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その56.相手が悪いらしい。変態はやっぱり変態お前等なんて大っ嫌いだ!!(泣)

 百合果さんは一体何を言い出したんだろう!?

 固まっているアタシと覆面達を無視して百合果さんは更にわけのわからない事を口ずさむ。


「ええ、とっても素敵だと思います」

 百合果さんは覆面たちに笑いかけている。


「お、俺達が……素敵?」

 まさかそんな風に言われるとは思わなかったのだろう。

 覆面達も動揺を隠せない様子だ。

 変態達が動揺してるって事は自分達が素敵で無い事は解っている様ね……。


 百合果さんは優しく微笑んだ。


「ええ、個々がリーダーを信じ、集団で行動する何て事、簡単そうで中々出来ませんよ?」


 いえ百合果さん……こいつ等はただたんに変態なだけでは。

 アタシの心の中の突っ込みも知らずに、百合果さんは続ける。


「お互いを信頼するという関係は綺麗な心でしか出来ません」

 こいつ等に綺麗な心があるのだろうか……突っ込みたいけどココは自重しておく。


 百合果さんは優しく微笑みながら、強調するようにもう一度言った。

「私はそんなあなた方を素敵だと思います♪」


 さっきまで騒がしかった覆面達は固まって動く様子は無い。


「あなた達が覆面をしている用途は不明ですが、顔を隠すという意味合いは、自分とは違う自分に生まれ変わりたい、自分がしないような行動をしたい、そう言った欲望の現われだと聞きます」

 何人かの覆面が目を伏せるように下を向いた。

 思う所があるのかもしれない。


 アタシ流に大雑把に考えさせて貰えるなら、百合果さんの言っている事は要するに『誰だか解らなければ何をしても良い』

 悪い言い方になってしまったけど、そういう事だ。


「顔を隠す強盗なんてのが良い例ですね……。顔を隠すという意味合いで良い話しはあまり聞きません……」

 そこで百合果さんは寂しそうに顔を伏せた。


「でも」

 付け加えるように零すと、百合果さんは顔を挙げる。

 顔は寂しそうな表情から一転していた。


「あなた達は違います」

 百合果さんはゆっくりとリーダーの赤覆面に歩を進めた。


「この人数が居るにもかかわらず悪い方に進むわけでも無く、唯皆で楽しく学園生活を満喫しているようで、見ていて私は幸せな気持ちでした……顔は見えませんが、あなた達の心は見えます。綺麗な、とても綺麗な心が」



 赤覆面は気圧されたのか、見惚れているのか解らないが固まっている。

 そっと、百合果さんは赤覆面の手を取ると両手で優しく包んだ。

 覆面たちがどよめいた。

 そして、何故かアタシも焦ってしまう。


「もっと自分を信じて? こんな事をしなくても、大丈夫ですから……きっと自然と女性は惹かれて行くでしょう」


「う、あ……」

 赤覆面は手を握られながら一歩後ろに下がっていた。

 覆面で表情は見えないが、よっぽど戸惑っているんだろうと思えた。


「ね?」

 百合果さんは言い聞かせるように、強調するかのように零した。


「は、はい……」

 完全に掌握された様に、赤覆面は小さく零した。

 それに合わせて覆面達が全員大人しくなった気がした。


 全体の空気が百合果さんに圧倒された具合だ。

 まるで……空気を支配したような。

 美人だから出来る技。

 そして相手を引き釣り込む様な喋り方は何となくへーじに似ている気がした。

 流石は従兄弟……女性でへーじと同じ話術が使えるのは威力も大きく変わるらしい。

 女性に免疫の無い男達にだからこそ美人の言葉が通じるという良い所を突いたやり方だった。


「百合果さん……俺、頑張ります!!」

 何故か赤覆面は表情が活き活きとしている。

 いや、まぁ見えないんだけど、雰囲気がそんな感じで。


「ええ! 頑張って下さい♪」

 百合果さんがニコやかに応えている。

 その言い方はなにやら確信犯だったのでは、と思えてしまう。

「百合果さーん!」「俺も頑張るよー!」

 後の覆面たちからも声がする。

 っというか今の一瞬で百合果さんは姉御的な位置にいったらしい。

 さん付けになってるし。


 百合果さんが私にだけ見えるように後ろ手でピースをして見せてくれた。

 助かりましたよ、百合果さん。 これでこの集団からはもう狙われないはず! 


「百合果さん……最後にお願いがあります!」

 赤覆面は(表情解んないけど)とても輝かしい表情で百合果さんの手を両手で包むように握り返した。


「は、はい何でしょうか?」

 突然の事に百合果さんは若干微笑みが引き攣っている。

 戸惑いつつも微笑みを絶やさない。





「最後にパンツ見せてください!!」




「…え」

 百合果さんの穏やかな背中にピシッと亀裂が走った。




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