その75.女キャラのほうが良いんじゃない、とか言わないで
今にも襲い掛かろうとする二人に浅井はたじろぐ。
「そ、そうだ! テメェラ俺は風紀委員だぞ!? 俺には手を出せないんじゃネーのかよ!!」
浅井の言葉にも縁は怯む様子は無い。
「確かにアタシは約束した……だから傷つけなければ良いんでしょ!!」
そう言いながら縁は刀に手を掛けた。
「ッヒ!?」
浅井の小さな悲鳴を挙げるも縁はその形で1、2秒固まっていただけ。
すぐにチン、と刀を鞘に納める音がした。
その瞬間、浅井の服が全て微塵に切り刻まれた。
「あっらー? 突然服が破けたわねェー? 不思議ー……傷つかず服だけねェ?」
縁の脅すような言葉に裸のまま浅井の表情がみるみる青くなる。
あ、あの女、見えない速さで浅井の服を切り刻んだのか!?
あれは居あい抜きという奴か? 達人の居あい抜きは見えないというけれど……あの女何処まで化けモンなんだ!
取り合えず男のムサイ裸とか18禁って感じなのでアリサに見えないように手でアリサの目を覆う。
「……お、お気持ちはありがたいんですけド、私へーじさんの心読めるんであんま意味無い気も……」
……確かに。
「直で見るよりマシでしょ……」
ここから二人の殺戮ショーが始まるんだ……そっちの意味合いでも18禁って感じ。
「どけ縁、俺は端からそんな約束した覚えは……ねーよ!」
確かに一切関わっていない、というか全く話をしらないサクは嬉々として拳を振り上げ、思いっきり裸の浅井を殴りつけた。
「ゲヒョォ!?」
浅井は体格は大きい筈なのだが、サクの腕力で宙に飛んでいた。
そのまま防音で丈夫な筈の壁に減り込んだ。
「ざまぁみろってんだ!」
「次百合果さんに手ェ出したらこの世に肉片一つ残さないわよ!!」
さ、流石最強兄弟……。
「ほんの少しだけですけどあの浅井って人哀れですね……」
僕と同じ様に顔を引き攣らせているアリサが小さく溢す。
「全くだよ、あの二人をセットで敵に回したら死ねるね……」
だけど何だかんだで助けられた。
へーじの姿じゃなくても、この二人はやっぱり頼りになるな。
「おらぁぁ!! まだ終わってねーゾこらぁぁぁ!!!」
「アタシの顔見たらトラウマになるくらいにしてあげるわよォォォ!!」
……いや、頼りになるで、良いのか……な?
ボロボロのボコボコになっている浅井はともかく……何故か縁とサクは睨みあっていた。
「今日という今日は絶対にぶっ殺してやるわよバカ兄貴!!」
「こっちの台詞だボケ妹!!」
仲良く悪役を討伐したかと思うと次はコレかィ!!
本当似てるなこの兄弟は!!
「あわわわわ……お二人とも少し落ちついて……」
アリサが慌てて二人を止めようとする。
そんなアリサが見えていないのか二人が止まる様子は無い。
「百合果さんには手を出させないわよ!」
「負ける気がしねェェェェェ!!」
勝手に二人の戦闘が始まる。
目の前で刀と拳の激しい戦闘が行われる。
相変わらずこの二人の戦闘は凄い……化け物同士の戦闘は流石だ。
っていうか助かったんだから君達……。
「燃えろアタシのコスモォォォォォォォォ!!!」
「俺の右手が真っ赤に燃えるゥゥゥゥゥ!!!」
だから……。
「お前の血は何色だァァァァァ!!」
「奴を殺せと轟き叫ぶゥゥゥゥ!!」
僕やアリサの引き攣った笑みも知らずに二人はヒートアップ。
そんな二人に僕自身の中で何かが弾けた。
「いい加減にしなさァーーーーい!!!」
僕の叫び声に二人がビタッと止まった。
「何でスグ喧嘩するの!! 兄弟なんだから仲良くしなさい!!」
「で、でも百合果さん……」
「お、俺達はこういう関係で……」
固まったまま二人が焦った表情を作る。
「口答えは許しません!!」
「う、う゛う゛……は、はぁい……」
「お説教百合果タン……萌え~!」
何か気持ち悪い言葉も聞こえた気がしたけどココはスルー。
サクが拳を下ろし、縁も刀を下ろした。
「へ……じゃない百合果さん凄いです……」
感嘆な声を漏らすアリサに僕自身も我に返る。
……ぼ、僕は何を言ってるんだ!?
完全に姉貴の口調で喋っちゃったよ!
女キャラ定着しすぎじゃないかァァァ……




