その27.たった一つの真実を守る為に私は嘘という武器を何度でも奮おう
「ん……」
目が覚めると僕は机に突っ伏していた。
明るい太陽の光が窓から照らされている。
昨日は、確かミホが家に、……?
そこでミホがいない事に気付いた。
一瞬夢だったのかな? と思ったが、スグにその考えは変わった。
ミホは確かにこの家に居た。
それもさっきまで居たんじゃないかな。
そう思わせたのは。
肩に掛けられた毛布と、飲み干されたティーカップ。
そして机の上にあった紙だった。
ノートの大きさにも満たない小さな紙の真ん中に、身に覚えのある字があった。
そっと机の上の手紙を手に取った。
綺麗な、女の子が良く書く丸い可愛らしい文字。
【ありがとう】
ミホらくない控えめな一言。
僕は小さく微笑む。
友達なんだ……別にお礼何て良いのに。
これならミホは大丈夫そうだな。
良かった。
紙を再び机の上に置こうとした時、紙が重なっている事に気付いた。
後ろにあったのは一枚の写真。
僕はその写真を見て苦笑する。
眠っている僕と、一生懸命笑おうとして引きつっているミホが映っていた。
ミホの緊張した様な表情に笑ってしまう。
引きつるくらいなら撮らなきゃ良いのに。
その写真はきっと僕が眠っている間に撮ったんだろう。
「ったく、いつ現像したんだよ……」
相変わらず元気なミホはすざまじい行動力だな。
もう一度僕はその写真に目を落とす。
……良い写真じゃん。
私は朝一にへーじの家を出て、始発で一度家に帰った。
朝早くに帰ってくると、私の両親は大騒ぎしていた。
心配してくれたのは嬉しいけど、そんなに慌てなくても……。
大騒ぎする親を説得するのは大変だった。
私はそんな親から逃げるように学校へ行くために飛び出した。
後は志保が何とかしてくれるだろう。
私の親は志保に弱いからね~……。
そのままへーじの家に居ても良かったんだけど。
授業に使う教科書や予備の制服は家にあったから仕方が無い……。
ちなみに私は汚れた制服で帰ってきた。
多少は汚れを風呂場で洗ったから何とか着れる状態にはしたし。
若干湿っていたのは仕方無かったけどね。
お陰で朝早くに出たからちょっと寒かったなぁ。
だから断じて私はあんな下半身をさらけ出して帰ったわけじゃない!
……もうあんな恥ずかしい格好はコリゴリ。
自分の恥ずかしい格好を頭から消そうと私はブンブンと頭を振った。
誰に言いわけするつもりでも無いけど、そこは自分自信としても否定したかったわけだと思ってほしい。
そんな事を考えているうちに校門を潜った。
結構早く家を出たからかな、他の生徒たちの姿は見えない。
上履きを穿いて立ち上がった瞬間、廊下を歩く一人の少女と目が合った。
その少女は唯一私が苦手とした人物。
可愛らしいツインテールが印象的で忘れる事は無い。
少女……基、亜里沙ちゃんは私に笑いかけてきた。
「早いですね、おはようございます水歩先輩」
私も。
笑顔で言葉を返す。
「ん、おはよ亜里沙ちゃん」
私の笑顔を見た瞬間、何故か亜里沙ちゃんは少し驚いた表情を見せる。
その意図は読めなかったけど、驚いた表情はみるみる優しい笑みに変わる。
「そうですか、”はっきり”……したんですね」
何故、亜里沙ちゃんがそう言ったのか、まるで昨日の出来ごとをしっているかのような言葉だったけど。
私はさして驚かない。
笑顔のまま、私は答える。
「うん……”はっきり”したよ」
「はい、とても綺麗な心……迷いの無い澄んだ心ですねー……」
何を嬉しそうに亜里沙ちゃんは言っているのか、その言葉に意味があるのかは解らないけど、私はもうこの子に負ける気は無い。
「亜里沙ちゃん、言っておきたい事があるんだ」
「はいー? なんでしょうかー?」
私の言葉と共に亜里沙ちゃんの表情が変わる。
それは天使のような微笑みから、悪魔のような……おもちゃを見るような微笑みへ。
だけど私は恐れない。
「あのね? 私は今のこの環境がとっても大好きなんだ~! もしもこの環境を壊すような人間がいたら……」
私はそこで間を空ける。
今の環境。
それは。
へーじがため息をついて。
縁ちゃんが正義に燃えて。
サクが馬鹿な事やって。
志保が暴れる縁ちゃんを止めて。
そんな。
そんなそんな環境が好き。
幸せな私の環境。
思いっきり。
とびっきりの笑顔を亜里沙ちゃんに向けて、私は再び口を開く。
「私は全力でその人間をブッ潰す!!!」
これは私の宣戦布告、警告、威嚇。
亜里沙ちゃんは驚く表情を見せずに、楽しそうに、楽しそうに笑う。
「ええ♪ キモに銘じておきます」
そう言うと、亜里沙ちゃんは再び廊下を歩きだす。
私に向かって歩き出す。
私を横切る瞬間、亜里沙ちゃんの楽しそうな声が耳に入った。
小さく亜里沙ちゃんは零す。
嬉しそうに。
『楽しみにしています』
……アッハッハ! 私は絶対に負けないよ。
大切な物が沢山あるからね。 誰にも渡さない。
私だけの宝物。
ポケットから生徒手帳を取り出すと、ソッと開く。
中には、今日へーじの家を出る時に撮った写真。
その場で現像出来る小型のカメラで撮った物だ。
私が持っているカメラの中でも中々の高級品。
画像が粗いのが難点だけど。
その画像が粗くても、その写真の私は笑おうとして表情を引き攣らせているのが良く解った。
そんな必死な私の横で幸せそうな寝顔をしているへーじの顔もしっかりと撮れている。
私は小さく笑ってしまう。
私ってば変な顔。
だけどコレは宝物。
へーじはいっぱい撮ってたけど私とへーじのツーショットは無かったしね。
私は大切に大切に、その写真をそっと胸に抱く。
この想いは、きっと無くならないんだと思う。
だったら、苦しむんじゃ無くて、大切にしよう。
この大切な想いを。
私はオオカミ少女。
たとえ嘘が自身に帰ってくる捨て身な行為になったとしても。
私は。
大切なものの為なら、オオカミに食べられる事も躊躇わない。
私はオオカミ(嘘吐き)少女。
たった一つの自分の真実を守る為に、初めての自分自身の想いに『正直』になれた思いを。
初めての『本当』を守る為に、私は何度でも『嘘』をつこう。
家のパソコンがウィルスにやられました……クソガァァァァァ!!
というわけで現在は大学のパソコンから更新中でス。
家のパソコンが治るまでは大学のパソコンで頑張ります(T_T)
夜更新を基本としている私としては確実に更新は遅くなるのは否めませんね(汗
人が後ろを通るたびに消している私はチキン。
さて、今回で水歩編は終わりです。
次回からはまた話しが変わっていくと思われます。
少しは水歩も報われてくれると良いですね。
後、前回の話のタイトルがないことに気付きました。また気が向いたらタイトル入れときます。
家のパソコンが出来ない→ニコニコ見れない→やることが無い→イライライライライライライライライライライライラ!!!
パソコン中毒者ですが何か(^p^)