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その38.エスパー少女の助言




「すいませーん……すいませぇ~ん……」

 小さな声で呼びかけるも騒がしい教室の音に掻き消されている。

 何か声が少し泣きなそうな感じがするのは気のせいだろうか……。

 オロオロと教室を覗くツインテールとバッチリと目が合うと、不安そうな表情は突然ッパーと明るくなった。

 僕に向けて嬉しそうに手を振る。

 要件は僕に対してだと考えて良いのだろうか?

 良いのだろう。

 必死に手招きしている、中に入る気はなさそうだ。

 

 性悪女と変態と馬鹿に一言だけ言うと僕は立ち上がった。

 その時、何故か性悪女の表情が曇った。

 ミホはあのツインテールの事を嫌いなのだろうか……?

 あまり気にしてても始まらないのでツインテールの子の所に向かった。

 


 廊下で話しをする為に教室から出た。

 廊下にもチラホラと僕たち以外に人は居る。

 その何人かからもツインテールの子は注目を浴びていた。

 やはりこの子は目立ちやすいらしい。


「フフ……また会いましたねへーじさん」


「……いや、何ちょっとブラックな感じだしてんの、アリサちゃんさっきまでメッチャオロオロしてたじゃん」

 僕の言葉が図星だったのかツインテール……もとい亜里抄ちゃんの顔が真っ赤に染まった。


「し、仕方ないじゃないですか! 人ごみは苦手なんですよ!」

 亜里抄ちゃんはそこでッハ! と我に返ると無理に笑顔を作って見せる。

 いつもの感じを出そうとしているのかもしれないけど、この子は地味に天然が入っているのかもしれない……。




 

「改めまして……こんにちは! へーじさん♪」

 元気良く、そして♪付きの歯が浮くような甘い声に可愛らしい笑み。

 何人の男がこの可愛らしい少女にやられたのだろうか……。

 しかし本性を知っている僕としては苦い顔をしてしまう。

 っていうか。

 さっきのオドオドはどこへやら、アレもアレか? 女の武器を見せ付けてたのか?


「だから……人が多いと苦手なんですよぅ……」

 そう言って少し困った表情を見せる。

 僕は君みたいに心は読めないけど、その表情は本当な気がした。


「っていうか、せんぱーい、私が心読めるからって酷すぎませんかー?」

 そう言って可愛らしく頬を膨らませる。

 ある意味喋らなくていいのは楽かもしれないけど、心が読めるのはホントに厄介だな……。

 僕の心を盗み聞きしている少女はクスクスと楽しそうに笑う。


「どうやら私はへーじさんに結構嫌われてるようですね~?」


「別に君が嫌いってわけじゃないよ……僕は誰にだってこんな感じだよ」

 そう、僕は別に嫌いだから悪口を言うとかそういうわけじゃない。

 言葉が悪いのは元からだし僕にとっちゃ挨拶みたいなもんだと思ってくれて構わない。


 そう言うと少女は嬉しそうに笑う。

「なんだー、良かったー!」


 ワォ……ッ。

 やっぱりこの少女は可愛い子なわけで。

 目の前で輝く笑顔を見せられれば面喰らってしまう。

 こんな時、何故か浮かぶのは縁の顔。

 きっとデレデレしてたらぶん殴られるからという恐怖からの思想だろう……。

 体に刻まれてるって悲しくね!?


 自分で自分に自己嫌悪……。


 落ち込んでいる間に、少女の表情から笑顔が消えていた。


「……? どしたの?」


 少女はムッとした表情のまま口を開く。


「私以外の女の人を頭に浮かべるの止めてくださいよ」

 その表情は本当に嫌がっている様子。


「皆……私と喋ってたら私の事しか浮かばないのに……」

 ツインテールの少女は俯く。

 ……好かれ続けた少女だからこその悩み。

 無意識かもしれないけど、それでも一番でありたいという欲があるのはこの子の今までを示している様だ。


「で、用事は?」

 僕は敢えて触れずに先を進めた。


「あ、えと、そうですね」

 そう言うと少女は笑った。

 さっきとは違う少しぎこちない表情の笑みだけど。


 ……この子の事が少し解った気がした。



「あの、三人の事どうするんですか?」

 やっぱり内容はその事か。


「今悩んでるトコ」


 僕の表情を亜里抄ちゃんはジッと見つめる。

 それだけで先ほどのやりとりや、僕のちょっとした努力も全て見透かされてしまう。

 ……成程、一々説明しなくて済むのはある意味便利かもしれない。

 なんてポジティブに考えてみる。



 

