その49.縁と百合果で頑張って行こうと思う
「へぇー……へーじの親戚のオネーサン……へぇ。」
何を納得したのかは知らないが変にマジマジと見られている。
「な、何?」
やはりいくらバカと言ってもそんな簡単に騙されない物かもしれない。
だとしたらまた疑われたら厄介なんだけど……。
「あ、あのさ、へーじアタシの事、なんて……?」
何か、そわそわとしだした。
「は?」
言っている意味がいまいち解らない。
そしてなんで顔を赤らめてんだこの暴力女は。
「い、いやね? ほら……アタシの事へーじから聞いてたんなら……ほら、何て言ってたのかなーって?」
そんな事気になる物なのか?
他人が陰で何を言っているかというのは気になる物だけど……縁がそういうのを気にしているとは意外だった。
だけど、何故だろう。
人が陰で何て言っているか気になるなら普通は表情は不安な感じになると思うんだけど、縁のそわそわとしている感じは気のせいか瞳まで期待で輝いている。
……。
不審に思う僕だが、しかし何故か変に期待の目を向けられているわけで。
うーん……疑われるわけにもいかないし、僕がもし縁の事を説明するなら何て言うだろうか。
頭が良いからこそこういう風にしか考えられないのは最早病気なのだろう。
思い出す素振りに見せつつ、必死に考える。
自分が言いそうな事……自分が言いそうな事……。
「えっと……正義気どりの暴力女……だっけかな?」
うん、明らかに僕が言いそうな言葉だ。
そう思った瞬間。
バギャァ!! と何かが砕ける様な、すざまじい音が響いた。
……縁が近くの壁を殴ったのだ。
「……それだけですか?」
脅すように座った目が僕を睨む。
コンクリートの壁には見事なひび割れ……なんかこの子、日を増すごとに人間離れしてないか?
てか聞いといてキレるか普通!? 期待していた言葉と違うかったのか!?
「あ! えと!! 凄く良い子だって言ってたような! 言ってなかったような……」
慌てて嘘を嘘で潰すようなお世辞な言葉。
最後の方で声が小さくなっていったのは僕の良心だと思ってほしい。
取り敢えず縁の怒りを収めなければ!
「ふぅん……?」
座った目は戻らないまま。
だ、だめか!?
今ここで少しでも縁の怒りを収めなければ明日からのマイライフへーじ君の学校生活は地獄と化しますよ!?
「あ、アハハ……」
僕は誤魔化すように笑う。
もう何も浮かばないので取り敢えずな笑み。
それに釣られるように縁もやっと笑みを浮かべる。
よ、良かったー! こんなドスの効いた眼で睨まれ続けたら泣くわホント!
「へーじ、会ったらブッ殺す……」
縁の表情は笑みを浮かべていたんだけど……良くない、良くないよ!
口から何かエグイ声が聞こえた気がした……聞こえてない聞こえてない聞こえてない。
暫く百合果の格好でいる事を僕は心に決めた。
縁にぶっ殺されるのが嫌で女装なんつー精神的に死ねることをやっている僕……。
踊らされてるよ! 見事に踊り狂わされてるよ!!
女装してから不幸続きな気がするのは気のせいだろうか……気のせいじゃないんだろうなァ(泣)
「と、取り敢えず縁ちゃん?」
今は話しを変えよう。
これ以上踊り狂わされたら死ねる。
「何ですか?」
ちょ、まだその怖い笑みのまんまなのかよ。
その笑み止めい……。
「亜里沙がどっかに行っちゃったから探すの手伝ってくれない?」
取り敢えず今は縁が仲間で居てくれるなら亜里沙を探し出さなければ。
今の校内は大量の猛獣が放たれているのと一緒。
この中を猛獣の餌である僕が一人で亜里沙を探し出せるとは思っていない。
縁が仲間で居てくれるなら今のうちに亜里沙を見つけ出さないと。
縁と一緒なら三階の生徒会室まで余裕だろうけど、肝心の亜里沙がいなければ始まらない。
「……亜里沙?」
縁が軽く首を傾げる。
そうか、縁は名前を知らないのか。
「ほら、あのツインテールの子」
僕の言葉に縁は突然渋い顔を見せる。
「なんであの子の事知ってるんですか?」
あ。
僕の今の表情はきっと間抜け面なんだろうなァ、なんて半ば人ごと。
自分ごとなんだけどさ!!
僕は現在親戚のオネーサン。
知ってるわけないわ確かに!
ド……ドジった。
ドジっ子な僕のバカァァァ!!
何で自分でまずい方まずい方に持っていくかなー!
でもこんな天然な自分が嫌いになれないイエスマイラブ。
縁の顔がどんどん渋くなっていく。
多分バカ暴力女の脳内では美味い具合に良からぬ感じにメンドクサイ展開になっているんだろう。
縁はバカな癖にメンドクサイ感じに頭の回転が速い時がある……。
バカな癖に……(2回目)
亜里沙みたいに心読まれてたら僕は何回殺されている事やら。
……どーせ。
親戚のオネーサンなのに亜里沙って子の事知っているって事は……親認定のお付き合いしているご関係なの!? 何それ変態へーじ! バカへーじ! そういや前に抱きついてたわね……アタシ知らないわよそんな関係! 入ってきたばっかの女の子に手出すなんて最低よ! 社会のゴミよ!! 見かけたら殺す!苦しめて殺す!! 生まれてきた事を後悔させてやるわよ貧弱男めェェー!。
とかそんな感じの事思ってんだろうなー、この怒りで真っ赤になった顔は……。
「親戚のオネーサンなのに亜里沙って子の事知っているって事は……親認定のお付き合いしているご関係なの!? 何それ変態へーじ! バカへーじ! そういや前に抱きついてたわね……アタシ知らないわよそんな関係! 入ってきたばっかの女の子に手出すなんて最低よ! 社会のゴミよ!! 見かけたら殺す!苦しめて殺す!! 生まれてきた事を後悔させてやるわよ貧弱男めェェー!」
縁はその場で怒り狂ったように叫びだした。
まんまどんぴしゃりかよオイ! どんだけ読み易いんだよ!!
兄であるサクもわけが解らなくなると長い言葉を叫び出したり考えが滅茶苦茶読みやすかったりする……。
そういうトコはやっぱ似ている。
なんだかんだで兄弟らしい。
……そんな事より今は怒り狂っている暴力女を止めなくては。
そうしないと本当に僕は一生『百合果』でいなくちゃならなくなる。
「や、違うのよ縁ちゃん……あの、ほら、ちょっとあの子とはココ来た時に知り合ってね? ええと……制服とかお世話になったから、それに私のせいで巻き込んじゃったみたいだから助けてあげたいの」
嘘は……ついて無いよな?
「そうなんですか……」
どうやら怒りは収まってくれたらしい。
素直というか単純というか、取り敢えず助かったかな?
それでも何やら納得が行かない様子だ。
少しだけムスッとしている。
……? ミホだけで無く、縁も亜里沙の事を良く思っていないのだろうか?
「……ううん、解った。 亜里沙も助けます」
何を決心したか知らないが縁はそう言ってくれた。
「助かるよ、ありがとう縁ちゃん!」
感謝の気持ちを込めて僕は縁に笑いかけ、謝礼の言葉を口にする。
「……ッ! べ……別に良いですよ」
……? 何だ? また縁は顔を赤らめている。
もしかして風邪気味なのだろうか?
展開が遅い気がするのはきっと気のせいだと思うな(o^▽^o)
気のせいじゃないです……すいまっせんorz