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その70.

 縁達に追いつこうと暗い通路を急いでいた。

 薄暗い中、先に小さな光が見える、もうすぐ追いつきそうだ。

 出口と思わしきドアが見えた。

 光はそこから漏れているらしい。

 というかダンジョンみたいな通路にいきなり学校でよく見る引き戸のようなドアは違和感が凄いな……。

  

 そのドアの両端に二人の少女がいた。

 熱血少女とエスパー少女。


「百合果さん遅かったね。 何を喋ってたんです?」

 僕を見て縁は首を傾げて見せた。

 確かにミホとは少し長話になってしまった。


「ん、ちょっとね」

 適当にはぐらかしておく。

 ミホのあの様子を態々教える事は無いだろう。

 あの子は弱音を見せるのを嫌がる子だ。

 とくに縁や志保ちゃん達の前では完璧でいたがるだろうし。

 縁は更に首を傾げたけどそれ以上追求はしてこなかった。


 ……ま、僕が幾ら黙ってても隣の方のエスパー少女にはお見通しなんだろうけど。

 そう思いながらもアリサの方に視線を向けた。


「……」

 アレ?

 何か言ってくると思ったのだが、アリサは目を伏せるだけで何も言ってこなかった。

 ……? 妙に大人しい気がするのは気のせいだろうか? この子の事だから変に茶化したりとかしてくると思ったんだけど。

 ……まァ、いいか?


 それよりも肝心なのはこのドアの先だ。

 一体どこに繋がってるんだろう? 駄目教師が3階に出ると言っていたけど、3階と言っても広い。 この学校はどの階だろうと無駄に広い。

 出来るだけ生徒会室と近かったら良いけど


「じゃ、行こうか?」

 両端の二人声を掛けると共にドアに手を掛けた。



 

 まばゆい明りに目が眩む。


 久しぶりな太陽の光と蛍光の光。


 慣れてきた目に最初に映ったのは。


 生徒会室。


 と書いてある標識であった。


 め、目の前に出た?



「何か……すっごーく都合がいい気がするけど」

 縁も目を細めながら疑うように標示を見ていた。

 全く僕も同じ事を考えていたんだけど色々と都合があると解釈しておこう……おっとこれ以上は何も言えないな。


「何にしても結果オーライです、サッサと交渉に入りましょう?」

 案外冷静なアリサが一歩前に出た。

 その時、アリサの表情が歪んだ。

 何だろう? と思ったのも束の間、原因はすぐに解った。


 心が読めなくても直に耳障りな漢字で通してくる馬鹿共の襲来。


「発見んんんんんんんんん!!! 我等が女神はここにいたぞォォォォ!!」

 通路の先から馬鹿でかい声が飛んできたのだ。

 タイミングはバッチリ。

 あぁぁぁ……。 まさか目的地目の前であの馬鹿共に見つかるとは……。

 赤い覆面のリーダーと、 白い覆面の。

 とてつもなく嬉しそうにこっちに走って来ている。


「しっつこい!!」

 縁が呆れと怒りを込めた声を零す。

 ほんっとだよ。

 目的地は目の前だってのに。


「あの馬鹿共の粛清はアタシに任せて下さい。 二人は生徒会室へ行って下さい。寧ろそっちの方が安全でしょーし」

 そういいながら縁は一歩前に出た。

 確かに流石の奴等も生徒会室には手を出せないだろうし元々の目的地はココなんだから都合も良い。

 だけど……縁は大丈夫なのかな。


「だ、大丈夫なの?」

 一応聞いてみる。

 僕の不安な声を一蹴するかのような笑顔を縁は向けてきた。


「大丈夫ですよ! へーじの為にも宜しくね百合果さん!!」

 二度、三度指の骨を鳴らして見せた後、颯爽と集団達に向けて駆け出して行った。


 ……ま、確かに縁が相手ならあれぐらいの集団大丈夫だろうし。

 寧ろ僕達がいない方が戦い易いかもしれないか。


 あっちは縁に任せよう。


 小さな不安を振り払いアリサの方に視線を向けた。 

 アリサは眉を寄せて険しい表情で集団を睨んでいた。

 やはり心の声が負担を掛けているのか?

 今から会長と交渉すると言うのに大丈夫だろうか……。

 前みたいに逃げ出す事は無くても、肩が小さく震えているのが解る。



「アリサ……大丈夫?」

 心配になって声を掛けると、アリサは震える声で応えた。


「百合果さん……不味いですよ、異常に強い声が三つ聞こえます……」


「え?」

 また大量の雑音で苦しんでたんじゃなかったの?


 そもそもあの馬鹿共の雑音より大きな声が三つも? 


