわけです」
「さあ、宝箱を確認しましょ」
星斗達は出現した宝箱の周りに集まり、アンリが蓋を開ける。すると中に腕輪、ネックレス、指輪が二つ入っていた。
「ちょうど四つ入ってる」
「四人で倒したから、四つなのかも」
アンリは宝箱の中から、腕輪、ネックレス、二つの指輪を取り出す。
「これは……大地の腕輪と大地のネックレスと大地の指輪ね。確か防御力が上がる装飾品だったはず」
「ドラゴンを倒した報酬だから、優秀な装飾品に違いない」
「そうでしょうね。これはダンジョンを出てから、いつもどおり分配しましょ」
アンリが四つの装飾品をアイテムボックスに収納し、星斗達はボス部屋を出て転移の石碑のある部屋に戻り八王街ダンジョンを出る。そして星斗は戦利品の分配で「大地の腕輪」を手に入れた。
大地の腕輪 防御力+15% 自動サイズ調整機能つき
「これはいい。自動サイズ調整機能があるなら、多分シルバーナイトにも装備できる。シルバーナイトは大地のネックレスも装備できるけど、鎧の上から装備したネックレスは、動くたびに激しく動いて邪魔になるからな」
星斗は魔力のネックレスを持っているが、そういう理由でシルバーナイトに装備させてなかった。
「ダンジョンをクリアできたし、明日からしばらく休みたいな」
「私もです」
智也と美亜は疲れた様子でそう話す。
「じゃあ、このパーティでの活動はしばらく休みにしましょ。私は二日後からライジンギルドのダンジョン攻略に参加する予定だし」
そう言った後、アンリは星斗のほうを見る。
「本条君は、まだ余裕みたいね」
「ん? まあ、アースドラゴン戦も軽い怪我だけで済んだし、それも佐藤さんが回復してくれたからね」
「じゃあ、二日後のライジンギルドの天満ダンジョンの攻略に参加してみない? 天満ダンジョンは、Aランクモンスターが出てくる高難易度ダンジョンなんだけど」
「Aランクモンスター!?」
「そう。ああ、お姉ちゃん達と一緒に行くから心配はいらないよ。お姉ちゃんのパーティは、ライジンギルドの最強パーティだからね」
次回 朝比奈明日香 に続く




