第二十六話 補助と回復
「魔法障壁!」
アンリは冷静に全身の周りに球状の魔法障壁を展開する。すると迫ってきた巨大な氷の槍が魔法障壁に激突して砕け散り、彼女は完全に氷系中級魔法を防いだ。
「ダークスマッシャー!」
続いてダークエルフが、魔法を発動した直後のマンティコアを狙って、渦巻く球状の闇を高速で放つ。
「ガアアアアアアア!」
最後に残ったマンティコアは、その闇系中級魔法が致命傷となって、その場で倒れて消滅した。そしてその場に魔石(中)が出現する。
「俺より魔法発動が速い……」
智也も火系魔法を準備中だったが、敵が全滅したので、彼は魔法発動をキャンセルする。
「回収、回収」
戦いが終わり、アンリがマンティコアがドロップした魔石をアイテムボックスに回収する。
「マンティコアの群れも問題なく倒せた。俺は何もしてないけど……」
「Cランク相手なら、MPを節約しながらでも倒せるな」
「そうね。この調子で先に進みましょ」
その後も星斗達は地下十二階を順調に進んでいき、さらに地下十三階に到達する。そこでまた複数のモンスターと遭遇する。
「ドラゴニュートが二体! ん? 後ろに何かいる!」
「あれは……Bランクの妖狐ね」
妖狐とは、狐の姿の獣型モンスターで、普通の狐よりひとまわり大きな体で、目つきが鋭く、全身が黄色と白色の体毛で覆われたBランクモンスターだった。
「スピードブースト!」
三体のBランクモンスターと戦うため、まず美亜が、速さ強化のスキルを発動する。
「私は右の奴を足止めをするから、本条君は左のをお願い」
「わかった。その隙にシルバーナイトは後方の妖狐を倒してくれ」
「はっ! 召喚者殿に勝利を!」
星斗、アンリ、シルバーナイトが前衛に立ち、剣や盾を構えて迎撃の準備をする。一方、一番後方にいる妖狐が、人には理解できない言葉を発してスキルを発動する。すると妖狐と二体のドラゴニュートの体が、赤いオーラに包まれる。
「あれは妖狐のスピードブーストだ!」
「とうとうモンスターも補助魔法を使ってきたか!」
速さが強化された二体のドラゴニュートが、背中の翼を羽ばたかせて宙に浮く。
「妖狐は回復魔法も使えるから、先に倒さないと面倒なことになるわ」
「シルバーナイト! 頼んだぞ!」
「はっ!」
「ギャオオオオオッ!」
「ガオオオオオッ!」
二体のドラゴニュートが、猛スピードで飛行して星斗達に迫ってくる。それを星斗とアンリが迎え撃つ。それを見たシルバーナイトは、奥にいる妖狐に向かって走りだし、素早く倒すため、強大な魔力の斬撃を放つ。
「ハイオーラブレード!」
「ギャギャン!」
妖狐は補助スキルと回復スキルを使えるが、最大HPや防御力は低く、その一撃で大ダメージを受けて動きが鈍る。
「ダークスマッシャー!」
さらに後衛のダークエルフが、妖狐を狙って渦巻く球状の闇を高速で放ち、それが命中した妖狐はその場で倒れて消滅した。
「よし、これで回復される心配はなくなったわ!」
「シルバーナイト! こっちに合流してくれ!」
「はっ!」
シルバーナイトは走って戻ってきて、星斗と共にドラゴニュートと戦いを始める。そして、
「フレイムピラー!」
星斗とシルバーナイトが戦ってるドラゴニュートの下から燃え盛る炎が出現しに、柱のような高温の火がドラゴニュートの全身を飲み込む。それが致命傷となって、ドラゴニュートは床に落下して倒れて消滅した。
「あと一体!」
その後、アンリが足止めしていたドラゴニュートを全員で戦って倒し、その場に魔石(大)が出現する。
「ふぅ、Bランク三体同時相手でも、何とか倒せたわ」
「本条君、回復します」
「いや、こんなのかすり傷……」
「いえいえ。これが私の役目ですから。ヒール!」
美亜は、星斗がひとりでドラゴニュートを足止めしている時に負った傷をを回復する。
「佐藤さん。ありがとう」
「どういたしまして」
「私は魔石を回収しとくわね」
戦いが終わり、アンリは魔石(大)を回収する。
「さてと、今日はこの辺で終わりにしとく?」
「そうだな。このダンジョンは最短距離で先に進むより、レベル上げと宝箱探しをして、確実に強くなりながら進んだほうがいい」
「私もそれがいいと思います」
「俺も」
「じゃあ、帰りましょう」
星斗達は十一階からここに来るまでに、宝箱から「夜目のスキルブック」「聴覚強化のスキルブック」「ファイアアローのスキルブック」「防壁の指輪」などを手に入れ、ダンジョンを出てからの分配で、星斗は「防壁の指輪」を手に入れ、レベルは28になっていた。
防壁の指輪 防+10
そして休日をはさんで数日後、星斗達は八王街ダンジョンの攻略を続け、とうとう最下層の地下十五階に到達した。ここまでに星斗は経験値増加の効果でレベルが30になり、戦利品の分配で「大魔力の指輪」「疾風の指輪」などを手に入れていた。
大魔力の指輪 魔+10
疾風の指輪 速+10
「転移の石碑で地上に帰れるけど、ボス戦どうする?」
星斗達は地下十五階の転移の石碑のある部屋まで来て、パーティリーダーのアンリがみんなにそう聞く。この部屋はセーフエリアにもなっていて、ここで休憩するとHPとMPを回復することができた。
「今日はまだ時間があるし、ボス戦してもいいと思うけど」
「俺も賛成」
「私もまだ体力に余裕があるのでいけます」
アンリの質問に、星斗、智也、美亜がそう答える。
「じゃあ、ここで休憩してからボス部屋に行きましょう。とうとう本当のドラゴンと戦う時がきたわ」
「ドラゴンといっても、アースドラゴンはBランクだから、今の俺達でも倒せるはず」
八王街ダンジョンのボスは、Bランクモンスターのアースドラゴンで、そのことを星斗達は学校の授業で知っていた。
「作戦はどうする?」
「アースドラゴンは眷属を三体召喚してくるから、今まで通り、私がアースドラゴンを足止めしてる間に、召喚されたモンスターをみんなで倒して、アースドラゴンだけになったら、全員で集中攻撃しましょ」
(アースドラゴンは召喚(A)を持ってる。コピーできれば、俺も三体目のモンスターを召喚できる)
星斗はすでにアースドラゴンからコピーするユニークスキルを決めていた。そして彼らは休憩の後、地図を見ながらボス部屋の扉の前までやってきた。
「さあ、開けるよ」
アンリがボス部屋の扉を開けて中に入り、星斗達もそれに続く。すると広いボス部屋の中央にある魔法陣から、全身が茶色のうろこでおおわれた竜が現れた。
「あれがアースドラゴンか」
「ドラゴンっていうより、巨大トカゲって感じか」
「背中に翼がないから、そう見えるのかもね」
アースドラゴンは体長が十メートル以上あり、全身が防御力の高い竜のうろこでおおわれていて、四つ足で歩くBランク最上位のモンスターだった。
「スピードブースト!」
まず美亜が全員の速さを上昇させるスキルを発動する。
「グオオオオオオオ」
一方、アースドラゴンは自分の目の前の床に三つの召喚の魔法陣を作り出し、そこから三体のドラゴニュートが現れた。
次回 アースドラゴン戦 に続く




