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その23.男の夢は裸エプロン以外にもあると思うんだ。 いや、変態とかじゃ無いから。男ってみんなこんな感じだから。

 温かいシャワーに体が温まっていくのを感じる。

 暗い心も少し晴れていっている気がする。


 今、私はへーじの家に居るんだ。

 ……しかも、シャワーまで借りてしまって……。


 私は何をしてるんだろう。


 へーじに甘えて、状況に甘えて。


 私は、私は……。


 …………。


 ん? 状況?

 そこでとんでも無い事に気づいてしまった。


 寒い夜空に迎えに来た男の子の部屋に転がり込んでシャワーを借りて……。


 こんな展開、一体何処のB級恋愛ドラマ!? こ、こんなの誰だって次の展開が解るじゃない!

 自分の顔が真っ赤になっていくのが解る。


 ど、どうしよう。

 

 や、その、イヤじゃ無いけど……私たち高校生だし……順序ってモノがあるし。


 そこまで考えて。

 温かいシャワーが私を落ち着かせていった。


 ……何考えてんのよ私。

 もう期待なんてしないって考えてたじゃない。

 それに……縁ちゃんにも悪い。

 私が縁ちゃんを超える事は無いんだから・


 何凹んでんのよ私……縁ちゃんだったら良いじゃない。


 眼から零れる水は、シャワーの温かさと違い、別の温かみを持っていた。

 これはシャワー。

 きっとシャワー。


 最後の最後に残った私の中の小さな小さな意地っ張りな思いが、泣く事さえ許さなかった。

 あまりにも情けない意地が、泣くことさえ許さないと決め込んでいた。


 体は温まったけれど、心は冷たいまま……。

 顔を曇らせながらバスタブから出ると、ある事に気付いた。


「あれ……服どーしよ」


 制服を着るのはちょっと気が引ける。

 涙やら、へーじから離れた時にがむしゃらに走って扱けた時に汚れた制服だ……。

 自分がどれだけ動揺していたか解るような制服。

 ……自分自信に呆れてしまう。

 


 うう……どーしよ……。

 

 一人、バスタオル一枚でオロオロとしてしまっていた。

 いつもの私なら、別に汚れた制服で良いや。何て軽く考えるのだけれど。

 今の私は相当変みたいで。

 そんな簡単な事が思い浮かばないでいた。


 恥ずかしいけど……へーじに頼むしか無いよね……。

 覚悟を決め、恐る恐る横スライド式のドアを少しだけ開けた。

 そこから覗きこんでへーじが見えるのを確認した。


 へーじは携帯を前に物凄いショックを受けた顔をしていた。

 若干涙目になっている。

 ……何故かは知らないけど。



 ……? ど、どうしたんだろう?













 結局僕が渡したのは、僕の持っている服。

 それをドアの隙間からミホに渡した。

 ミホ……ごめん……。

 もう姉に殺される事を覚悟して服を取りだそうとしたのだが、何故か体が恐怖で動かなくなってしまったのだ……。

 しかし大丈夫だろうか、いくら僕が体が小さな方だとしても結局は男だ。

 ミホよりかは体は大きい事になる。

 っというかミホは僕のなんか着るかなァ……女の子が男の服を借りるというのも妙な感じだ。


 そんな事を考えていると、風呂のドアが開いた音がした。


 音の方に目を向けると、ミホが上半身だけ出していた。

 白い長袖シャツはやはり大きいのか、袖から指しか出ていない。

 しかし、どうしたんだろう……?

 ミホは困ったような表情で顔を赤らめていた。


「ど、どしたの?」

 何かキュンとしてしまってちょっと戸惑ってしまう……。

 落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け落ち着け…………(略)


「えっと……あの、笑わないでね……?」

 上目づかいでそんな事を言われれば笑えるわけもないんだが。

 渡した服は至って普通だったと思うけれど。

 何か笑うような事があるんだろうか?


「や、別に笑わないけど……」


 僕の言葉にミホは困った表情をしながら考える素振りを見せる。

 な、なんなんだろう。

 何やら意を決したようにミホは強く目を瞑った。


 恐る恐る、といった具合に、ミホはドアから出てきた。 



 ……ア。



 ミホは。


 下のスボンを穿いていなかった。

 大き目の服のお陰でズボンはそこまで必要では無いようだが出ている生足はつい凝視してしまう。

 裾を両手で思いっきり引っ張って少しでも下を隠そうとしている仕草がとても可愛くて、その必死そうな仕草に、少し可笑しくもなってしまう。


「い、今、笑ったでしょ」

 顔を赤らめ、少し涙目になりそうな目で睨まれれば全力で首を振らせて頂く。


「ズ、ズボンは!?」

 取り敢えず何故そんな状況なのかを聞かなければミホが変態になってしまう。

 何て失礼な事を考えてしまう僕。


「ズボン……おっきぃからどうしても落ちちゃうし、無理矢理穿いても長すぎて下すらして汚しちゃうし……」


 顔を赤らめて、ミホは目を伏せる。

 ミホだって好きでそんな事をしているわけでは無いのは解った。

 これ以上立っていたくない、といった具合にいそいそと僕と対面する形で机を間にペタンと女の子座りでミホは座った。


「…………」


「…………」


 ち、沈黙が重い……。

 ミホが俯いているのに合わせてつい僕も俯いてしまう。 

 いつものミホだったら、適当に喋ったり出来るんだけど……。

 今のミホは何か違った。

 いつもの元気一杯なミホのオーラが全くと言って良い程に無い。

 チラッとミホの方を見てみる。

 俯いているミホは風呂上がりで、ショートの髪がまだ生乾きの状態だ。

 上せたのか火照ったように顔が赤い。

 なんというか……オッサンっぽい言い方になっちゃうけどアレだ。


 その……。


 変に色っぽい……。



 僕はブンブンと頭を振った。

 何考えてんだよ! 友達を変な眼で見るとか最低だ!

 僕は取り敢えずその場を離れようと立ち上がった。

 いきなり立ち上がったからミホが驚いたように見上げている。


「あ、あのさ……姉さん今日帰ってこないみたいだからさ、布団片方使ってくれていいから! 僕は廊下で寝るからさ!」

 そう言って無理矢理に笑顔を作る。


「あ、え?」

 戸惑った表情のミホを横目に部屋を出ようとした。


「ま、待って!」

 足首を掴まれる感触がした。

 ミホが慌てて僕の足首掴んだんだろう。

 しかし、慌てている時に同じ位慌てて足首なんか掴まれちゃ結果は見えているわけで。


「へぶッ!?」

 僕は顔面からモロに扱けた。

 畳式なアパートだが、畳に顔を思いっきり擦りつければどうなるだろう。

 とても痛いんです。


「……! ……!!」

 暫く声が出無い程に痛みに悶え、畳の上をゴロゴロと転がっていた。


「ご、ごめん!」

 慌てて謝っているミホの声は、何となく聞こえていたが今は痛みで何も言えない。


 ……駅で震えてた時よりかはちょっと元気になったかな。


 痛みに苦しみながら、そんな事を考えていた。

 

すいません。女の子のズボン無しシャツはやってみたかったんです。

……良いじゃない! 男の夢(私の夢)を実現させようとしただけじゃない!

すいません自重しますorz

どうでもいいですけど金縛りに初めてかかりました。

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