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その60.一番敵に回したくない親友

 僕と縁は暗い通路を歩いていた。

 薄暗い廊下は僕と縁が並んで歩くのにギリギリの広さ。


「こんな抜け道があったなんて……」

 そう零す縁の言葉は解る。

 この学校の地理は大体頭の中に入れていた僕でも知らなかった通路だ。

 まさか校長室に本当に抜け道があるとは……。

 多少大きい学校だとは思うけど抜け道があるとは誰も思うまい。

 

 駄目教師曰く、三階に出ると言っていた。

 一階からこの抜け道に入ったとして、こうも都合よく生徒会室がある三階に行けるとは思いもよらなかった。

 対した抜け道だ。

 教室だけは無駄にあるからなこの学校……それのどれかに繋がっているのかな?

 でもこのままだとアリサ抜きで生徒会室に行かなくなってしまう。

 少しキツイけど仕方無い……か。


 しかし大きな抜け道だ。

 あの男が校長室に忍び込む為の抜け道なんだろうなァ。

 と勝手に推測。


「お化けに仕返しされなくて良かったー、実態無かったら流石に勝てないし」

 隣でどうでも良い事に安心している彼女は僕と教師の会話は聞いていない。

 

 ……僕の正体を知っているのはアリサと駄目教師のみなわけだ。

 これ以上バレることは無いとは思うけど、用心はした方がいいな。

 特に……あの性悪女には。



 今は敵対同士だし、どこで出会うか解らないし。 うん……気をつけよう。

 一番敵対したくない相手だし、この格好のときに二度と会うことが無い事を願うよ。

 誰も知らないと思われる抜け道だけど彼女なら知っていてもおかしくは無い。

 そう思いつつ暗がりの通路の先を睨んだ。




 その時、通路の先から覚えのある声が聞こえた。



「はろろーん? 百合果さーん?」


 お気楽な声は薄暗い通路に響き渡る。

 僕は凍りついたように固まり、縁は慌てて構えた。

 薄暗い廊下の先から出てきたのはお馴染の笑顔を振りまく性悪女。


 この通路を知っている可能性が無くも無いとは思ったが……まさか考えている時に来るとは思わなかったよ!


「み、水歩さん!?」

 驚愕な声を挙げたのは縁。


「あんれ~? 縁ちゃん? アッハ! いつまで経っても捕まんないのは君がいたからかー」

 そう言ってミホは笑みを浮かべながら目を細めた。


「や、いや、え、と……こ、今回は水歩さんが悪いですよ! 悪いですけど今回は敵対させていただきます!!」

 あ、あの縁が少しビビっている。

 縁もミホとは敵対したくないらしい……この人怖いもんね。

 

「アハ! そだね、今回はちょっとやりすぎたね」

 自分でも解っている。という様な落ち着いた口ぶり。


 ……? この子が自分から反省の言葉を出すのは珍しいな。


「ま、反省した所でこの事態収拾は流石の私も出来ないけどねー」

 そういってミホはアッハッハ! と豪快に笑う。


「……それはもう私を狙わないってことですか?」

 恐る恐る聞いてみる。

 バレたくは無いので女口調で。


「ま、ね」

 何か納得の言っていないような言い方だが、一番の強敵が狙わないと言ってくれたのは僕からしたらとても嬉しい事だ。

 でも、だったとしたら、

 この子は何をしにきたんだ?

 


「まさかそれを言う為にここまでこられたのですか?」


 僕の言葉にミホは肩をすかして見せる。

「それもあるけどね、本件は別」

 そう言うとミホは目線を自分の後ろに向けた。

 暗闇しか無いハズの通路の先からもう一人の人物が現れた。


「ア、アリサ!?」

 現れたのはツインテールのエスパー美少女。


「…………」

 何処か浮かない顔の表情だが、何よりも無事で良かった……


「ほら、この子探してたんでしょ? サッサと行きなよん? でないとまた変態達に捕まるわよん」


「……どういう風の吹き回し?」

 ミホの考えが解らない。

 僕の邪魔をするための行動じゃなかったの?

 そしてミホはアリサの事を毛嫌いしていたんじゃなかったのか?

 それを態々ミホはアリサをここまで連れてきた。

 

「アッハッハ! 確かにその子ってば私の敵の筈なんだけどねー? おっかしいねー? アッハッハ!」


 その笑い声が逆に不振に思わせた。

 この子の事は嫌いじゃない。

 この性悪女の事は大分解ってきたつもりだ。


 それなのに全く考えが読めない。


「ごめんなさい何か裏があるとしか思えない」

 冷たい言い方になるかもしれないが。

 本当にそうとしか思えない。


 そこでミホの張り付いていた笑みが消えた。


「……私はね。どっかの熱血みたいにYesYesってはっきりしてるわけじゃないし、どっかの捻くれみたいにNoNoって疑うばっかじゃないの」


 どっかの熱血が縁だとしたら……NoNoってまさか僕の事か? そんなに否定してるつもりは無いんだが。


「太陽と月の間には夕暮れがあるのよん? どっちつかずに突然に雨が降り出すように気まぐれなときだってあんの」


 自分で夕暮れと比喩する彼女の言葉はわかる。

 自由きままに進んだり曲がったりする彼女は正に『気まぐれ』な人間。

 得のみで動く人間だったらもっと動きが読み易いんだけど……。



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