その33.三つ巴だってあら素敵……なわきゃ無いけどさ
何!? 君等本当何!?
僕の悲しい心の叫び声も空しく、睨みあっている三人が勝手に話を進める。
「会長になったくらいで思い上がってんじゃないわよ」
「驕るつもりは無い……私が全てでありそれに逆らう貴様等こそが逆賊だ」
「どっちでも良いんだよ、テメーラはここで死ぬんだからよォォ……」
ま、マズイ、何がマズイかって言うと僕を挟んでやっているという事だ。
三角形で良い感じに逃げ道塞いでんじゃねーよ! 最早業とか偶然とかもどうでもいいよ!
コレもう100%巻き込まれる事山の如しじゃねーか!
「ちょ! ちょっと! 君等少しは落ちつこうよ!」
取り敢えず助かる為にも僕は慌てて声を挙げる。
立ち上がると三人の視線を一点に集めているようで怖かったけど。
三人に挟まれつつも、偉く必死な感じに声を出す。
「アンタ達、肉片が残ると思うんじゃないわよ!」
「フン、クズの親玉共を一斉に駆除出来るんだ、こんな楽な事も無い……」
「コチラの台詞だっつの、テメーラ死ぬ覚悟は出来たかよ?」
あれ!? 無視!? 無視ですかー!?
聞いちゃいねーーー!!
ちょっと半泣きになりつつある僕の事なんか見えていないのか、3人は僕を通り越して睨み合いを続けている。
しかし。
睨み合いが長く続く事は無かった。
最初に睨み合いを解いたのは薫君だった。
視線は僕を通り越すのでは無く、僕を見て。
薫君が一歩前に出る。
それは結果的に3人の内、僕に一番近い一人になる。
「邪魔だ、貴様は退け」
そう言って僕を強く押した。
存在を無視されていたわけじゃ無かったのは何かしらホッとするけれど。
結構押しが強かった事で、僕は簡単に後ろに崩れていった
「わ、わ!」
間抜けな声が出たのが情けない……
尻持ちを付いて三人を見上げる形になった。
「……フン、貧弱なクズが」
そう言って薫君は僕の頭を軽く蹴った。
思いっきりでは無く、軽く、侮蔑する様に。
痛い……。
流石の僕も腹が立つ。
このヤロウ、と睨みつけようとしたのだけれど、薫君よりも先に縁を見てしまった。
鋭い瞳が目を見開いていた。
何か禍々しいオーラの様な物まで見える……え? 髪の毛浮いてません!?
久々にキレている表情を見た気がした。
躊躇無く縁が振り被った拳が薫君の顔面に向け走る。
パァン! という破裂音は、薫君が瞬時に縁の拳を掌で掴んだのだ。
なんにしても縁の拳を止めたのは初めて見た。
この男、思いの他凄いのかもしれない。
性格は悪いのに……。
「ハッ、良いパンチじゃ無いか、貴様はクズから虫にランクを上げてやるよ、ありがたく思え!」
どこまでも上から目線の薫君は、縁をあざ笑う。
そんな薫君に怒りのこもった拳と同じくらい怒りに染まる縁の大きな瞳が睨み付ける。
「へーじに手ェ挙げた時点でアンタの人生は終わってンのよ! サッサと殺されなさいよコラァ!」
鋭い二人の視線が交差する。
殺気の籠った二つの瞳とは別に、別の殺意も二人の真横から飛んできた。
「オイオイ、二人で楽しむんじゃねーよ、俺も入れろよ」
悠馬が縦に刀を振っていた。
振り下ろす先は、縁の拳を握っている薫君の手。
つまりは両方の結んでいる手に向けて振り下ろされていた。
躊躇無いソレは、確実に二人の手を斬りつける為だ。
薫君と縁の行動は迅速だった。
お互いが空いている方の手を振り下ろされる刀に向けた。
パァン! という破裂音は振り下ろされる刀を二人の手がタイミングよく挟んだのだ。
縁は薫君に拳を向け、その拳を薫君は受け止め、更にその二人に纏めて切りかかってきた悠馬の刀を
縁と薫君の残りの空いた手で防がれていた。
まるでアクション映画の一部シーンを見るような洗練されたすざまじい動きが目の前にあった。
僕の真上で繰り広げられた一瞬だけの迫力満点な戦いに背筋が寒くなる。
縁以外にここまでの動きが出来る人間が居るとは……。
驚愕の一言しか無い。
あのクソ会長も、この一年も。
幾ら強くても縁程では無いと思って居た。
これは、考えを改めなくちゃならないかもしれない。
三人はそのまま固まり、再び睨み合いが続く。
そんな中、縁だけ僕の方に視線を送った。
その視線は決意に燃える縁らしい、正義のヒーローらしい瞳だ。
その視線を送ったのも一瞬のみ。
再び薫君や悠馬に視線を向けると縁はバッ、と一歩二歩と後ろに飛んだ。
それに合わせて薫君と悠馬は縁を追うように、同じように一歩二歩と出る。
三角状態だった形から、形は崩れる。
後ろに下がれば二人と相対する形になる。
つまりは2対一の状態になったのだ。
それを解っていただろう、に縁は後ろに下がった。
それは、多分。
僕からこいつ等を離す為だ。
馬鹿のクセに、変な所だけ気ー回しやがって……。
馬鹿女め。
その大きな瞳は悠馬と薫君を睨みつけ、臆することなく戦闘の形へと構えをとる。
どこまでも彼女は正義の味方で、守る為には簡単に自分を捧げる。
本当に。
馬鹿女め。
ある意味最も無防備になるのがトイレ。
ハァー……♪(* ̄∇ ̄*)
幸せな気分を味わった後。
ズボンを履くのは当然。
履くのと同時に、何故かドポン。という水に落ちる音。
……(; ̄∇ ̄)
おそるおそるトイレの中を見てみると……。
ケータイがプカプカと浮かんでいるじゃあーりませんか。
「うぇはぁー!?Σ( ̄□ ̄;)」
焦り過ぎて変な声が出る私。
ズボンを挙げる際にポケットから落ちた様子。
妙に放心状態になったり現実逃避したり奇声を挙げたりしながらもようやくケータイを助け出す。
何かぶるぶると(バイブ状態?)震えながら点滅を繰り返すケータイ……。
「(T-T*)フフフ…寒いのかい、こんなに震えちゃって……」
と、半泣きになりつつケータイに語りかける私(この変で既にヤケクソ)。
そのままケータイは動くこと無く御臨終されました(T_T)
朝のテレビで星座占い3位だったじゃん!!
神様、私が嫌いか……私も大っ嫌いだバカヤロォォ!