その22.何か僕のテンションがおかしい。 落ち着け! 落ち着くんだ僕!!
そんな凹んでる僕の耳に。
か細い声が聞こえた。
「……-じ、 へーじ……」
あまりにも小さな声に、気付くのに遅れてしまった。
僕以外の声とすれば、彼女しかいないわけで。
彼女が今居る筈の方面に視線を向けた。
風呂のドアの隙間が少し開いて湯気が漏れている。
その小さな隙間からミホの瞳だけが覗いていた。
困ったような……恥ずかしそうな瞳から、そのドアの先はきっと裸なんだろう、と勝手に考えてしまう。
っは!? イカンイカンイカン!! 落ち着くんだ……いつものクールでヌァイスガイな僕に戻るんだ!
そうさ! いつもの天使な自分でいればモーマンタイ! イエスウィーキャァン!
「ど、どーしたの? ミホ」
僕は飛び切りの笑顔で汚れなんて知りませんといった具合に言葉を返した。
無いよ、元から汚れ何て無いよ! ホント無いから!
と、勝手に自分で思った事に自分で突っ込みを入れていた。
…………。
……何だろう。
何か僕は妙にテンションがオカシイ気がする……。
あまり経験の無い女性が家に居るという感覚は人をオカシクするんだと思う。
あ、ダブルゴリラ(縁と姉)は別。
何て聞かれたら確実に殺されるであろうワードをサラっと頭に浮かべつつ罪悪感も無く首を傾げていた。
いつものミホならダブルゴリラと同じ部類なんだけどナー……。
何でだろ。
変に緊張してしまう……。
隙間から覗くミホの瞳は、困ったように下を向いたり上を向いたり。
「あの……」
何時もと違うしおらしさに胸を撃たれそうになりながらも必死に笑顔を保つ。
何度か大きな瞳をパチパチとした後、ミホは小さく再びしおらしい感じで言った。
「服……どーしよ……」
ブボホォ!
笑顔のまま、鼻血が飛び出した。
人間って本当に興奮すると鼻血出すのね、本当にありがとうございました。
ヤバイって! 今のはヤバイだろー! いつもとのギャップもそうだが、 困ったような言い方にハートを撃ち抜かれてしまった。
お! 落ち着け! 相手はあのミホだぞ! 性悪女だぞ! しかし、女の子が家に居るってだけで死にそうなのに!
「あの……へーじ……?」
悶絶している僕に困ったような声がかけられる。
止めろぅ! そんな間を空けて疑問符なんて使うなやい!
暫く勝手に興奮した後、徐々に冷静さを取り戻してきた。
……いい加減ミホが可愛そうなので軽く深呼吸して落ち着く事にした。
「あ、ああ……服ね、服」
女性物の服……普通なら姉のを持ってくるべきなんだが。
お……恐ろしくてタンスに手をつけたことがないんだけど!
しかし、流石にミホをほっとくわけにも行かないし許してくれるだろう。
躊躇いを残しつつも禁断のタンスへと触れた。
……よし、何も無いな。
姉の事だから何かしら罠があってもおかしくは無いと思ったが……流石に考え過ぎだったかー。
そう思いつつタンスを開けた。
『アナタは今世界の終りを体験するキップを手にしました』
開けた先にまず目に入ったのは、大きな紙に真っ赤な字で書かれた筆のような執筆。
おどろしいかんじに。
タンスを閉じた。
神様……僕の姉は一体何者……。
目尻に涙を浮かべながら遠い目をしてみる。
前の前の後書きの後に幾つかニコニコみてるよー、という感想を頂きました。
案外みなさんがニコニコを見ているようで驚きましたw
ニコニコ面白いですよねー!