「そ、そんな事ありえるの?」


「心の声はその人の感情や存在によって大きく変わります、そして……私達が今対峙しているドアの奥から大きな『心の声』が聞こえるんです」

 沢山ある心の声の雑音を掻き消すほどの二つの強い心の声。

 単純に言ってしまえば……大物が二人? 会長以外に誰かいるのか!?


「一つは酷く純粋な声ですけど……純粋に黒い色って感じです。多分、会長の方の声です」

 僕に心の声は聞こえないけど、心の声というのはどうも言葉と一緒にその人の雰囲気も纏っているらしい。純粋な黒……成る程、あの会長っぽい解り易い比喩だ。

 一人はやはり会長か。


「もう一つは曇りのような中途半端な灰色……雨でも晴れでも無い声です、まるで迷っているような……」

 一体誰だ? まず会長や部員以外がこの生徒会室に居る事自体稀なのに。

 もしその人物が僕達の敵になる人物なら確かに不味いよね……会長一人との交渉のつもりがその見知らぬ人物のせいで悪い方に転ぶ可能性もあるんだ。

 せめて誰か解れば良いんだけど。

「それ、心の言葉は何を言ってるのか解らないの?」

 

 アリサが険しい顔をしながら首を振った。

「二つの声が入り混じってて……言葉としては聞こえ辛いですね、後もう一人の声が大きすぎて……」


「そういや三人って言ってたね」

 三人目は生徒会室の中にはいないらしい。

 少しほっとする。

 だけどその二人よりも大きな心の声で、生徒会室内以外から聞こえ辛くさせるなんて……一体何者なんだろう……。


「はい、何よりも一番うるさくて。雑音みたいにガヤガヤしてないんですけど、直線過ぎて何か気持ち悪い感じで……とても明るい輝いた声ですけど光が強すぎて目も当てられないと言いますか……声は今縁さんが向かった方からです」


 …………その表現は何となく誰か解ってしまったんだが。


「ね。その声なんて言ってる?」

 一応聞いてみよう。

 違うかもしれない。違うと信じたい。


「……え言っていいんですか?」

 明らかに僕の方に同情のような視線。

 ま、まさか……いやいや奴は縁が静めたし……。


「そのまさかです、同情します……」

 最早目だけじゃなくて口で言われたァァァ!!


 あの馬鹿かよ! もっと凄い人かと思っちゃったよ!! 何か恥かしいよ!!


「恥かしいとかどうでも良いですけど」

 どうでもいいって言われた!

 っていうか勝手に心読むな! 余計恥かしいわ!!


「取り合えずそっちは縁さんに任せましょうよ、私達は私達で頑張らないと……」


 う、そ、そうだな。

 縁の方も心配だけど。会長と誰か解らない人物相手に今から戦争するんだ。

 気を引き締めないと……。


 二度三度深呼吸した後、ドアに手を掛けた。

 しかしそこで止まってしまった。


 今から死刑部屋とまで言われた部屋にまさか自分から入る事になるとは思わなかったなー……。

 あの会長は多分頭だけでなく腕っ節もあるだろう。

 腕っ節だけとか、頭良いだけーとかなら簡単に利用出来るんだけどなー。

 今回の相手は両方を兼ねそろえている。

 その上頭の回転まで速いと来た。

 口だけの僕が何処まで対応出来るか……いやアリサも居るんだ、何とかなるはずだ!

 あの会長を交渉出来るかは解らないけど……縁の為にも、みんなの為にも頑張らないと……! 

 意を決して手にかけたドアのぶに。

 力を入れ『ようとした』


 その前にドアのぶが回ったのだ。


 慌てて僕は一歩後ろに下がった。


 こ、このタイミングで出るかァ!?

 ココで会長がどっか行ったら話しなんて聞かないに決まってるじゃないか!!

 何の為に態々あの胸糞悪い会長の根城まで来たと思ってんだ!

 また別の機会を狙う? 無理だ、っていうかまた追いかけるのは勘弁なんだよ! 今回で決めたいってのに……!


 ぐるぐると頭の中でめまぐるしく言葉が回る。


 そうこうしているうちにドアはゆっくりと開いて行く。

 想定外だ!クソ!!

 どうする! どうする!?


 そんな僕の焦りも知らずにドアは開ききってしまった。


 固まったまま、ドアの開いた先にいた者と目が合った。

 


「……え?」

 僕の口から漏れた声は焦りでは無く驚愕であった。

 開いた先に佇んでいたのは。

 会長では無かった。


 僕の口が答えを出すよりも先に、後ろに居たアリサが答えた。



「悠馬君……」

 そこに居たのは銃刀法違反男。

 特徴である刀を手に持ち、鋭い視線が僕達を睨んでいる。

 何でお前が?

 会長とは敵なんだろう? 何故この部屋から出てきたんだ!?


 あまりにも想定外で。

 いやいや想定外過ぎるって……!

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