戦うのか、逃げるのか。僕は選択しないといけないのだ。
どこかの建物の屋上。
一歩進めば宙を舞う。
僕の足が竦む。
ここまで逃亡して、現実を目の当たりにして、考えた。
「普通に考えて痛いの嫌だよな」
一瞬で死ねるのなら別なんだけど、痛みが続いたら面倒臭くね?
ってか、死んだ後ってどうなるんだろう。
どうしよう、死んだ後の方が過酷だったら。
もし、神様や霊界が在ったなら、自殺はどれ程の行いなのだろう。
罪になるのかな?
生きている身体を無碍にしているのは、神様からしたら頂けないよな。
死んで次のワンチャンスに賭けるとか思ってたけど、そもそも次なんて在るのか分かんないし・・・。
そもそもまた自殺するかもしれない奴人間にするか?
いや、俺だったらしないな。
現実に辟易してる奴、逃げた奴、もう一度のチャンスと身体の構成を対価にするの重過ぎるなぁ。
また、もう一度なんて甘えてるよなぁ。
霊界ってのはどうだろう。
そもそも、どこ行くんだろう。
普通に死んだ場合と何が違うんだろう。
あ?地縛霊とか?
未練たらたらだったり、念が強いと縛り付けられるんだっけ?
だったらやばいよな。
死にたい気持ちとか、後悔とか、未練とかは凄いぞ。
僕、ここに縛り付けられるの?
いや、無理無理。
自殺ずっと思い出すだけじゃん。それこそ地獄なんじゃない?
苦しい思いずっと引きずるだけのマシンになっちゃう。
・・・死んだ後の想像するとなんか、ね。
漠然とした不安って怖いな。いや、俺を引き留めてくれているのかもしれない。
いや、じゃあ、どうするんだ。
死ぬの怖い。
でも生きるのも怖いんだ。
「ああ、青空綺麗」
不意に見上げた青空はとても綺麗だった。
死にたくは・・・ねえよなぁ。
でも生きたくも・・・なんで生きたくないんだっけ?
あいつらがいじめてくるからだよ。
相談したっけ?
したよ。何度も。でも聞く耳が無いんだ。
反抗したっけ。
無理だよ、怖いもん。
死のうとしてる。
そりゃ逃げるよ。だって、怖いんだもん。
死んだら何も無くなるよ?
それが良いんじゃん。
「・・・誰を歩んでいるのだろう」
僕自身は・・・なんなんだろう。
いじめが怖い、死ぬのはもっと怖い。
でも、死のうとしてる。
もっと怖い方を選択してる。
おや?
いじめの何が怖いんだっけ?
辛いんだっけ?いじめって?
あれ?あれれ?
死んでも良い、そう思ってもいる。
行き過ぎた最上の不安は、彼らに殺されることか?
あれ?あれれれ?
じゃあ、願ったり叶ったりじゃん。
結局、死にたくないのに、自殺を選んでるって事になるのか?
変な話だ。
でも、結局最後死にたくないけど死んでも良いメンタルなら、どれだけ相手がやばい事してきたとしても、こっちがくっそ反抗したら俺が死ぬだけなんじゃね?
俺自身が自分で自分を殺さず、人に殺して貰えばまた、死んだ後の未来変わるかも知れないし、後悔も少しは軽くなるだろうしな。
なるほど、これが必死さだ。
どうせ死んでも良いなら殺されても良い様な反抗を。
生きるための必死さを。
屋上に入るための扉がガチャッと開いた。
おお、ナイスタイミング。
そこに登場したのはいじめっ子。複数名がニタニタと笑っている。
その笑みがまた怖いのよねぇ。
「何勝手に死のうとしてんの?」
髪をぐっと掴まれ、死ねない所まで引っ張れた。
(なんでちょっと生かそうとしてんのこの人)
そして、尻餅をついた途端、足の裏で思い切り鳩尾を何度も踏まれる。
もう一度髪の毛を持ち、立たされ、後ろから羽交い締めにされて、見動きが取れない。
いつもの如く、ポケットから金を抜き取れられる。
「お、今日は沢山いれてきたんだな!」
母から奪った金が、いじめっ子に奪われていく。
いじめっ子は油断した。
どうせここで死ぬくらいなら全力で生きてやる。
僕に近づき、財布を抜き取り、僕に背中を向けた。
その瞬間、股の間に全力フルスイング蹴りをお見舞いする。
「ぐ・・・ぃ・・・」
股、を押さえ倒れるいじめっ子。
「てめぇ!何しやがる!!」
他のいじめっ子達が、僕に襲いかかる。
「た゛す゛け゛て゛ーーーーーーーーー!!!!!!!!!いじめられてます!!!!!!!!!!」
僕は全力で必死でこれ以上無いくらい大声で叫んだ。
「な!てめ!」
今更口を押さえたとて、仕様が無い。
口を押さえるなら、押さえた手を噛むまでよ。
「痛っ!!」
バタン!!
また扉が、しかし次は強く開いた。
「お前ら!何やってる!!」
先生の登場だ。
事が目の前に起きていたら先生も動かざるを得ないだろう。
僕は思う。
(なんだ、大した事ないじゃん)
一つの必死な反抗で、あっけらかんと終わる事。
人に相談したって人は聞かない。
事の重大さを知らないから仕方ない。
まず人に頼る。
それも手だが、どうせ助けてくれないんだったら、自分が動くしか無い。
自分の身は自分でしか守れない。
最終、自分の選択が自分を活かす未来になるのかもな。
その後いじめっ子がどうなったのかは知らない。
学校に行っていないから。
親には謝罪した。
親は許してくれた。殴ってくれても良いのに。
辛かったんだねと抱擁をされたが、情けねえなと怒ってくれても良かったんだよ。
学校に行かないのは、謹慎処分とかでは無い。
「今はいいや」と思っている。
いじめやっぱ痛いし、やっぱまだ死にたくないし。
僕自身にも問題があったとはいえ、やっぱいじめる側がいじめなければ始まらない問題だから、いじめる奴が悪いよな?
引きこもる選択をしたのは自分だ。
恐怖のあまり。
情けなく、弱い。
それは良いとして、これから僕はどうしていこうかな?