『僕』が生きるのは
『生きるって何だろう』と、漠然とした疑問を抱いていた時、僕は神様に出会った。
神は言った。
「君にとって生きる理由は?」
僕は考えていた事を取り敢えず口に出す。
「理由・・・。身体があるから?」
「身体の為に君は生きているのかい?」
「身体のためにと言うか・・・うーん。これは何故死なない理由に近いかもしれないけど」
「うん」
「死んじゃったら身体ってなくなるんだよ」
「そうだね」
「なくなった後さ、どうなるか分かんないけど、例えば幽霊になったとしても、ならなかったとしても『僕』っていう認識は消えちゃうんだよ。『僕という存在』って言った方が分かり易いかな?誰に見られることも無く・・・まあ、見える人は居るみたいだけど、それは置いておいてさ」
「誰かに認識されたいの?」
「いや、その後が重要なんだけど、表現が出来ないなって思ったのよ」
「ほう」
「いつも誰かと話して楽しい!とか・・・言葉もか!誰かに伝わってたのって身体があってこそだなって思って。嫌を避けられるのも、苦しいって分かって貰えるのも、身体が表現してきたからなんだって思って。幽霊ってさ、『取り憑く=悪霊』にされがちだけど、本当は苦しくて助けて貰いたくて、憑いてきているだけかもしれないじゃん。どう思っているかなんて分かんないじゃん。でも、それを祓うとか、悪霊って捉えるのって、(幽霊の気持ちが分からない、表情が読み取れないetc・・・)表現出来ていない証拠なんだと思うんだよね。そう思うとやっぱ凄いんだよね、身体。つまり、楽しいとかの表現出来るのって今の世界でこそだなって。あ、でもこれって別に生きる理由でも死にたくない理由でもないかも・・・」
一人の僕の見解でした。
「生きてる内に出来る素晴らしい事かもね」
「俺はそれで言うと楽しいって表現をしに来ていると思うなぁ。俺が言ったようにこの世でしか出来ない事がある。どうせならこの世でしか出来ない状況や事を楽しみたいよ。この世で生きている内はずっと楽しくいたい。悲しいや怒りでいるのは心苦しいし、嫌からなぁ」
「怒りや悲しみは君にとって必要ない?」
「いいや、そう言う事じゃ無い。怒りは誰かにとって気に食わない、間違っているという表現だ。それは要するに人それぞれを意味している。自分にとって怒りって言うのはそう言うモノで、自分が使うモノじゃ無いんだけど、あるからこそ、皆の意見を尊重できるというか。悲しみも同じ感じだな。誰かが悲しんでいる。それはつまり悲しいことだ。だったら俺はそうしない様。成らない様行動することが出来る。マイナスとは知っていればいい。過ちとか失敗とかと似てるか。次、そうならない為の経験と知識って感じ?」
「マイナスの感情があるのはマイナスにさせない、成らない為の知識ってことかな?」
「そうだな。それに、そっち知ってると更に楽しいの価値が上がるしな」
俺はそう答えた。けれど、これもまた。
「楽しく生きなきゃ損じゃね?ってだけで生きる理由じゃ無いかもな」
「君は?」
三人目、僕は少し厳しいことを言うかもしれない。
「生きる理由は・・・考えた事が無いな。けれどいつも思うのは、生きているだけで責任が伴うと言う事。自分が笑った、怒った、悲しんだ。その感情に表現が誰かを悲しませたり、苦しませたり、楽しませたり、と大忙しだ。一言で人は死んだり、生きたり、行動で人を殺したり、活かしたり。どこで何をしていても誰かが居て、見ていて、知らぬままに影響を与えている。影響を与えている=責任だ。自分でしたことだから。そう思うと、自分の些細な選択一つが誰かにとって影響だとしたら、それが誰かにとって自分が生きている証拠なのかもしれない。その行動がプラスであるとそれは素敵なのかもな」
「それで言うと身体もそうだよ」
また一人、俺が語る。
「身体って特に臓器とかって自分が動かしている訳じゃ無いんだよな。そう考えると、心臓は心臓で、胃は胃で、それぞれがそれぞれで活動している。それぞれで生きているんじゃないかって思うんだ。もっと、細かく見れば、身体を構成しているのは細胞だ。もっと細かくみれば粒子だ。それって一つ一が生命だと考えると、自分ってとんでもない量の命で構成されてるんだなって。それが全部自分のモノで自分を活かしてくれてるって思うと、自分って言う命の重さってとんでも無いよな」
「身体は自分のモノであって自分ではないからね。これは、表現が出来ないって話と似ているね」
「でも、これが言えるのって自分の環境が整っているから言えることだよな」
もう一人の自分が言う。
「これが戦時中とかだったらそんな事考える余裕も無かったよ。それこそ生きているだけで精一杯な。家があって食料があって、娯楽が揃ってて、本来これ以上無いはずなのにね。高望みしすぎて自分達で自分の首閉めちゃってるよね。余裕がありすぎて困った世の中になったもんだ」
「まあまあ、そんなもんじゃない?」
「なんかこれ聞いていると、生きる理由なんて別に無くて、ただ今、なんとなくだけど、確実に生きているから、この世界を謳歌しようとか、そっちのが楽しくね?とか、何がしたいか、何をするか。そっちの方が当て嵌まるかも。多分別に何したって何しなくたって生きてんだから。生きてるだけで影響与えてるんだから。プラスアルファ、どうするか。俺だったら楽しみよね?ってだけな気が」
「何でも出来る世の中だからね、探せば良いよ。探さなくても良いよ。ただ、今ある日常がとっても特別なモノで、有限であること。些細な行動や発言が、プラスにもマイナスにも働いていると言うこと。それは忘れて欲しくないな。あくまで願望だね。別に何やっても良いんだよね、世の中。今、僕は生きているよ。さて、何をしようか」
僕は最後にそう言った。