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その37.野球に例えるなら現在九回裏無失点……誰か逆転ホームランを(泣)

 ガヤガヤと騒がしい教室。

 授業の合間にある休み時間をそれぞれが様々な方法でストレス解消に勤しんでいた。

 友達と喋る人、トイレに行く人、漫画やお菓子等の持ち込んだ物を使う人だって居る。

 そんな中、解消が出来る筈の無いストレスに押しつぶされている人間が居た。

 それが机に突っ伏し、項垂れている。

 僕だ。


 ど……どうしよう。


 

 僕は言った。

 縁と会長と不良に最高のステージを用意すると。


 んなの……。


 出来るわけねーーーーーーーっつーーーーの!!!


 僕は一介の高校生に過ぎない。

 そんな僕にあの3人が納得する様なステージが用意出来るわけがない!!

 ちょっとは動いたさ、努力はした。

 廊下で会った駄目教師に提案した所、笑顔で「却下」

 何か行事に合わせて出来るかと思ったけど、被せられそうな行事は今のところ無さそうだ……。

 普通の学校なら会長に提案という手が在るのだが、今この学校の生徒会長に近づく気は無い。

 何故って? 怖いからだよ!!


 頭は良い方な僕だけど……見事になんも浮かばないな……。


 頭を掻き毟っている僕に、ケラケラと笑いながら声をかける少女が居た。


「へーじィー? 噂になってるよーん? あの三人相手にとんだ啖呵を切ったねェ?」

 僕がその場のテンションで考え無しな発言をしたのは解っているらしい。

 僕が落ち込んでいる時は大概彼女が飛んでくる。

 僕の不幸がそんなに好きか性悪女めェェ……。

 しかし少し前の事が噂になってるって、相変わらずあり得ない情報網してるね君……。

 てか広めたのも君だろ絶対。



「バッカだよなー、お前って頭良いのに……バッカだよなー」

 クソ! 変態にバカって言われた!!

 変態、もといアズキが呆れた表情を僕に見せてくる。

 どうやらコイツも騒ぎに自分から首を突っ込んで楽しむタイプなようだ。

 要するに僕が不幸な時は近くにいる野郎なんだろう。

 結果的にはミホと変わらない。

「五月蝿い変態黙れ死ね」

 机に突っ伏しながら取り敢えず変態に向けて毒を吐いておく。

 こんなのではストレス解消にはならないようだ。

 気持ちが和らぐことは無いらしい。


「ぇ、ちょ、酷くね!?」

 勝手にショックを受けている変態を無視してると、また別の方向から男の声。


「ん? 何だ? 何かあったんか?」

 この馬鹿はっていうかサクは基本的に何か騒ぎがあろうが無かろうが何故か僕の近くに居る。

 っていうか何も解って無いってのもソレはそれで腹立つな!!



 人の不幸が蜜の味な二人+バカの五月蝿い言葉に、僕の頭は限界を超える。

 プッツンだ。 もうプッツンだ糞共!!

 思いっきり机を叩いて高らかに叫ぶ。


「あーもー! 何なんだよお前らはよー!! 人が必死に悩んでんのによォー!」


 僕の怒りの声にミホは眼をパチパチとしている。

「ぇー? 何よー折角一緒に考えて挙げようと思ったのにー」


 あーあー! そうだろーさ! 邪魔しに来たんだろ!? 一緒に考えてって最高の邪……うん!?


「え、え!? 一緒に考えてくれるの!?」

 プッツンした頭の中の血管が見事に元に戻る程の衝撃的な一言。

 ま、まさか僕に不幸をもたらす三人が僕を助けてくれるとは誰も思うまい。


「アタシ達にまっかせといてよー!」

 そういって僕に親指を立てて高らかに笑うミホ。


 う、嬉しい! 普通に嬉しい!!

 現在追いこまれ中9回裏無失点。

 僕じゃマトモなバッティング(提案)は浮かばない。

 バッター交代!

 君達がまさかの逆転ホームランを出す事を願うよ!!

 



「で? 今んトコどんな案があんの?」


 僕の言葉にミホは人差し指を顎に付けて考える素振りを見せる。


「んー……」

 そして僕にいつもの笑みを向けると言った。


「諦めたら?」


 ……え? ワンアウト?


 一瞬茫然とするも慌ててミホに叫ぶ。

「いやいやいや!? 何のための代打!? せめてバット振ってよ! 諦めたらそこで試合終了ですよ!?」

 例えるならこの女はバッターボックスに立っているのにバットを一度も振らずに笑顔でボールを全部見逃しているとかそんな感じだ。

 っていうか今さっき「まっかせといて!」て言ったじゃん! 堂々と言ったじゃん!!

 何!? ここ笑うとこ!?


