その55.タイプ交代。 縁が無理なら僕の出番だ。
赤覆面の言葉に敵意を向ける様に縁は叫ぶ。
「この人は渡さない!」
この子が守ると決めた物を途中で投げ出すような人間じゃない。
それはきっとこの子の信念が許さないから。
どのような状況下でもこの子は諦めないだろう。
だけど今回は逃げ道が無い。
正直、手厳しい……。
縁が女性とは思えない睨みを見せつける。
それに気圧されて一歩、二歩と覆面たちは後ずさった。
覆面たちの変態度も有名だが、縁が凶暴なのもこの学校じゃ有名だ。
「だ、だがこの状況は流石の縁ちゃんもどうにもできんだろう!」
覆面赤がビビリながらも縁に言い返す。
「…………ッ!」
その言葉に何も言い返せないでいた。
縁は悔しそうに、唯、睨み付ける。
自分の力ではどうにもならない状況。
その姿を見て、僕の心は感化される。
僕の心が揺れ動くの大概この子絡みだ。
……ここは、縁より僕の方が何とかなるかもしれない。
根拠は特に無いのだが、口喧嘩なら暴力女よりかは専門だ。
それに、この子が僕の事で悔しそうにするのは、少し嫌だ。
そう思い縁の前に出た。
「百合果さんッ!?」
驚く声を挙げる縁に優しく微笑んで見せた。
「大丈夫、私に任せて?」
そう言うと、縁は突然固まると、ぽーっと僕を見つめる。
「は……はい」
大人しく縁は小さな声を零した。
……? やけにすぐ大人しくなったな。
いつもの縁ならもうちょっと食い下がるのだが……
しかもまた顔が赤いよ君。
今日の縁は大丈夫か? 妙に変だ。
良く解らない縁は、まぁ今は置いといて。
覆面達の方を振り向いた。
廊下を埋め尽くす人数、そしてその奥にも居る。
なんっつー人数だ。
取り合えず、覆面達と正面から対峙し、最初に赤覆面に笑いかけた。
「始めまして百合果です」
一応女装中だしこんだけ人数が居たらバレる可能性もあるので女の子っぽく挨拶してみる。
後、実際始めてでは無くこの変態共には(悪い意味で)お世話になっている。
「ぐふ!」
え、何で吐血!?
赤覆面は突然苦しそうにしながら自分の覆面とはまた別の赤で染めた。
何いきなり!? 意味解んないんですけどォォ!!
「た! 隊長ォォォォォ!!」
後ろの覆面達も騒ぎ出す。
「く! まさか自分の美しさを利用するとは困った子猫ちゃんだゼ!!」
ヤダ、寒気する事言われた!
女の子らしく、と思い笑いかけただけなのに……自然と頬が引き攣る。
「取り合えず、私達を逃がして欲しいんだけどダメかしら?」
そう言って表情を頑張って作る。
赤覆面の後ろどもから気持ち悪い声が上がりまくっている。
「ぉぉふ……可愛い」
「ハァハァハァハァ……」
「この学校にいなかった新しいジャンルの萌え……」
「……ふぅ」
「ハァハァ百合果タン!ハァハァ!」
だ、ダメだ! 今は嫌な顔しちゃダメだ!
でも怖いわこいつ等!!
「ッフ、幾ら美人の頼みでもそれは聞けない! 我等モテ隊の悲願! 水歩様の力でモテモテになれるかもしれないのだよ!!」
どういう思考回路なんだろうか。
ミホでも流石にソレは無理な気がするが……。
「そうだー!」「モテたいんだー!」という後ろの声から全員の満場一致らしい。
流石変態覆面軍団、馬鹿しかいない。
「俺達モテ隊の悲願はモテる事にある! どんな小さな可能性でもそれにすがりつかせてもらう!」
なんかカッコ良い感じに言ってるが内容はダサイ……
だが、状況判断は得意な方。
口だけで生きてきたような人間だ。
ココは僕に任せて貰うよ縁。
少し業とらしくなるが、キョトン、と不思議そうな顔をしてみる。
「あなたたちはそんなにモテないのですか?」
「あーモテないね! 驚きのモテなさだよ!! 何でモテないんだ!?」
後ろからも似たような疑問の声が挙がっている。
嫌、こんな事してるからだよ。
という突っ込みは心の中に閉まった。
いつもとは違うタイプで攻めてみよう。
折角の女装を利用するんだ!
暫くは元のへーじを捨てて、女である戦い方をしてみよう!
男の時は相手をボロクソ言うのが基本だったけど。
女性なら女性のやり方がある筈だ!
僕は優しく笑いかけ、口を開いた。
「私はモテても良いと思うんですけどねー? 私はアナタ達の様な人達嫌いじゃないです」
その言葉に空気が固まった。
後ろで「は?」という縁の意味不明を示す声が聞こえ、前の覆面達は予想外の言葉に固まっている。
……アリサの思惑通りになっているかもしれないが、今は成り切れ。成り切ってしまえ!
……やっぱり人生に踊り狂されてるよ(泣)
展開が遅いです、もっと早めますスイマセン……。
モバゲー進行地味に進行中……