「……良い事を教えてあげましょうか?」

 そう言って亜里抄ちゃんは含む様な笑みを見せる。


「良い事って?」

 素っ気なく見せても期待はしてしまう。

 この子は他の人間とは違う。

 幸か不幸かは解らないけど、絶対にどちらかに転ばせる事が出来る。

 行き詰った人間を進ませる力があると思う。

 それは心を読めるからという特異な力から成せる技なのかもしれない。


「生徒会長さんは確かに異常な人ですけど会長としての仕事はちゃんとするんですよ、確かにへーじさんの考える通り、へーじさんの話しには聞く耳を持たないでしょう、しかし、他の一般の方なら解りませんよ?」

 ……成程、あの会長は悪意的な事が嫌いだ、つまりは常識的な所があるのも確かというわけだ。

 僕みたいな嫌われているのが行っても意味は無いかもしれないけど、他の人間だったら何かしらの行事の提案だって事に出来るかもしれない。


 そこまで考えて、少し不穏に思う。 

 今笑顔でヒントをくれたこの子に対して。

「……何で僕を手伝う?」

 この子は敵では無いが、多分味方でも無い。

 だからこそ僕に手助けをする義理は無い筈だ。

 助言をくれるのは助かるけど、何か裏があるとしか思えない。


「……へーじさん、コレは私だけの思いでは無いんです」

 亜里抄ちゃんの表情からスっと、笑顔が消えた。

 亜里抄ちゃんはそのまま続ける。


「生徒会と不良と風紀の三竦みの戦争になったら一番被害にあうのは一般の生徒ですよ? そんな不安の中、貴方が戦争を止めた、これは貴方個人だけの事じゃ無いんですよ、平和的な解決を望む人間もいるわけです。貴方は知らないかもしれませんが……そんな風に期待している人もいるんですよ」


 え、っていうかそんな おおごとの話しなのコレ!?

 僕の一言が、そこまで重大な事になっていたなんて知る由も無かった。

 確かにあの3人(特に縁)が本気であばれたら被害に合うのは一般人だろう。

 その争いを一つの舞台として纏めれば被害は無くなるだろうししっかりと丸く収まる。

 うーん……期待されてると思ったら余計にプレッシャーなんだけど……。


 まーそれはそれとして。



「……でも君は騒ぎに巻き込まれるのが怖いから僕に手助けをするってキャラじゃ無いでしょ」


「……あれ? そう見えます?」

 キョトン、とした顔で亜里抄ちゃんは可愛らしく首をかしげる。


「うん、君は違う」

 この子と似たような女の子を僕は知っている。

 だからなんとなく解る。

 この子は面白くなる方に動く人間だ。


 僕の心を読んだのか、亜里抄ちゃんは可愛らしい笑みでは無く、不気味な笑みを浮かべた。

 ニコッでは無く、ニヤッて感じだ。


「そうですね、その人と一緒にされるのは心外ですけど、私はそういう人間です」


 どこぞの性悪女と一緒にされたのは心外らしい。

 何だ、ミホと亜里抄ちゃんは仲悪いのか?


「悪いですよ?♪」


「ちょ……心読むな……」

 笑顔でそんな感じに言われても仲悪い感じしないんだが。


 そこで耳に障るチャイムが響いた。

 休み時間終了のお知らせであり授業始まりのお知らせの、何度聞いても気に食わない音が廊下に響く。


「へーじさん、コレ受け取ってください!」

 そう言って亜里抄ちゃんは僕の手を無理矢理取ると、小さな紙を握らせた。

 いきなり手を触られるとドキッとしてしまうシャイ野郎なんで止めて欲しい。

 明らかに亜里抄ちゃんはニヤッと笑って見せる。

 確信犯かこの野郎……。


 僕の手を離すと亜里抄ちゃんは後ろに軽く飛んだ。

 くるっと可愛らしく一回転して見せながら亜里抄ちゃんは僕に飛びっきりの笑顔を見せる。


「何か手伝える事あったら言って下さいね~♪」

 手を軽く振りながらそれだけ言うと亜里抄ちゃんは背中を見せると走り出した。

 自分の教室に返っていく亜里抄ちゃんの後ろ姿が見えなくなると、握らされていた物を見てみる。


 小さな紙に亜里抄ちゃんの物と思われる番号とアドレス。

 なんか上手い感じに可愛い子の番号をゲットしてしまったのだが……これは喜んで良いのだろうか。

 あのエスパー少女じゃなけりゃ嬉しいんだけど……。

 そして、紙の裏にも何か書いてある事に気付いた。


『可愛い子の番号貰ったら喜ぶべきですよ♪ 愛しのへーじ先輩へ』

 と、可愛らしい女の子の書きそうな丸い字。


 ……この子エスパーとか以前に何者?


もうすぐ部活の大会が始まるのでまた更新送れるかもしれません(汗

その時は申し訳ございません(--;)

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