 僕の言葉にミホはケラケラと人ごとのように笑う。

「だって~? そんなの考えなしの発言したへーじが悪いんでしょ~?」

 っく! こんな時だけ正論出しやがって!



「おい! ミホちゃんそりゃねーよ! へーじだって必死なんだぜ?」

 そんな落ち込んでいる僕に変態男が助け舟を出してきた。

 まさか変態男から助けが来るとは……


「安心しろよへーじ! 俺はちゃんと考えてきてやったよ!」


 お、おお……君って奴は。

 ちょっと感動で泣きそうになる僕。


「君の事は変態でバカだし犯罪者一歩手前で語ってる時とか近寄りたくない人間第一位だとか思ってたけど……君本当は良い奴だったんだね!」


「お……俺ってそんな風に思われてたの!?」

 変態男が何故かショックを受けているが気にしない。(二回目)


「で、で!? どんなの!?」

 きっと僕の目は希望に輝いているのだろう。

 ここまで大口を叩いたのだからよっぽど凄い事なんだろう!


「聞いて驚くなよ!」

 幾ら変態男とは言え、期待に胸を膨らませてしまう。



「へーじが女装するんだよ!!」


 その瞬間、固まる僕。


 …………。

 はいィィィ!! ツーアウトォォォォ!!! 帰れェェェ! お前ほんと帰れェェ!!。

 所詮変態男は変態らしい。

 僕の期待を帰せ!!

 どうせ期待損だって事は薄薄思ってたけどな!!


「何で女装何だよ!」

 僕は怒りやら呆れやら、取り敢えず心の中の黒いのを吐きだすか如く椅子から思いっきり立ち上がった。


「いやお前絶対女装似合うって! それで会長や不良をお色気で無かった事にするんだよ!」

 色々とキレそうな僕とは別の意味でキレちゃってるアズキが興奮した感じに声を荒げる。


「小学生の発想だよ! いや小学生もそんな発想しねーよ!!」

 瞬発的に思いなおし慌てて言い直した。


「いや絶対に似合うから!」

 目が血走ってんだよお前!!


「寧ろお前が見たいだけじゃね!?」

 僕の瞬時の発言に少しも間を空けずに瞬時に。

 ッカ! と目を見開きアズキは堂々と胸を張って言った。


「そうだよ!」


「正直だなァおい!!」

 あまりにも正直過ぎて僕はビクッと体を揺らしてしまう。


「…………はぁぁ~、もう良いよー……」

 最後にソレだけ言って僕はため息と共に項垂れる。

 変態過ぎて困る……。

 何やら一気にテンションが下がった、というか疲れた。

 

「っていうかアズキ……僕は男だゾ? 幾ら変態でもそこは良いのか」


「可愛ければ男でも女でもイエス! オフコース!

 駄目だ! これは駄目な変態だ!!

 ドン引きしている僕をよそに、「確かに女装とか似合うかもー?」とか恐ろしい事を言っている性悪女と「へーじの女装……」とか気持ち悪く呟いている馬鹿。

 この二人は一切僕の気など知らないんだろう……。


 取り敢えず「なー、良いだろー? へーじー」とか未だにほざいている変態を無視して僕は椅子に座りなおす。


 例えるとアズキはバッターボックスに立って思いっきりバット振ってんだけど当てる気無いって感じだ……。

 


 絶望と共にガクーっと項垂れていた。

 ……そして、顔を横に向けてチラッと最後の代打に目を向けてみた。


 サクはニッ! 期待させてくれない笑みを浮かべる。


「俺は目玉焼きには醤油派かな!」


「そんな話ししてないよ……そして僕はソース派だよ……」


 バッターボックスに立ってすらいない奴よりかはマシか……。

 そう思いつつ今度はアズキに視線を送ってみた。

 アズキは変態的な荒い呼吸をしていた。(ハァハァみたいな)

 いや、べつにマシじゃねェ!


 ック! 今思うとコイツラ思い思い言いたい事言ってるだけで別に僕の助けする気ねェ!


 結果的な事実に気付き、凄い精神的に疲れた上に泣きそうになっている僕の耳に、可愛らしい声が聞こえた。

 騒がしい教室内では耳を凝らしても何とか聞こえるという具合だが、その可愛らしい声には覚えがあった。

 個性ある友人達から現実と言う意味も込めて目を背け、声の方に目を向けた。

 それは廊下に出るドアの方。

 そこに何やらヒョコヒョコと見え隠れするツインテールが見えた。

 隠れようしながらも中の様子を見ようとしているので隠れれていない。

 頭隠して尻隠さずという言葉が似合いそうだ。


 あのツインテールには見覚えがある。


 試合はスリーアウトで終わったと思ったけど……これはまさかの延長?

 結果はまだ解らないかもしれない。

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