その32.不幸に自分からダイブすることに慣れた自分が辛い。
それは廊下の真ん中。
現在の状況を言うと。
強烈な三人が睨みあっていた。
「あんた等いい加減ぶっ潰しときたいのよ!」
拳を鳴らし、今から行う為の準備運動をしているのは最強の女子高生こと縁。
目が据わっている時は戦闘モード全開の時。
「加減ってのをしらねーのかよコラ……俺の仲間と同じ目に合わせてやんよォ」
本物の日本刀を抜き取り、殺意の込めた睨みを利かせるのは一年生を束ねていると思われる美青年、悠馬。
悠馬は血だらけで倒れている一年生二人に視線を送った後、手に持つ日本刀の様なギラギラとした視線を向ける。
「ッチ、クズ共が、クズはクズらしくじゃれあっておけば良い物を……この私に刃向かうとは脳も弱いようだな」
手や服に付いた血を見る限り、倒れている一年生をやったのはこいつだ。
下級生から、果てには同学年からも恐れられている狂った正義。
手や分厚いメガネに付いた血は拭おうとはしない。
まだこの男の事はよく知らないが、弱いわけでは無さそうだ。
空気が淀んでいる……。
周りで青い顔をしている一般人の生徒達。
こんな状況じゃ誰も動けないだろう。
……しかしだな。
青い顔をしている奴等なんかより、僕の方がずっと最悪な位置にいる。
この3人に、僕は囲まれている。
喧嘩? 止めろとか言わないよ、好きにやっときゃいいよ。
でも僕を挟んでやるなァァァァ!!! 何処か他所でやれェェェ!!
何故そんなヤバイ所にいるかと言うとだ。
話を少し戻そうと思う。
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縁&薫君を見、次に倒れている一年生を見た後、ブチギレている悠馬を見て。
僕は確信した。
これはいけない。
不幸の臭いがプンプンする!
死神が手招きしてるよ! 逃げるにしかりだよコレは!
そう思い、即座にUターン。
行動は迅速に!
逃げ出そうとした時、背中越しに声をかけられた。
「……朝倉先輩」
声は悠馬の物。
キレているにしては偉く冷静な声だ。
……何だよ、不幸の元凶の一人。
立ち止まるけど振り向こうとはしない。
何が何でも逃げてやる!
しかし、次の悠馬の言葉で僕の足は動かなくなる。
「確か、医者の息子……だった、スよね」
その言葉に、僕は振り向いてしまっていた。
多分、僕は誰が見ても動揺していたと思う。
それほどに、僕は驚いていた。
何故知っている。
名字を知っているのはまだ良い、調べれば解る事だ。
しかし、僕の親が医者であった事を知っているわけがない。
ちょっと調べたら出る事じゃ無い筈だ。
名字から推測したのか……? いや、朝倉なんて名字他に居てもおかしくない。
そんなピンポイントで当てられるものなのか?
僕は振り向いたが、悠馬は振り向かず背中を向けていた。
表情は、悟られていない筈だ。
唯、勘で言っただけかもしれない。
そんな可能性なんて無いかもしれないけど。
僕は純粋に恐れた。
また、毛嫌いされたあの頃になるのが怖かった。
知っているのは一握りの筈だから、だからこそ悠馬が知っているのが怖かった。
だったら僕がした事も僕の親がしたこともきっと知っているのだろう。
普通なら、そんな昔の事に恐れる事は無いかもしれない。
だけど僕にとってあの頃の思い出は、あまりにも強いトラウマ。
簡単に拭える物じゃ無い。
「……そんなわけないだろ」
嘘を吐いた。
僕と悠馬の間に沈黙が流れる。
「……今はそれでも良い、取り敢えず……あいつ等を診てもらえませんか」
それは純粋な言葉だった。
少し前にも思った。
この子は、きっと悪人では無い。
何で知っているかは知らないけど、この中で倒れている一年生を診れるのが僕だけであり、それしか方法が無いから僕に言ったんだ。
僕が下らないトラウマに怯えている時、この子は倒れている仲間の事を考えていたんだ。
僕の方を振り向こうとはせず、悠馬は薫君と縁を睨んだまま。
その殺意ある瞳とは別に、心からの拙劣な言葉が僕に向けられる。
「…………お願いします」
僕の事を嫌いと言った。
嫌いと言った口で僕に頼むのはきっと苦しいだろう。
だけどそれよりも苦しい思いがソレを優先させた。
……流石はヤクザの息子。
『義』は通すか。
ッチ。
僕は心の中で舌打ちをした。
悪人よりも。
悪人になり切れない存在の方がずっとずっと厄介だ。
唯の悪人なら躊躇無く切り捨てる。
しかし、僕の思いはこの子を切り捨てる気は無いらしい。
「良いよ、借り一だ」
「……感謝する」
その言葉と共に僕は倒れている1年生達に駆け寄った。
一年生の前でしゃがみ込む。
薫君と縁も近くに居るけど業と目を合わせなかった。
血だらけの少年の様子を診てみる。
……外傷は無い、とは言えないが主に顔面以外は大した事は無さそうだ。
血は全部鼻血からだろう。
殴られた後は酷いけど、見た目程酷くは無い……と思う。
普通よりかは知識はあるけど真似ごとでしかない。
ちゃんとした医者に診てもらった方が良いのは確かだ。
軽い診察をしていると、突然上から声が降ってきた。
「オイ、何してんだクズ」
その声とともに見上げた先に、薫君がいた。
ゾワッと寒気が背筋を貫く。
その寒気の正体は僕に向けて振りあげられていた拳。
殴られる……!
