その31.それぞれの正義
アタシが一階に行った時には、既に他の男が喧嘩の仲裁に入っていた。
……いや、違う。
これは仲裁なんて物じゃない。
喧嘩していたのは両方共一年生だったんだと思う。
しかし、二人の一年生の内、片方は既に血だらけで倒れていた。
それは喧嘩でそうなったのでは無いだろう。
喧嘩というのは片方が一方的になる物ではない。
かくゆう、もう一人は、今も馬乗りで男に殴られ続けていた。
この男はアタシよりも先に来ていた。
この男を、アタシは知っていた。
男が一年生で無いのは解っている。
男の特色も。
だからこそ男がやったのだろうと思えた。
周りの一年生は青い顔のまま動こうとしない。
それはきっと恐怖から。
茫然としていたアタシはハッ! と我に返ると慌てて声を張り上げた。
「や、止めなさいよ!」
だが、男の耳には聞こえていない様子だった。
この男は、今年度から会長になった男だ。
そして、アタシ自信何度も衝突した覚えがある。
「止めろっつってんのよ! クソ会長!!」
アタシの怒りの声も無視して、生徒会の会長は何かを言いながら手を止めない。
ボソボソと会長が零している言葉には禍々しい物を感じた。
「何故、態々(わざわざ)、我々(われわれ)が、貴様等なんぞに、手を煩わせなければ、行けないんだ、クズが、クズが、クズが!」
一言一言零す度に会長は馬乗りになっている一年生に拳を下ろす。
血だらけの拳と、返り血を帯びたメガネや服に、背筋が寒くなった。
これ以上は本当にマズイと感じたアタシは慌てて手を出した。
「やりすぎよ!!」
振りかぶった会長の腕を無理矢理掴む。
止めるのに結構な力を入れた。
思いっきり殴っていたのが解り、アタシの心は変なモヤモヤでムカムカする。
表現が変だけど……口には出せないのだからこう言うしか無い。
初めて会長は振り向いた。
「……なんだ風紀の犬か、遅かったじゃないか、既に粛清は行っている、邪魔をするな」
あまりにも淡々とした言い方。
先ほどまでの行動が無かったかのように。
しかし無い筈が無く、今も男は馬乗りのまま。
感情の無い言葉に、アタシの胸のムカムカは強くなる。
粛清!? ふざけてんじゃないわよ!
「アタシ達が言われたのは喧嘩の仲裁よ! 粛清しろ何て言われてないでしょ!!」
会長が憎々しげに舌打ちをする。
「ッチ、風紀のクズ共が働かないから態々、我々生徒会も手伝ってやっているのにとんだ言い草だな!」
「ざっけんじゃないわよ! アンタのやり方は度が過ぎてんのよ! 相手はもう気絶してんのよ!?」
アタシの言葉に会長は立ち上がり、腕を振り払った。
憎々しげに正面からアタシを見据える。
「風紀の犬が……貴様がやる事も変わらないクセに、力で解決するのが最も理想なのは解っているだろうが」
その言葉は、生徒会長が言うような言葉では無い。
しかし、コイツはそれが当たり前なのだろう。
全くイライラさせる!
「耳かっぽじって、よっく聞きな! アンタはやり過ぎなのよ! 力で解決が否めない事もあるのは確かよ! でもアンタのやっているのは違う! 死人に鞭打つようなやり方アタシは許さない! そんな正義は許さない!」
会長は分厚いメガネ越しに目を細め、あからさまに殺意を向けてきた。
「私が秩序であり私が正義だ……クズが夢物語を語るなよ」
会長のオーラが変わったのが一目で解った。
私は慌てて後ろに一歩飛んだ。
そして身構える。
上等よ腐れ会長! こっちだってアンタのやり方は気に食わないのよ! 正義の名の元にぶっつぶす!!
「アタシは絶対にあんたの正義なんか認めない! アンタみたいな壊すだけの人間なんて認めない! 守る為の拳を文字通り体に叩き込んで教えてあげるわよ!」
へーじがアタシに言葉だけで、脳みそ揺らしておもっきりぶっ飛ばした様に。
アンタの脳髄にしっかり響くようにぶっ飛ばしてあげるわよォォ!
どこか昔の自分と会長が被った気がした。
緊迫する空気の中。
聞き覚えの在る声が聞こえた。
その声はアタシの耳にハッキリと聞こえた。
その声をアタシが間違える筈も無く。
アタシは声のした先を振り返った。
「ゆ、縁?」
そこには、何故か刀を持つ、いつかの一年生と一緒にいるへーじが居た。
茫然としているへーじ。
まだ状況を理解出来ていないんだろう。
そして、目を見開き、一目で怒り狂っているのが解る刀を持つ一年生。
この一年生も知っていた。
風紀委員内で注意人物として知られていた人物。
多分、騒動を起こしている一年生達のリーダー。
その刀を持つ一年の視線は、血だらけで倒れている同じ一年生に向けれらていた。
「……サイッコーにキレそうだぜテメーラ」
血走った瞳の視線は、アタシと会長の方を向き、殺意を込めた視線を向けられた。
憎々しげに睨む一年生と、会長と、アタシが揃ったのはこれが初めてだったと思う。
親からの仕送り。
ささやかな親族の愛情を確かめる思い。
兄からは賞味期限切れのパンが。。なんでだよ!Σ(゜д゜;)
姉からは良く解らない海外のお菓子。。日本のお菓子送ろうよ!Σ(゜д゜;) (※海外のお菓子は甘過ぎて死ねる)
母からは以前実家に返った時に置いてきたパンツ。。もはや私のじゃん!Σ(゜д゜;)
ちょっと悲しくなりつつダンボールの箱を漁る。
奥の奥に。
白い箱が。
箱には大きな文字でWii……
Wiiが入っていましたΣ(゜д゜;)
父が入れたと思える手紙と共に。
手紙「お前ゲーム好きやったな~、そっちにゃゲーム無いし買う金も無いと思ってな~」
…………(゜д゜;)
と、とーちゃん……(つд;)