躊躇無い拳が僕に降りかかる。
しかし、僕に届く前に突然目の前に細長く黒い棒が拳を防いでくれていた。
激しい打撃音に耳が痛くなる。
音の正体が拳の威力を見せ付けるよう。
目の前に現れた棒は見覚えのある刀の鞘。
悠馬が僕の直ぐ後ろから、鞘を地面に思いっきり立て付けていたのだ。
薫君の表情はあからさまにイラついた様子。
そんな会長の視線は僕を通り越して後ろに居る悠馬に向けられていた。
「邪魔をするなクズ、折角制裁を加えた相手をコイツは看病しようとしたんだぞ」
「ざっけんなよクソ会長、制裁だか何だかシラネーが、今はこの人をヤらせねー……」
……敵だと恐ろしい歩く銃刀法違反だとか思ってたけど、仲間になるとこんなにも頼もしいとは! た、助かる。
「それに、この人を殺すのは俺だ、勝手な事すんじゃねーよ!」
一歩後ろに飛んだ薫君に吐き捨てるように悠馬は叫んでいた。
あれ!? 仲間ってわけじゃないの!? というかやっぱり僕の事は嫌いなのね! ちょっと悲しいよチキショー!
「へ、へーじ! 大丈夫!?」
そう言って駆け寄ってきたのは縁。
「あ、ああ大丈……」
と、最後まで言い切る前に。
悠馬がいきなり縁に斬りかかった。
……え。何してんの!?
「!?」
縁はギリギリで体を横にして刀を避けた。
縁自身も予想外だったのか目を丸くしている。
かく言う僕自身も縁と全く同じ状態なわけだけど。
な、何で縁にまで攻撃したんだこの銃刀法違反は!?
「だから邪魔すんなって」
美青年は当たり前の様に、簡単に言った。
さも自分の行動はおかしくありませんよ、と言いたげに。
……うォォい!!
「何やってんだよ!」
咄嗟に僕は突っ込みを入れてしまっていた。
何だ! 何がしたいんだこの子は!!
「……何って邪魔しようとしたから」
凄く冷静な感じで返されてしまった!!
しかも何で僕が怒っているのか解って無いご様子だよ!
まさか悠馬って結構バカ!?
今のは別に邪魔しにきたとかじゃないから!!
ブチ。
良い感じにキレた音は良く知っている方からの音。
「…………上・等ォォ~!!」
とても良い具合にムカついた縁が怒りの声を挙げていた。
ああ! 解りやすい位に余計ややこしい感じになりやがってェェ!
単純過ぎる縁も馬鹿な一人なわけで。
……そんな感じで現在に至る。
上手いこと僕はこの三人に囲まれた形になったのだ。
※下ネタ注意
ちょっとした悪戯問題を女友達にやってみた。
私「もんだーい、入れる前は固くて~出すと柔らかい物ってなーんだ( ̄∇ ̄*)」
※正解ガム。
中学生並みのしょうもないネタですが、女の子にやって「キャーヤダァー」てな感じの可愛らしい反応を期待。
女友達( ゜д゜) 「……」
女友達( ゜д゜)「チンコ」
私「あ、あれ!?Σ(゜д゜;)」
なんでも上手いこと行くわけじゃないみたいです……。
つか普通に答えるなよ……。